ラミ・マレックが語る『アマチュア』と『ミスター・ロボット』への愛【インタビュー】

オスカー俳優のラミ・マレックが、自身が主演する映画『アマチュア』でプロデューサーデビューを果たした。そのきっかけは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画『ザ・マスター』(2013)の編集室にあったという。
当時、作品のために懸命に演じた重要なモノローグが完成版ではカットされていた経験が、「いつか自分も制作に関わりたい」という思いの原点になった。『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』でエミー賞、『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー賞を受賞し、キャリアを重ねた今、その夢がついに実現した。
その結晶が、ジェームズ・ホーズ監督によるスパイスリラー『アマチュア』だ。CIAの分析官チャーリー・ヘラー(マレック)が、テロで妻を失ったことをきっかけに復讐に動き出すが、単なるアクション映画とは一線を画す構成となっている。
予告編での爆発シーンでは、「無傷のヒーロー」的な演出ではなく、爆発音に“ビクッ”と反応するリアルな演技を選択。ヒース・レジャーが『ダークナイト』で見せた病院の爆破でわずかに身を引くジョーカーの仕草にインスパイアされたという。
「ジョーカーのようなキャラでさえ反応するのなら、その瞬間のリアリティがどれほど力を持つかを実感しました」とマレックは語る。
今回、そんな彼に主演・プロデュースを務めた『アマチュア』への思いや、代表作『ミスター・ロボット』への愛着についてインタビューを行った。
――今作では主演とプロデューサーを務めるだけでなく、実質的なキャスティング・ディレクターのような役割も果たされましたよね。たとえばレイチェル・ブロズナハンにはメットガラで声をかけ、カトリーナ・バルフにも自らアプローチしたそうですね。『アマチュア』はご自身の企画ということもあって、率先して動く必要があると感じていたのでしょうか?
自分の手柄にはしたくないけど、言いたいことはわかります。キャスティング・ディレクターのマーティン・ウェアが本当に精力的に動いてくれたんです。僕がしたのは、ちょっと電話をかけたくらい。キャスティング・ディレクターの仕事は本当に重要で、だからこそ、アカデミー賞でもようやく正式なカテゴリーになったんだと思います。それにふさわしいし、誰かの功績を奪いたくはないですね。
『ザ・パシフィック』で一緒に仕事をしたティモシー・ヴァン・パタンとは、それ以来ずっと親しい友人です。彼は『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』や『ゲーム・オブ・スローンズ』、『マスターズ・オブ・ザ・エア』など、たくさんの作品で監督を務めてきました。私たちはいつも「選んだ家族」について語り合っていて、「誰と一緒に仕事をしたいか」とか、「もしチャンスがあるなら、最高の仲間を集めよう」って話してるんです。うまくいくとわかっていて、互いに刺激し合い、日々最高の自分でいさせてくれる仲間たちですから。
ちなみに『ザ・パシフィック』では、ジョン・バーンサルと初めて出会いました。あのとき一緒にブートキャンプを受けていて、「この人はすごい才能を持ってる。これからどんなキャリアを歩むのか楽しみだ」と思ったのを今でも覚えています。そして案の定、彼のキャリアは本当にすごいものになりました。今でも彼の凄さを知ったばかりという人がいるのが信じられないくらいです。彼の実力はとにかく圧倒的です。
でも、これはキャスト全体に言えることなんです。世界中を旅して撮影する中で、ロケーションの魅力ももちろんあるけれど、最も映画的だったのは、毎日現場に現れるそれぞれの才能の輝きでした。このアンサンブルは、まさに別格です。
――『アマチュア』のチャーリーは常に過小評価され、その分、自分ならではの機転を武器にしています。ラミさん自身も、過小評価されることで力を発揮するタイプですか?
プロデュースの話になるんですが、これまで何度も、いかにスマートに編集作業に関わるかを模索してきました。あまり出しゃばりすぎない、でも自然に入り込む方法をね。『ミスター・ロボット』の現場ではサム・イスマイル(製作総指揮)や各部署の責任者たち、特に撮影監督のトッド・キャンベルから多くを学び、映像制作についての知識が身につきました。初めて撮影現場に足を踏み入れたときから、撮影技術や構図に強い興味を持つようになったんです。
だから正直、自分がプロデュースや監督、脚本、そして演技まで全部を担うような“最初の候補”になるとは思っていませんでした。いつかはそういう日が来るかもしれませんが、今はまず、ハッチ・パーカーやダン・ウィルソンと一緒に、ディズニーや20世紀スタジオといった大手と並んで映画をプロデュースできたということ自体が、自分にとって大きな一歩です。数年前までは、そんな日は来ないかもしれないと思っていましたから。
だから、ある意味、自分自身をわざと少し過小評価して、それをバネに限界を超えていこうとしているのかもしれません。自分自身にとっても、他人の目から見ても、期待を上回るために。
――チャーリーが爆発の後に身をすくめるシーンについて話しましたね。そのときラミさんは『ダークナイト』の病院爆破シーンでヒース・レジャー演じるジョーカーが少し身を引く仕草を思い出したと話していました。あの瞬間は、最初から意識していたんですか? それとも後から気づいたものだったのでしょうか?
ああいう瞬間を俳優の視点から見ると、まず思うのは、「実際に背後で爆発している中で、どうやってあんなふうに振る舞えるんだろう?」ってことなんです。普通に歩き去るなんて、ほとんど不可能に思えますよね。それをどう訓練するのかと考えていくと、ノーラン監督のように実際のカメラ内で撮る実践的なスタイルにたどり着く。
だから、もしあの“ジョーカー”ですら反応するのなら、その瞬間のリアルさがどれほど強い影響力を持つかということに気づかされました。
尊敬している俳優たちが、何度もテイクを重ねて「まばたきしない」「振り返らない」「手榴弾をラケットボールのように投げる」ことをどれだけ練習したのかを考えると、私はその“逆”の発想をしたくなったんです。つまり、思わず身をすくめるという動作が、ある種のユーモアや違和感を生む。だからこそリアルなんですよね。そして、そういったリアリティをこの作品のあらゆる面に反映させたかったんです。
この映画の主人公は、実は「喪失のステージ」を一歩一歩たどっている人物なんです。監督のジェームズ・ホーズとは、怒り・否認・受容といった感情の段階をしっかり見せようと、とても細かく相談しながら作っていきました。
そして、その動機をスパイ・スリラーという壮大なジャンルに投げ込んで、主人公を“これまでで最も危険で、創造的で、頭脳的で、道徳的に揺らぐような状況”へと押し出していく、そんな物語にしたかったんです。
――チャーリーは物語の序盤で、「銃を持つようなタイプの人間じゃない」と自覚しますが、あなたなら本気を出せば“武装した暗殺者”のような役も演じられると思います。そういう役に挑戦したい気持ちはありますか?
もちろんありますよ。ローレンス・フィッシュバーンが、「映画で“メンター役”を演じることが若い頃から自分に割り当てられていた」と話していたことがあります。それって、ある種のアーキタイプ(典型的な役割)があるということなんですよね。ギレルモ・デル・トロもかつて僕に、「君はカメラの前である種の知性を自然に醸し出している」と言ってくれたことがあるんです。あくまで彼の言葉であって、自分からそう思ってるわけではありませんが、私はその評価を受け入れてきました。
でも、それが「銃を持った男を演じられない」ってことにはならないと思っています。むしろ新たな挑戦ですし、ぜひやってみたい。もしかしたら、チャーリーというキャラクターも、将来的にはジョン・バーンサル演じる“ヘンダーソン”のようなプロフェッショナルへと進化する可能性もあります。だから、「そういう役はやらない」って決めているわけではまったくないんですよ。
――パソコンを操作する演技は、あなたの得意分野ですよね。ただ、その演技にも限りがあると思います。『ミスター・ロボット』のエリオットとは違うように見せるために、姿勢などを変えたり意識した点はありますか?
ジェームズ・ホーズ監督と撮影監督のマーティン・ルーエは、「チーカー(cheeker)」と呼んでいた“肩越しのショット”を提案してくれました。私の顔が四分の一くらい見えて、スクリーンの内容も分かるアングルです。チャーリーのメガネに映る画面の反射も、できるだけカメラ内で本物っぽく映るようにして、あとでデジタル処理をしなくても済むように気を配りました。
それで自分自身も、視線やメガネの使い方について深く考えるようになりました。私も普段からメガネをかけているので、チャーリーにとってメガネはアクションヒーローにとっての武器くらい大事な存在なんです。もし彼がメガネを失ったら、もう終わりです。だからこそ、そういう些細なディテールを大切にしました。それがこの人物のリアリティであり、彼らしさを支えるものです。世界を駆け巡る壮大な旅にも、彼はちゃんとメガネを持っていかなきゃいけないんですよ(笑)。
――『ミスター・ロボット』のシーズン5か、あるいは映画版の話をしてもいいですか?
それはサム・イスマイルと話さないといけないですね。ちょうどロンドンで一緒に過ごしたばかりで、彼は今、ジュリア・ロバーツら素晴らしいキャストとともに『Panic Carefully(原題)』という作品に取り組んでいます。私たちはいつも『ミスター・ロボット』時代の話をしていて、それはこれからも特別な思い出です。トッド・キャンベルやクリスチャン・スレーターなど、あの作品に関わった仲間は今でも一生の友人です。シリーズが終わったときは本当に寂しかったですが、テレビシリーズはピークで終えるのが理想ですし、それができたと思っています。
エリオットとチャーリーに共通点はあるかもしれませんが、まったく違う人間です。エリオットというキャラクターを演じられたことは幸せでしたし、人生でも特別な時間でした。『ミスター・ロボット』はユニークな作品で、テレビの可能性を広げたと思います。そして『アマチュア』でも、同じように何かを変えるようなインパクトを与えられたらいいなと願っています。
インタビューに応じてくれたラミ・マレックが主演&プロデューサーデビューを果たした映画『アマチュア』は、本日4月11日より全国の劇場で公開中。
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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