三谷幸喜監督『スオミの話をしよう』完成報告「最も映画らしい映画。やっと映画監督と言える」
三谷幸喜監督・脚本の5年ぶりとなる新作映画『スオミの話をしよう』の完成報告会が29日、都内のホテルで行われた。
三谷監督は出演の長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎、戸塚純貴、宮澤エマとともに登壇。「演劇のような映画を作ろうと思ったら、結果は僕が作った中で最も映画らしい映画になった。これでやっと映画監督と言える感じになった」と自信たっぷりに語った。
突如失踪したヒロインのスオミを捜すため現在と過去の夫5人が集まるが、それぞれが語る人物像が全く異なることから謎が深まっていくミステリー仕立てのコメディ。三谷監督が脚本を手掛けた22年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で長澤がナレーションを担当した縁で、「今の段階で彼女が輝いている映画を撮れないか」と模索し始めたのが発想の起点だ。
長澤は恐縮しつつも、「一人の女性の多面的な部分を出すためにどういうキャラクターづくりをするかが難しくて、監督にいろいろとヒントをもらいながら演じた。(夫役の)皆さんがそれぞれ独特の魅力を持っているので、向き合うだけで違う自分が出ていたのかもしれません」と感想。「思い出深い作品になりましたし、スオミにも愛着が湧きました」と笑顔で語った。
演劇らしい映画を実現するために、1シチュエーションのセリフ劇で1シーン1カットの長回しを多用。クランクインの約1カ月前からキャストを集めての入念なリハーサルも行った。「やるつもりはなかったが、メンバーが集まって稽古をしているうちに踊っているところが見たくなった。多幸感のあるラストになったので成功」と自画自賛する、全員が歌って踊るミュージカルシーンも付け加えた。
これには西島が、「ダンスは本当にイヤだったけれど、メンバーと踊っていると楽しいと思えるようになった。今その瞬間の面白いところを収めていく、監督だけが持っている独特の色だと思う」と説明。松坂も、「部活みたいで、最後は皆仲良くなっていましたよね」と満足げに振り返った。
だが、三谷組常連組に対しては細かい指示を出さなかったようで、宮澤が「ダンスは丸投げでしたよね。私たちの扱い、雑じゃないですか」とクレーム。瀬戸は、「何をやったか覚えていない。新たな一面を解放してくれていると思うようにします」と前向きにとらえていた。
そして、長澤が「なぜスオミという名前なのか、そしてスオミを取り巻く人々の物語でもあるので、どんな思いが詰まっているか劇場で確かめてほしい」とアピール。三谷監督も、「映画にはいろいろなジャンルがあって、楽しみ方もそれぞれ。中国大陸や北海道の雪原で大アクションをする映画もあれば、このようにちまちまとした1部屋で繰り広げられる映画があってもいい。力のある優れた俳優たちに集まってもらい、素敵な映画になりました」と話した。
『スオミの話をしよう』は、9月13日から全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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