『MERCY/マーシー AI裁判』キャスト・監督が明かす驚きの撮影手法|AIが司法を担う近未来SF

クリス・プラット 写真:Cindy Ord/Getty Images
クリス・プラット 写真:Cindy Ord/Getty Images
スポンサーリンク

現地時間10月9日(木)、Amazon MGMスタジオ新作映画『MERCY/マーシー AI裁判』のキャスト・スタッフがニューヨーク・コミコンのパネルディスカッションに登壇し、同作の独自の撮影方法を明かした。パネルに出席したのは、俳優のクリス・プラットカーリー・レイス、監督兼プロデューサーのティムール・ベクマンベトフ、プロデューサーのチャールズ・ローヴェンだ。

このパネルでは、重要な役を演じるレベッカ・ファーガソンのメッセージ映像が流れたほか、同作の新予告編も公開された。

同作は2029年を舞台に、AIが司法を担う近未来を描く。ロサンゼルス市警の刑事レイヴン(演:プラット)は、ある日妻を殺害した容疑で裁判にかけられ、“AI裁判官”(演:ファーガソン)と対峙する。刑事はAI裁判官に対し、わずか90分で無実を証明しなければならない過酷な状況に立たされる。

AIがを法司る近未来の葛藤を俳優たちが熱演

プラットは、「この作品は自分にとって新境地でした」と語る。「レイヴン刑事は、警察の殺人課で様々な経験と苦難を乗り越えてきました。彼は、AIを使った司法制度である“マーシー・プログラム”の一員として、ロサンゼルスにおける凶悪犯罪を抑制しようとします。彼らはただこの街から殺人を根絶し、メッセージを発信したいだけなのです」

ベクマンベトフ監督はキャスティングについて「非常に個性的な俳優たち」を選んだという。「非常にドラマチックな物語の中で、クリスは暗く傷つきやすいキャラクターを演じています。この映画では、クリスの新たな一面を発見することができます。クリスはアクション映画で有名ですが、この映画ではほぼ90分間ずっと電気椅子に座っており、ドラマチックな演技をしています。カーリーは刑事のパートナー役として、彼をサポートします。そしてAI裁判官のレベッカは非常に賢く、観客は彼女の心を探求していくのです」

レイスは、自身が演じたキャラクターについてこう語った。「彼女はとても誠実ですが、隠された一面も持っています。私も脚本を読み、その一面を探らなければなりませんでした。脚本は非常に深いところまで掘り下げてあり、彼女のバックグラウンドを理解する基盤となりました。彼女がこの裁判を強く信じていることには理由があるのです」

敵か味方か?AIとの共存を問うテーマ

約90分という上映時間の理由について、ベクマンベトフ監督は「法廷では90分という時間が刻々と進みます。リアルタイムで物語を語らなければならないというルールがあったのです」と明かした。「私たちの世界にはAIが到来しつつあり、AIはすでにドアをノックしています。これから何が起こるのか、私たちはどのように生きていくのか、AIは私たちの味方か、敵か……それらを理解するための時間はほとんど残されていません。しかし、私たちはAIにどう振る舞うべきかを教えなければなりません」

ローヴェンが同作への参加を決めた理由の一つは、AIを扱っていることだった。「最初にこの企画を聞いた頃、AIは話題になっていましたが、まだ本格的には普及していませんでした。しかし、映画化の話が進み脚本を受け取った頃には、各企業がAIを本格的に活用するようになり、AIと共存する世界はそう遠くない未来になっていました」

ローヴェンは「皆さんはこの映画を観て、『本当にこんなことが起こるのか?』と話題にするでしょう。AIのような存在があらゆる証拠を瞬時に統合し、無罪か有罪かを判断することで、私たちの時間と空間にどのような影響を与えるでしょうか?果たしてそれは善か、悪か?そこに関して、多くの議論が生まれるでしょう」

長回しと最新撮影手法で新たな映像体験を

パネルの後半では、同作の独特のビジュアルや撮影方法について語られた。ベクマンベトフ監督は「私たちは今、人生の半分を現実世界で過ごし、残りの半分の時間をデジタル世界で過ごしています。つまり、人生で最も重要な出来事の半分は、デジタル世界で起こっているのです」

プラットは「映画では、刑事の前に1,000枚ものスクリーンが現れ、彼の過去10年間のデジタル記録が証拠として映し出されます。娘の秘密のインスタグラムアカウント、そこに投稿された妻に怒鳴る自分、そしてクラウドに保存されたFaceTimeの通話履歴、友人や家族の証言や防犯カメラの映像などです」と説明した。

プラット演じる刑事は、AI裁判官のみならず、他の警察官ともスクリーン越しに対話する。レイス演じるパートナーもホログラム映像として登場する。警察官役の俳優やレイスは、プラットとは別のセットで撮影を行った。プラットは「1テイクの長さは50~70分にも及びました。まるで舞台劇のように、ほぼ全編を長回しで撮影したのです。これは信じられない挑戦で、私がこれまで経験したことのないものでした」と語った。

同作では、撮影した映像とバーチャルプロダクション撮影を組み合わせる独自の技術が使用された。ベクマンベトフ監督は「マジックアワーを狙い、午前中のダウンタウンで5~6日撮影しました。撮影した映像をプロジェクターで投影し、バーチャルプロダクションと組み合わせてアクションシーンを撮影したのです」と明かす。

ローヴェンはこう説明した。「撮影した素材をスクリーンに映し出すボリュームステージと呼ばれる手法で、これほど多くのショットを撮影したのは初めてでした。トラックとパトカーが建物に突っ込むシーンでは、車両をボリュームステージに運び込み、ローラーに乗せて撮影しました。この撮影には3分ほどしかかかりませんでした。ボリュームステージを活用すると撮影が非常に速く進むのです」

さらに、ベクマンベトフ監督はロボドッグの活用についても語った。映画制作でロボドッグが使用されたのは史上初だと監督は明かした。「エキストラの群衆の中を進む映像を撮るため、ロボドッグにカメラを付けて撮影しました。ロボドッグへの指示は単純で、『向こうに行って、この人たちを撮影して』という内容です」

また、登壇者たちは同作をIMAXで鑑賞することを推奨した。ローヴェンは「IMAXでは、クリスが椅子に座って体験する裁判の臨場感をリアルに感じられます」と強調した。

『MERCY/マーシー AI裁判』は2026年1月23日(金)、日米同時劇場公開される。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿