Netflix『新幹線大爆破』樋口真嗣監督が語る、大ヒットリメイク版の裏側…JR職員からアドバイスも

Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix
Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix
スポンサーリンク

[※本記事は、映画『新幹線大爆破』の内容に触れています。未鑑賞の方はご注意ください。]

樋口真嗣監督のアクションスリラー映画『新幹線大爆破』は4月23日にNetflixで配信が開始されると、まさに「爆発的な」スタートを切った。本作は視聴者から熱烈に受け入れられ、同配信元の非英語映画グローバル・ランキングで2位にまで上昇した。

1975年の佐藤純彌監督による同名映画の続編となる新作『新幹線大爆破』は、舞台を現代に移し、東京行きの新幹線に爆弾が仕掛けられ、時速100kmを下回ると爆発するという設定が再び登場。JR東日本の職員、乗客、指令室のスタッフや官僚たちが協力し、乗客数百人を救い、東京へ到達する前に事態を収拾しようと奔走する。

特に注目すべきは、本作がJR東日本の全面協力を受けて制作されたことだ。同社は通常、サービスに悪評をもたらしたり、不愉快な問題と関連付けたりする描写を認可することを嫌う傾向があるため、今回の協力は極めて珍しい。

『新幹線大爆破』配信開始に先立ち、米『ハリウッド・リポーター』は東京で開催されたNetflixのアジア太平洋コンテンツ・ショーケースにて樋口監督にインタビュー。オリジナル版から受けたインスピレーション、制作過程やJR東日本から受けたアドバイスについて話を聞いた。

**

――――――日本人にとって、新幹線はどのような存在だと思われますか?

日本全国の皆さんにとって新幹線がどのような意味を持っているのか、僕には正確には分かりません。僕は1965年に生まれ、その1年前に東海道新幹線が開業しました。ですので、子どもの頃の僕にとって新幹線はテレビ番組で見るものであり、子ども向けの歌にも登場するような存在でした。みんなの憧れでしたね。僕たちにとって、新幹線は初めて「特別な体験」をさせてくれるものだったのです。

大人になるにつれて、通勤などのために新幹線を利用するようになりました。子どもの頃とは違った形で、新幹線を使うようになったのです。新幹線自体も進化し、開業当初よりもスピードが1.5倍ほど速くなり、さまざまな場所へ行けるようになりました。最初は大阪と東京の間だけの路線でしたが、やがてどこへでも行けるようになったのです。そうして、新幹線は「特別なもの」から「日常の一部」へと変わっていきました。

そして1975年には、オリジナルの『新幹線大爆破』が公開されました。ポスターには新幹線が爆発するような描写がありましたが、実際に映画を見ると、新幹線は爆発しなかったのです!もし本当に爆発してしまったら大惨事になるので、登場人物たちは何とかそれを防ごうと全力を尽くします。映画では、警察や鉄道会社の人々が一丸となって新幹線を止めようとする様子が描かれていて、それが非常に面白かったですね。

この映画で犯人役を演じた高倉健さんは日本を代表する俳優で、普段は正義の味方としてのイメージが強い方でした。その彼が犯人を演じ、新幹線に爆弾を仕掛け、最後には警察に撃たれてしまいます。公開当時の僕は小学4年生で、それまでは怪獣映画やヒーローもの、あるいは『サウンド・オブ・ミュージック』のような映画しか見たことがなかったんです(笑)!なので、犯人が警察に撃たれるという展開は初めてでした。ハッピーエンドの映画に慣れていた僕にとって、この映画は「この世には理不尽なことがある」ということを教えてくれる作品でした。

誰かが本当に犯罪を犯すスリル、そして美しい新幹線があのような状況に置かれるという緊張感はとても新鮮な経験でしたね。初めてこの映画を観たとき、僕の心には感情的な傷跡が残りました。

草彅剛、Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix
草彅剛、Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix

――――――この作品を通して日本、そして世界にどのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか?

批評的に見ると、50年前に最初の映画が制作された当時と比べて、日本人は衰退していると思います。経済的な面でも、すべてが下り坂になっていると感じています。ただ、その「衰退」というテーマを映画の中心に据えてしまうと、誰も幸せになれません!

今回の『新幹線大爆破』では、登場人物たちは皆、決して立派な人たちではありません。一部の乗客も含め、それぞれに欠点を持っています。スキャンダルにまみれた政治家や、お金のことしか考えていないYouTuberなど、今の日本にはこのような人物が多く見られます。そして最終的に登場するのが、「命に対する感謝も希望も持っていない少女」です。僕たちはどのキャラクターも誰一人として死なせない、という点にこだわりました。

また、JRの職員たちは、いわゆる「ルーティン業務しかできない人々」として描かれています。草彅剛さんが演じたキャラクターは、その少女を殺せば全員を救うことができたかもしれませんが、彼にはそれができませんでした。「誰が本当のヒーローなのか」という問いが、犯人を描写するうえで伝えたかったメッセージになっています。僕は、草彅さんが演じたキャラクターこそが、現代の日本人を象徴している存在だと考えています。

実は最初にこの車掌というキャラクターを考えたとき、彼には家庭があり、帰るべき家があるという設定だったんです。そして、「家族」と「仕事」の間で葛藤するという背景を想定していました。しかし、このキャラクターの設定を最初にJR側に提案した際、彼が新幹線からスマホで家族にメッセージを残したり、メールを送ったりするシーンは現実的ではないと言われました。なぜならJRの車掌は新幹線に乗る際、スマホを駅のロッカーに預けるため、車内に持ち込むことはなく、外部や家族との連絡を完全に断ってしまうからです。

Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix
Netflix『新幹線大爆破』写真:Netflix

――――――世界中で制度や市民社会への信頼が崩れつつある今、本作は人々が協力して問題を解決していく姿を称えているように感じました。今の世界は日本から何かを学べると思いますか?また、JRから受けたアドバイスは他にもありますか?

僕は、日本のメッセージを世界に押し出すつもりはありません!それよりもむしろ、観た人がこの映画をどう受け止めるのかに興味があります。

初めてアメリカの空港に行ったとき、ボディチェックを担当している人たちを見て、その人たちがまるで私生活の延長のような雰囲気で働いていて、すごく自由な空気が流れていたのがとても衝撃的でした。それが、アメリカという国をよく表していると感じました。どの国も他の国のようになる必要はないと思っています。それぞれの国が互いに学び合い、良いところを取り入れていけばいいのです。

しかも、飛行機の中ではスナック菓子を投げて配っていたんです(笑)!ああいうのを見ると、「自分もその一員になっていいんだ」と思えてくるんですよね!新幹線では絶対にあり得ない光景ですよ(笑)!些細なことかもしれませんが、それがアメリカでの体験の中でとても印象的なことでした。僕は、その雰囲気が大好きです。

JRには非常に多くの規則があるので、もしそのすべてを厳密に守って映画を作っていたら、ほとんど何もできなかったと思います!そういう意味では、僕たちに製作の自由を与えてくれました。ただし、僕たちはJRの職員の方々の考え方にしっかり寄り添うよう心がけていて、彼らがこのような状況に置かれたらどう行動するかを真剣に考えながら進めました。

**

映画『新幹線大爆破』は、Netflixで独占配信中。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿