アリ・アスター監督作『エディントン』、カンヌで語られた現代アメリカの闇

映画『エディントン / Eddington(原題)』の監督アリ・アスターとキャストのホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーンらがカンヌ国際映画祭のプレスカンファレンスに登場し、映画が描くアメリカ社会の現実について語った。
本作の舞台は2020年5月、架空のニューメキシコ州の小さな町。地元保安官のジョー・クロス(ホアキン・フェニックス)は、カリスマ性を持ち、コロナ対策を重視する現職市長テッド・ガルシア(ペドロ・パスカル)に挑むことを決意する。ジョーの選挙運動が激化するにつれ、右派の陰謀論や黒人差別問題、ジョージ・フロイドの死をきっかけとした警察暴力抗議活動がニュースやSNSを通じて広がっていく。
監督のアリ・アスターは、「この映画は恐怖と不安の中で書いた」と語る。「誰も同じ現実を共有していない世界に生きている感覚を描きたかった。過去20年間で私たちは極端な個人主義に陥り、互いに関わり合うことを忘れつつある」と指摘した。また、「この実験は失敗しているように感じる。無力感や恐怖が広がり、抜け出せないような社会になっている」と続けた。
ペドロ・パスカルは、アリ・アスターの脚本について「内部告発者のように感じた」と表現。「私たちは外側から見られることが多いが、アリの映画は内側から『今こうなっている』と伝えている」と語った。
トランプ政権によるラテン系移民の取り締まりについて問われた際、ペドロ・パスカルは「俳優としてこうした問題に言及するのは怖い」としつつも、「私は移民で、両親はチリの難民だった。もしそうでなければ、今の自分はいなかったかもしれない。だからこそ移民への保護政策を支持する」と語った。
現実とネットの情報の交錯についてエマ・ストーンは、「アリの脚本は私の恐怖を裏付けるようなものだった」と述べた。「インターネットで関連情報を検索すると、どんどん関連するものが出てくる。それが現実感をさらに崩壊させる」と語り、ネット社会の恐怖を訴えた。
カンヌでのプレミア上映後、『エディントン』には5分間のスタンディングオベーションが送られた。涙ぐんだホアキン・フェニックスには大きな拍手が巻き起こり、アリ・アスター監督は「夢が叶った。何を言えばいいかわからないが、皆に感謝している」と感極まった様子で話した。
映画『エディントン』は、全米で2025年7月18日に公開予定。
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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