ホラー映画の新たな時代を築いた25本──21世紀の名作集

パンデミック以降、不安定な映画業界の中で、観客を劇場に呼び戻した数少ないジャンルがホラーだ。今やホラーはハロウィンだけでなく、年間を通して注目される人気ジャンルになっている。近年は『28年後…』続編や90年代の名作リブート、新作ボディホラーや話題作が相次いで公開されている。
ホラーは昔から社会の不安を映し出してきた。地球温暖化やAIの進化、民主主義の揺らぎ、「異なるもの」への恐怖といった21世紀の問題が、新たな創作を生み出し、今は“新たな黄金時代”とも呼べる。
25本に絞るのは非常に難しく、スタジオ作品からインディーズ、アメリカや海外作品まで多くの傑作が存在する。個人的に、過度な残虐描写よりも雰囲気や寓意的な作品を重視し、『ムカデ人間』や『SAW』などは除外。ミア・ゴス主演のスラッシャー3部作も好きだが、今回はスラッシャーを外し、オカルト色の強い作品を中心に選んだ。
ランキングに入れなかったものの、以下に挙げる映画も評価が高くぜひチェックしてほしい。
『バーバリアン』(2022)、『デビルズ・バックボーン』(2001)、『the EYE 【アイ】』(2003)、『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(2014)、『グッドナイト・マミー』(2014)、『イノセンツ』(2022)、『イット・カムズ・アット・ナイト』(2017)、『ミッドサマー』(2019)、『ナニー』(2022)、『永遠のこどもたち』(2008)、『プレデター:ザ・プレイ』(2022)、『回路』(2001)、『RAW~少女のめざめ~』(2017)、『テルマ』(2017)
25位『ボーンズ アンド オール』(2022)
監督:ルカ・グァダニーノ
人肉を喰らうカップルのロードムービー。禁断の愛と渇望が交錯するなか、切なくも美しい旅路を描く。主演のティモシー・シャラメとテイラー・ラッセルが繊細な演技で魅了。カニバリズムを題材にしながらも詩的で感情豊かな作風が特徴。
24位『Talk to Me トーク・トゥ・ミー』(2022)
監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ
死者の霊と交信できる手を使い、若者たちが霊的な世界へと足を踏み入れる。SNS世代の恐怖を巧みに描き、パーティで起きる狂気の連鎖をスリリングに描写。主演のソフィー・ワイルドが印象的な初主演作。
23位『クワイエット・プレイス』(2018)
監督:ジョン・クラシンスキー
音に反応する謎の生物がはびこる世界で、音を立てずに暮らす家族の極限サバイバルを描く。緊迫感あふれる静寂の中で展開される家族愛と恐怖が胸を打つ。続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』も高評価を得た。
22位『アンダー・ザ・シャドウ 影の魔物』(2016)
監督:ババック・アンヴァリ
1980年代の戦争中のテヘランを舞台に、母娘が戦火と怪異“ジン”に怯える。政治的混乱と女性抑圧を背景に、文化的深みと心霊恐怖を融合させた新感覚ホラー。
21位『獣の棲む家』(2020)
監督:レミ・ウィークス
内戦を逃れて英国に移住した難民夫婦が、政府から割り当てられた家で超自然的な恐怖に直面。社会的現実とホラーを結びつけた新鮮な視点が高く評価された。
20位『スペル』(2009)
監督:サム・ライミ
ローンオフィサーの女性が老人に呪いをかけられ、悪霊との壮絶な戦いを繰り広げる。スプラッターとユーモアを巧みに融合させたライミ節全開のエンタメホラー。
19位『イット・フォローズ』(2014)
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
呪いの“それ”がセックスを媒介に次々と襲う、独特の緊張感漂うホラー。幻想的で退廃的な映像美と追跡の恐怖が共存する傑作。
18位『プレゼンス 存在』(2024)
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
全編一人称視点で撮影されたホーンテッドハウス。幽霊視点で家族に襲いかかる不気味さと緊張感が続く、低予算ながら完成度の高い作品。
17位『透明人間』(2020)
監督:リー・ワネル
元恋人の暴力から逃れた女性が、透明なストーカーに追われる心理スリラー。#MeToo時代の虐待をテーマにした、社会性を持つモダンホラー。
16位『罪人たち』(2025)
監督:ライアン・クーグラー
ジム・クロウ時代の南部を舞台に、双子のギャングが故郷でジュークジョイントを開く。ブルースの霊性とヴァンパイア要素が融合した異色作。
15位『セイント・モード/狂信』(2019)
監督:ローズ・グラス
末期患者に献身的に仕える看護師が、狂気の宗教観に取り憑かれる。精神の崩壊と宗教的熱狂を繊細に描いた心理ホラー。
14位『アザーズ』(2001)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
第二次世界大戦後の屋敷を舞台に、光に弱い子供たちと母親が不可解な現象に翻弄される。重厚なゴシックホラーの傑作。
13位『ノスフェラトゥ』(2024)
監督:ロバート・エガース
1922年の名作を現代に蘇らせた美しい吸血鬼映画。異様な雰囲気と詩的な映像美で新たな恐怖を創出。
12位『アス』(2019)
監督:ジョーダン・ピール
自分たちの影のような“テザー”に襲われる家族の戦いを描く。社会的メタファーと衝撃的な展開が話題を呼んだ。
11位『ウィッチ』(2015)
監督:ロバート・エガース
17世紀ニューイングランドの森で家族が魔女の呪いに翻弄される。言語や衣装の考証にこだわったリアリズムと恐怖が光る作品。
10位『ヘレディタリー/継承』(2018)
監督:アリ・アスター
祖母の死後、家族に不穏な呪いが降りかかる。トラウマや精神疾患を織り交ぜた家庭ホラーの新境地。トニ・コレットの熱演が光り、衝撃的な結末で観る者の心に深い爪痕を残す。
9位『死霊館』(2013)
監督:ジェームズ・ワン
実在の心霊調査夫婦が呪われた家の謎に挑む。伝統的な幽霊屋敷ホラーの名作で、緊迫感ある演出と実話の重みが恐怖を倍増させた。
8位『パンズ・ラビリンス』(2006)
監督:ギレルモ・デル・トロ
フランコ独裁下のスペインで、少女が幻想的な迷宮と恐ろしい現実に向き合う。ダークファンタジーと残酷な歴史が交錯する美しい傑作。
7位『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)
監督:ヨン・サンホ
ゾンビ感染が広がる高速列車内での生存劇。緊迫のサバイバルと人間ドラマを融合させ、アジア映画のホラー金字塔となった。
6位『28日後…』(2002)
監督:ダニー・ボイル
ウイルス感染で荒廃したロンドンを舞台に、生存者たちのサバイバルを描く。ゾンビ映画に新風を吹き込み、後の作品群に多大な影響を与えた。
5位『グエムル-漢江の怪物-』(2006)
監督:ポン・ジュノ
漢江に出現した怪物に家族が立ち向かう。社会風刺と怪獣映画の融合が鮮やかで、ポン・ジュノ監督の名を世界に知らしめた代表作。
4位『ババドック 暗闇の魔物』(2014)
監督:ジェニファー・ケント
息子の夜泣きと母親の精神不安が交錯し、絵本から出現した怪物と対峙。心の闇と喪失感を象徴的に描いた心理ホラー。
3位『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)
監督:トーマス・アルフレッドソン
孤独な少年と吸血鬼の少女の繊細な交流を描く。北欧の冷たい風景の中に潜む純愛と恐怖が胸を打つ、吸血鬼映画の名作。
2位『ゲット・アウト』(2017)
監督:ジョーダン・ピール
人種差別を題材にした社会派スリラー。黒人青年が白人彼女の家族に迎えられたが、恐ろしい陰謀が待ち受ける。鋭い社会批評とサスペンスの融合。
1位『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013)
監督:ジョナサン・グレイザー
スコットランドを舞台に、人間の男性を狩る異星人女性の孤独と共感を詩的に描く。映像美と哲学的テーマが際立つ、異色のSFホラー。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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