綾野剛「いじり倒してやってください」――荒井晴彦監督作『星と月は天の穴』公開初日舞台挨拶、文学×コメディの新境地
脚本家として日本映画界を代表する荒井晴彦が監督を務め、綾野剛が主演する映画『星と月は天の穴』が、12月19日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショーとなった。
公開初日には、テアトル新宿にて舞台挨拶が行われ、綾野、共演の咲耶、田中麗奈、そして荒井監督が登壇。満員の観客を前に、文学作品の映画化に込めた思いと撮影秘話が語られた。
荒井晴彦×綾野剛、日本映画の真髄が結実
原作は、作家・吉行淳之介が芸術選奨文部大臣賞を受賞した同名小説。
『Wの悲劇』(1984年)『ヴァイブレータ』(2003年)『共喰い』(2013年)などでキネマ旬報脚本賞を5度受賞してきた荒井が、長年の念願だった本作の映画化に挑んだ。
主人公は、離婚経験から女性を愛することに臆病になりながらも、「愛されたい」という欲望をこじらせていく40代小説家・矢添克二。
この矢添と、彼が執筆する小説の主人公Aという二役を、綾野剛が演じ分けている。

星と月は天の穴
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綾野剛「文学コメディとして軽やかに観てほしい」
無事に初日を迎えた心境を問われた綾野は、「ホッとしています」と率直に語り、「哲学的に見えるかもしれないけれど、僕はこの作品に文学コメディ的な要素を感じています。思ったよりも観やすい、と感じてもらえたら嬉しい」と呼びかけた。
矢添と出会う大学生・瀬川紀子を演じた咲耶は、人生初の初日舞台挨拶に緊張しながらも、「この映画に携われた時間は宝物」と感慨を述べた。

田中麗奈が切り開いた“新境地”
矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じた田中麗奈は、舞台挨拶で咲耶の演技を絶賛。
劇中では、艶やかさと母性が交錯する存在感を放ち、荒井作品の中でも印象的なキャラクターを体現している。
撮影中のエピソードについて田中が「愛おしくなって思わず抱きしめてしまった」と明かすと、荒井監督が「その方が良かったな」と即座に反応し、会場は笑いに包まれた。

荒井晴彦が語る“禁じ手”の演出
本作では、小説の文章を字幕として映像に重ねる大胆な演出も話題となっている。
荒井監督は「禁じ手ばかりやった」としつつ、「文学と映画が幸運に出会った作品だと言われたのは嬉しかった」と手応えを語った。
また、根岸吉太郎監督から寄せられた「文学と映画の幸運な融合」というコメントにも触れ、「監督作5本目にして一番良かったと言われたらしい」と笑顔を見せた。
「いじり倒してやってください」
舞台挨拶の最後、綾野は観客に向けてこう語った。
「矢添克二は、叩けば響く男です。ぜひ、いじって、いじり倒してやってください。そうやって映画を育ててもらえたら嬉しい」
荒井監督も「面白いと思ったら、どんどん宣伝してください」と荒井節で締めくくり、念願の封切りに満足そうな表情を浮かべていた。
文学、エロティシズム、そして滑稽さが交錯する『星と月は天の穴』は、大人の観客にこそ刺さる異色の文学コメディとして、静かな注目を集めそうだ。

作品情報
『星と月は天の穴』
公開日:12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
レイティング:R18+
上映時間:122分
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
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