石井岳龍監督&永瀬正敏、27年ぶりの夢かなえた『箱男』公開に感慨ひとしお
世界的な人気を誇る安部公房の代表作を石井岳龍監督が映画化した『箱男』の公開記念舞台挨拶が24日、東京・新宿ピカデリーで行われた。
石井監督は主演の永瀬正敏をはじめ浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市とともに登壇。ドイツ・ハンブルグでクランクイン前日に撮影が中止になってから27年。待望の公開に、「全スタッフ、出演者、関係者を代表してありがとうございます」と頭を下げた。
27年前、同じく絶望を味わった永瀬も「言葉になりません。感無量です」としみじみ。くしくも今年は安部の生誕100周年。「世の中が原作に近づいているような気がします。安部さんは予言者だったと思うと凄い。長い時間はかかりましたが、役者として生きてきて半分以上心の中で歩んできた作品。それだけの時間が必要だったのではないかとも思う」と話した。
ダンボールを頭からかぶり、社会から隔絶された箱男になろうとするわたし(永瀬)、箱男を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野)、箱男を完全犯罪に利用しようする軍医(佐藤)、3人を誘惑する葉子(白木)が織り成す退廃的な甘美な人間ドラマ。27年前はニセ医者を演じる予定だった佐藤は、「一つだけ言えるのは、27年前は今に比べて情報がナローだった。それが広がっているのに社会は狭くなっているという対比が面白い。その変遷が興味深い」と、27年前との違いを解説した。
浅野は、「監督と永瀬さんとは何本もやってきて、復活したと聞いてビックリしたけれど、役をいただけて27年温めきたことが感じられたので、乗り遅れないように徹底的にやりました」と笑顔。オーディションで役を射止め、ヌードにも挑戦した白木も、「監督から任せるぞというエネルギーを感じて心が固まった。女性が見て、心の中で手をつなげるような存在になっていれば幸せです」とアピールした。
映像化は困難と言われながら、27年間一度も諦めることなく完成させ公開を迎えた石井監督だが、『箱男』がどのような存在かと問われ「分からない。メインコースはきちっと作ったが、いろいろな見方ができる。見てくださる方一人一人の心の中で作るもの。それぞれの箱男を教えてほしい」と期待。永瀬も、「いろいろな俳優の目線で見るとおいしいので、できれば何度でも見てほしい」と訴えた。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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