【レビュー】『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』MCUの救世主となるか?マーベルが“原点回帰”で描く、スーパーヒーロー家族の絆

マーベル・スタジオによる新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が抱えてきた数々の課題に真正面から向き合い、“ヒーロー映画の原点”に立ち返った意欲作である。
近年、複雑なマルチバース設定などにより、観客の間には「スーパーヒーロー疲れ」ともいえる現象が広がっていた。本作はそうした背景を踏まえ、予備知識なしでも楽しめる構成と、感情移入しやすい等身大のキャラクターたちを前面に据えることで、初心者にもやさしい作品に仕上がった。
特に印象的なのは、エンドクレジットで引用されるジャック・カービー(原作コミックスの共同創作者)の言葉である。「私のキャラクターを見れば、そこに私を見つけるだろう。どのようなキャラクターを創造しても、あなた自身の一部がそこに残るのだ」。マット・シャックマン監督と脚本陣はこの言葉を制作の軸とし、特殊能力を持ちながらも苦悩し、支え合いながら成長していく“家族の物語”を丹念に描いている。
◆『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』あらすじ
天才科学者リード・リチャーズ(演:ペドロ・パスカル)は、妻のスー・ストーム(演:ヴァネッサ・カービー)とスーの弟ジョニー(演:ジョセフ・クイン)、そして親友のベン・グリム(演:エボン・モス=バクラック)と宇宙探査へと旅立つ。しかし、宇宙で謎の嵐に巻き込まれた4人は、それぞれ異なる能力を得て地球に帰還する。
身体をゴムのように自由に伸び縮みさせることができるリード/ミスター・ファンタスティック。姿を透明にし、強力なフォース・フィールドを作り出す力を持つスー/インビジブル・ウーマン。炎を自在に操り、空中を飛び回るジョニー/ヒューマン・トーチ。そして岩のような硬い体と、並外れた怪力を手に入れたベン/ザ・シング。こうして4人は“ファンタスティック4”として地球の守護者として活躍し、人々から親しまれる存在となっていく。
しかし、地球に謎の銀色の存在・シルバーサーファー(演:ジュリア・ガーナー)が現れ、惑星を喰らう脅威・ギャラクタス(演:ラルフ・アイネソン)の接近を告げる。さらにスーの妊娠という新たな命の予感も交錯し、固い絆で結ばれた4人は“家族”として、世界の命運を懸けた戦いに挑む―――。
◆人間味あふれるキャラクターたち|超人たちの“素顔”
ファンタスティック4のメンバーは、能力こそ超人的だが、その内面は実に人間的だ。天才科学者リードは感情表現が苦手で、決断力のあるスーはチームのリーダー的存在として描かれている。明るいムードメーカーのジョニーは、子ども扱いされていることへの悩みを抱えているように見え、ベンは屈強な外見に反して誰よりも繊細で傷つきやすい心を持っている。
俳優たちの演技は素晴らしく息もぴったり合っており、豪華なバクスター・ビルのペントハウスでの団らんシーンが特に印象的だ。そこには『宇宙家族ジェットソン』のロージーと『ショート・サーキット』のナンバー5を組み合わせたような家庭用ロボット”ハービー”も登場する。
また本作では、従来は男性キャラクターとして描かれてきたシルバーサーファーをジュリア・ガーナーが演じ、銀色のCGスーツを身にまとい、冷静沈着な存在感を発揮している。その表情は冷たいが弱さを見せる一幕もあり、悲しい過去を背負っていることが明かされる。
◆物語のテーマは「家族」
本作は派手なアクションよりもキャラクター描写を重視しており、物語の中心には4人の仲間たちの深いつながりと、世界中の人々を守りたいという純粋な気持ちがある。特に「家族こそが希望と力の源である」というメッセージが作品全体のテーマとなっており、世間から批判を受けた後にスーが人々の前で話すシーンで、このメッセージが力強く伝えられる。
4人の主演俳優たちは、それぞれのキャラクターを生き生きと演じており、個性豊かでありながらもバランスの取れた演技で、チーム全体に魅力的な雰囲気を作り出している。
◆美術と演出|60年代×近未来が融合した“新しい懐かしさ”
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の舞台は、原作誕生の時代にあたる1960年代のニューヨーク。マイケル・ジアッキーノによる高揚感ある音楽と、アレクサンドラ・バーンの衣装デザインにより、レトロな雰囲気と近未来的な要素が見事に融合している。
ファンタスティック4の本拠地であるバクスター・ビルのペントハウスは、ミッドセンチュリー・モダンの美学を体現しており、家具や照明、壁に埋め込まれたバーに至るまで、細部までこだわり抜かれている。シャックマン監督が『ワンダヴィジョン』で表現した1950〜60年代の雰囲気をさらに洗練させ、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のような遊び心と重厚感が同居する映像美が実現している。
CGも期待通りのクオリティだが、ただの視覚効果にとどまらず、実写セットとの調和により「本当に存在する世界」のようなリアリティを生んでいる。ギャラクタスが空からイースト川に降り立ち、雷鳴のような音とともにロウアー・イースト・サイドを破壊するシーンは、IMAX上映でこそ真価を発揮する迫力である。
◆MCU新章へつながる重要作|エンドクレジットも要チェック
本作は、エンドクレジットまでしっかりと観ることをおすすめする。シリーズ第5弾となる新作『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に再び登場することがほのめかされているが、魅力的なファンタスティック4のメンバーたちには、今後も単独映画で活躍してほしい。
<『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』作品情報>
■公開日:7月25日(金)
■監督:マット・シャックマン
■脚本:ジョシュ・フリードマン、エリック・ピアソン、ジェフ・キャプラン、イアン・スプリンガー
■原作:スタン・リー&ジャック・カービー
■キャスト:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、エボン・モス=バクラック、ジョセフ・クイン、ジュリア・ガーナー、ナターシャ・リオン、ポール・ウォルター・ハウザー、ラルフ・アイネソン
■上映時間:115分
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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