THR独占『万引き家族』是枝 裕和監督へ5つの質問

Hirokazu Kore-eda
Hirokazu Kore-eda COURTESY OF TOKYO INTERNATIONAL FILM FESTIVAL

今回ハリウッドリポーターは、『万引き家族』でパルム・ドールを受賞した是枝監督に独自インタビュー。日本の映画界に必要な変化や感銘を受けた映画について伺った。

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東京国際映画祭の革新を進めている是枝監督が2020年に始めた『トークシリーズ@アジア交流ラウンジ』は、アジアを含む世界各国・地域を代表する映画人と第一線で活躍する日本の映画人が語り合うトークシリーズ。2回目となる今年はオスカー受賞・ポン・ジュノ監督と、日本アニメの巨匠・細田守監督、映画祭審査委員長を務めたフランスのイザベル・ユペールと、カンヌ受賞・日本の濱口竜介監督などを迎えて対談した様子をライブ配信した。

ーー是枝監督が何年も東京国際映画祭に訴えてきた”変化”ですが、いくつかはすでに改善されているように感じます。監督はどのような成果があったとお考えですか?また、その他に改善できると思う点はありますか?

東京国際映画祭の改善点などを意見していくなかで、「意見があるなら、一緒にやろう」と(東京国際映画祭の)メンバーに言われ、昨年の初めからスタッフの一員として働くようになりました。

そのため、今の立場で映画祭に対する批判を発言するのは不適切だと思っています。

映画祭には大きな変化が起きていると感じています。変化の過程では多くの批判や意見が生まれるかと思いますが、それも必要です。

私が始めた『トークシリーズ@アジア交流ラウンジ』もまだ試験的な試みであるため、改善が必要だと感じています。来年、コロナが落ち着いた際は、私たちが思い描いている映画祭がようやく実現出来ると思います。

日本が韓国映画から学べることは沢山あります。

例えば釜山国際映画祭の成功は、韓国映画界の成功に直結していると言えます。釜山国際映画祭は、長いあいだ韓国国内の若い監督を支援し、人々の映画への愛を育んできました。東京国際映画祭よりも歴史は短いですが、世界の重要な映画祭の1つに数えられるまで成長しました。この成長は、私が東京国際映画祭をより良くしたいと思う動機にもなっています。

最近の韓国エンタメ界の成長を考えるためには、ここに来るまで何十年かかったのか、映画制作者、映画会社、団体がどれだけの努力をしてきたのかを知る必要があります。そのため、韓国で成功したモデルをそのまま日本で取り入れても、状況が違うので上手くいかないでしょう。彼らの長期的なアプローチ方法から学べる点を探すべきだと考えます。

また、日本と韓国の映画界では、年齢層が違います。韓国では若い制作者が多いので、日本でも映画界の世代交代が必要だと考えます。日本の政界や文化産業界、ビジネス界などにおいても同じことが言えますが、若い世代を積極的に取り込まない限り、日本では大きな変化は見込めません。若いリーダーが立つ事で、内側からポジティブな変化が起こるはずだからです。

第34回東京国際映画祭のポスター

映画界において改善が必要な点は、丸一日語れるほど沢山あります(笑)。

映画制作者として言えるのは、諸外国と比べても、日本には映画人をサポートしてくれるシステムが何もありません。

まず、業界の問題点・改善点を真剣に考えている監督がいません。映画界が必要としていることを国に交渉する気が本当にあるのか、と疑ってしまいます。

日本の映画界は非常に古いタテ社会で、これが業界にとって良い事なのか。業界として10年、20年後の映画文化を見据えているのか。ストリーミングの発達を映画界に有効活用できる方法を考えているのか。疑問に感じます。

これが東京国際映画祭の活動に参加しようと思った理由です。私が映画界に大きな貢献をできているかはわかりませんが、何らかの形で行動を起こしたいと考えています。

日本の映画の歴史は長く、日活、東宝、松竹などが100年以上業界をリードし、制作から配給、公開までを一貫して行います。このような独占市場が業界にとってプラスになっているのかは、正直疑問です。

その一方で、私を含めて映画制作者はみんなこのような会社とパートナーシップを結んでいますし、必要なパートナーというのも事実です。

静かに自分の作品を作っている方が簡単だと思いますが、誰かが言わなければ変わらないと思うので、これからも言い続けます。

ーー日本はNetflixのアジア主要市場であるため、最近は日本語コンテンツが増えています。Disney+とHBOMax(WarnerMedia)も同様の戦略です。海外の資本とプロデューサーが日本に進出することについて、どう考えますか?日本の映画界にとって良いことでしょうか?

もちろん、大きなチャンスだと思います。と同時に脅威でもありますね。単純に良いか悪いか、ではなく、この流れに正しく乗る必要性を感じます。

実際、ストリーミングでなければチャンスが無かったであろうクリエイティブな作品が、世に出てきています。制作者にとっては多くのメリットがあると言えるでしょう。

ただ、ストリーミング作品を制作する際には100カ国でどのように受け止められるかを考えなければならないと思うので、良くも悪くも作品に大きな影響を与えると思います。その点を踏まえたうえで、試してみるつもりです。

また、ストリーミングで配信する作品と映画館で公開する作品とでは、プロジェクトの進め方も変える必要があると感じています。ストリーミング制作会社で新しい制作スタイルにするか、これまでの様に低予算の劇場公開用の作品を作るか、どの選択が正しいかはまだわかりません。まずは試して比べてみたいと思っています。

ただ、ストリーミングに対して自分が違和感を感じているのは、ストリーミングでは作品のクレジットを見せずに次のエピソードにスキップする仕組みになっている点です。制作者としては一生懸命作品づくりに取り組んだので、スキップせずにクレジットまでしっかりと観てほしい、というのが正直な感想です。

ーー最後に、最近是枝監督が最も感銘を受けた作品・監督を教えてください。

私は予算がかかった大規模な作品よりも、小規模なインディーズ映画の方が好きな傾向があります。韓国作品だと、キム・ボラ監督の『はちどり』と、ユン・ダンビ監督の『夏時間』の2本が感銘を受けた作品です。

日本作品だと、濱口竜介監督の『偶然と想像』ですね。 次の日の朝も考えてしまうくらい良い作品で、監督としてとても羨ましく思いました。特に最後の、仙台駅のエスカレーターでのシーンについてずっと考えています。

正直、観てもすぐ忘れてしまう作品もありますが、この『偶然と想像』は心はずっと心に残り続けるような素晴らしい作品でした。

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東京国際映画祭 オープニングセレモニー

【リンク】

第34回東京国際映画祭公式HP

トークシリーズ@アジア交流ラウンジ [独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)HP]

First published at THR.com: Tokyo: 5 Questions with Japan’s Top Auteur Hirokazu Kore-eda

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