【独占インタビュー】注目の俳優・坂東龍汰「誠実に向き合って自分だけの表現を見つけたい」

映画『君の忘れ方』ポスタービジュアル
映画『君の忘れ方』ポスタービジュアル 写真: Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会2024
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『ユニコーンに乗って』『フタリノセカイ』『春に散る』など幅広い役柄で存在感を放ち続ける俳優・坂東龍汰さん。

『ライオンの隠れ家』では自閉スペクトラム症の青年を熱演し、その多才な演技力で注目を集めている。

さらに2024年1月17日(金)公開『君の忘れ方』では、初の映画単独主演を務める坂東さん。

ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパンでは、若手実力派俳優の坂東龍汰さんにインタビューを実施した。

生い立ちから、俳優として大切にしていること、抜きん出たエネルギーの原点、そして最新作『君の忘れ方』初の映画単独主演についてたっぷりと語ってくれた。

坂東龍汰 ©︎The Hollywood Reporter Japan
坂東龍汰 ©︎The Hollywood Reporter Japan

──── 映画『君の忘れ方』では単独初主演でしたが、今後挑戦してみたい役はありますか?

そうですね、サイコパスの役や時代劇にも挑戦してみたいです。『春に散る』のボクサー役や、最近では『ライオンの隠れ家』の自閉スペクトラム症の青年役のように、今まで経験していないことに取り組む役は、毎回発見があってやりがいを感じます。

時間をかけて役作りしていく過程がとても楽しいので、今後もやったことがない役に挑戦していきたいです。もちろん苦労や大変なこともありますし、その道一筋で何十年もやっている方には敵いません。でもチャレンジする過程が僕はやっぱり好きなんです。

──── 坂東さんは、演技にどうような魅力を感じますか?

一番は人との出会いですね。いろんな人に関われて、その方の人生や生き方に触れることができる。さまざまな年齢の方と一緒に仕事できるのも魅力で、勉強になることばかりです。

もう一つは、人として成長できるところです。演技はどれだけ経験を積むかが大事なので、多くの作品に誠実に向き合うことを大切にしています。

最初から上手くできる人はいないし、メジャーリーガーになりたかったら試合をたくさん見て必死で練習するように、一流の役者になりたかったら、映画館に行って海外の作品もたくさん観るべきだと思っています。そういう日々の積み重ねを大事にしています。

────いまお話に出ましたが、作品と向き合うなかで心がけていることは具体的にありますか?

やはり人との関わり方ですね。僕は小学校から高校までシュタイナー教育の学校に通っていたのですが、テレビやスマホやインターネットから切り離された環境で育ちました。父が映画好きだったので映画だけは観せてもらえたのですが。そういう環境もあって、社会に出て人との距離感をつかむのが最初はとても大変でした。

撮影現場でたくさんの人と関わるなかで、敬語や上下関係も含めて、人として少しずつ成長しているのを感じています。そのなかで、誠実に丁寧に向き合っていくことが、俳優としてそして演じる上でも一番大切なことじゃないかって最近すごく実感しています。

映画『君の忘れ方』場面写真 ©2024『君の忘れ方』製作委員会
映画『君の忘れ方』場面写真 ©2024『君の忘れ方』製作委員会

────お父様が映画好きということですが、一緒に観て思い出に残っている映画はありますか?

もういっぱいありますね。家にテレビがなかったので、父がシアタールームを作ってくれました。中学生の頃に黒澤明監督の『七人の侍』を観たときは衝撃で、なんだこれは!って。お芝居がすごくて、本当に人を斬っているように見えるんです。あと『羅生門』のカメラワークもすごかった。森をかけていくシーンで、人物を追いかけながら美しいフレアが入るその技法が素晴らしくて、どうやって映像を撮っているんだろう?と子どもながらに興味津々でした。

父とは週に1本映画を観る約束で、レンタルビデオ屋さんに行って一緒に作品を選びました。当時お気に入りだったのは『ロボコップ』『フィフス・エレメント』『12モンキーズ』『ダイ・ハード』、あと『ロード・オブ・ザ・リング』も好きでした。俳優さんだと、ブルース・ウィルス、ジョニー・デップ、ディカプリオが好きでしたね。

────俳優を目指したのも、そういう環境がきっかけになっているのでしょうか?

当時は俳優になりたいとは思っていなくて、“映画の世界が自分のもう一つの世界”という楽しみ方をしていました。映画なのか現実なのかどっちか分からなくなるくらい映画に没頭していたので、まさか自分がこの世界に入るという感覚すらなかったです。

────何がきっかけでこの世界を目指されましたか?

僕の通っていたシュタイナー教育の学校では、小学生から高校まで演劇の授業がありました。実は人前に出るのがずっと苦手だったんです。でも、お芝居が大好きな姉に、無理やり学校以外の演劇クラスに連れて行かれて。そのうちに段々と人前に出るのも好きになって、緊張を克服する気持ちよさや達成感みたいなものを感じるようになりました。

それから高校3年生のときに、1ヶ月間朝から晩までずっと演劇だけに集中する授業があったんです。そこでノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの舞台「民衆の敵」で、トマス・ストックマンを演じることになりました。30分間ずっと演説しているシーンがあって、恥をかきたくないから必死に頑張って頑張って稽古をして、それで迎えた本番がすごく楽しくて感動したのを覚えています。

ほかにも、音楽をやったり絵を描いたりそれぞれ楽しかったのですが、やっぱり僕には芝居しかないなと確信して、高校3年の卒業ギリギリでこの道に進もうと決めました。

────最新作『君の忘れ方』では、悲しみを抱えた人に寄り添う「グリーフケア」がテーマでした。私生活で悲しみやマイナスの感情をどのように対処していますか?

そうですね、僕は悲しみを対処するのが得意ではないと思います。3歳のときに身内の不幸がありましたが、あまり記憶がないんです。でもあるとき、何か人とは違う自分の原動力やエネルギーに気付いて、これは3歳のときにフタをしてしまった感情に突き動かされてるんじゃないかって。閉じたつもりだったけど、得たいの知れない穴のような、それを埋めるために何かエネルギーに突き動かされているのではと気付いたんです。

大人になってから「どこにそんなパワフルなエネルギーがあるの?」とよく聞かれてきたのですが、僕自身も人とは違う原動力やエネルギーがあることを感じていました。なのでぽっかり空いてしまった心の穴を、無意識にポジティブなモチベーションに変えていたのかもしれません。

当時は3歳でしたが、大人になってから悲しみに向き合う方が大変だと感じています。『君の忘れ方』でグリーフケアの存在を知りましたが、悲しみを癒すサポートがあるのは素晴らしいなと思ったし、今後もし自分の心と話し合って必要なときは、ケアしてもらうことも視野にいれています。

坂東龍汰 ©︎The Hollywood Reporter Japan
坂東龍汰 ©︎The Hollywood Reporter Japan

────将来いろんな役を演じていく上で、今回の経験が生きるかもしれませんね。

昴という役を演じた経験は確実に生きてくるし、やっと自分のぽっかり空いていた穴と向き合うきっかけになって、人としてまた一つ強くなれた気がします。

────ザ・ハリウッド・リポーター・ジャパンは、邦画の紹介や日本の俳優さんを海外に発信していくメディアですが、海外での活動に興味はありますか?

いつかハリウッドを始め海外作品にも挑戦してみたいです。ブラジル、アメリカ、ニュージーランドのようなオープンマインドな国の方々が、どういうふうに映画を制作しているのかシンプルに興味があります。自分が関わったらどんな化学反応があるんだろうと想像すると楽しみですね。

────今後の活動や目標など、将来のことで何かお話できることがあればぜひ教えてください。具体的な目標や大きな夢などありますか?

あまり大きな夢は見ないようにしているんです。気付いたら自分の横にいてくれるものだと思っていて。以前はハリウッドに行きたいとか賞を取りたいとか安易に口にしていました。でも今は目の前にあるお仕事や役に対して、自分にしかできない表現を見つけることの方が何より大事です。

イラン映画界の巨匠アミール・ナデリさんに言われた「Don’t be cliché」という言葉が今でも心に残っています。「ありきたりになるな、あなたにしかできないものを探しなさい」と彼に言われて、ずっと考えてきました。自分の中で出た答えは、「僕にしかできないことは突拍子もないことをすることではなく、自分の中にすでにあるものを演技でちゃんと扱うことが、すでにもう自分にしかできない表現なんだ。だから難しく考えなくいい」ということでした。

なので、今後も一つ一つ役と誠実に向き合っていけば、20歳のときに安易に口に出していた夢に近付く日がいつか来るのかなと、そう思っているんです。

取材・塩原桜  編集・堀田明子

映画『君の忘れ方』オフィシャルサイトはこちら

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