ジョニー・デップが監督復帰!新作『モディリアーニ!』見どころを紹介 ―― 孤高の天才芸術家を描く伝記映画の魅力
▼ジョニー・デップが27年ぶりに監督復帰
俳優のジョニー・デップが、新作『モディリアーニ!』で長編映画の監督として復帰した。20世紀初頭にパリで活躍した芸術家アメデオ・モディリアーニの生涯を描いた同作は、1997年のカンヌ国際映画祭で上映された『ブレイブ』以来、実に27年ぶりの監督作品となる。
モディリアーニは卓越した芸術的才能で知られる一方、ドラッグや放蕩生活、そして当時の保守的な価値観に挑戦する生き方でも注目を集めた人物だ。ジョニー・デップ自身も俳優としての才能と同時に型破りな生き方で知られており、元妻アンバー・ハードとの法廷闘争が世界中のメディアで報道されたことは記憶に新しい。デップがモディリアーニという人物に共鳴し、その生涯を映画化することを選んだ背景には、こうした共通点があるのかもしれない。

▼当初はアル・パチーノが監督予定だった

興味深いことに、映画『モディリアーニ!』は当初アル・パチーノが監督する予定だった。しかしパチーノ自身がデップに監督を務めるよう打診し、デップがこれを引き受けた。その結果、パチーノは監督業から退き、美術コレクターのモーリス・ガニャという重要な役どころで本作に参加することになった。パチーノはジョニー・デップの友人であり、1997年の映画『フェイク』では共演を果たしている。
▼国境を越えて豪華実力派キャストが集結

主人公モディリアーニ(愛称:モディ)を演じるのは、イタリア出身の名優リッカルド・スカマルチョ。『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)や『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(2023)など、ハリウッド作品でも大活躍中のスカマルチョは、圧倒的な存在感で芸術家としての苦悩と情熱を体現している。
映画は1916年頃のパリを舞台に、モディリアーニの人生を変えた激動の72時間を切り取って描いている。モディを取り巻く親しい仲間の面々には、ブリュノ・グエリ(モーリス・ユトリロ役)、ライアン・マクパーランド(シャイム・スーティン役)、そしてNetflixの話題作『アドレセンス』(2025)でエミー賞に輝いたことも記憶に新しいスティーヴン・グレアム(画商レオポルド・ズボロフスキ役)が顔を揃える。
特に注目すべきは、モディリアーニのミューズであるベアトリス・ヘイスティングス役を演じるフランスの気鋭、アントニア・デスプラの演技だ。デスプラは完璧なキャスティングと言える存在感で、ヘイスティングスの知性、繊細さ、そして恋人との複雑な関係性を巧みに表現している。
▼時代を先取りした現代的女性像

映画の中で特に魅力的なキャラクターとして描かれるのが、作家・批評家であるベアトリス・ヘイスティングスだ。現代的なストーリーテリングの観点から見ても、ヘイスティングスは共感しやすい女性像として描かれている。彼女は自身のキャリアに情熱を持ち、締め切りに追われているときはモディを締め出すほど仕事に集中する姿勢を見せる。
モディが「自分は本物の芸術家で、君はただ芸術について書いているだけだ」と言った場面では、ヘイスティングスは力強く反応する。このシーンは、当時としては珍しい、自立した女性の姿を印象的に描いている。
アントニア・デスプラの容姿も役柄にぴったりで、現在ロンドンのコートールド・ギャラリーに所蔵されている『座る裸婦』の、目を閉じて頬を紅潮させた女性によく似ている(この作品のモデルはヘイスティングスだったと考えられている)。
▼芸術家の苦悩と人間性を描く伝記映画の新たな試み

『モディリアーニ!』は、芸術家の生涯を描く伝記映画として独自の立ち位置を示している。モディリアーニは歴史上、ピカソ、ガートルード・スタイン、ジャン・コクトー、フアン・グリスといった20世紀初頭パリの前衛芸術家たちと親交があったことで知られている。しかし今回の脚本は、こうした著名人たちを背景に置き、より親密な人間関係に焦点を当てることを選択した。
映画の中心となるのは、モディリアーニが著名なコレクターであるモーリス・ガニャに作品を売り込むのを待つ数日間のカウントダウンだ。限られた時間の中で、モディリアーニの人間性と芸術家としての苦悩が描かれる。リッカルド・スカマルチョの演技は、観客をこの旅に引き込む力を持っている。
映画には、ワインを飲んだモディが空に印象的な幻影を見るトリップシーン、恋人ヘイスティングスとの激しい口論や、陶器や芸術作品が飛び交う生々しい場面も描かれており、アートハウス向けの雰囲気が漂う時代劇でありながら、リアルな人間ドラマとしても機能している。
▼ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽が彩る映像世界

『モディリアーニ!』のもう1つの魅力は、印象的な音楽だ。映画にはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやトム・ウェイツの楽曲の断片が効果的に使用されており、ジョニー・デップの音楽的センスが反映されている。
特に印象的なのが、英国の音楽グループ、タイガー・リリーズによる劇中音楽である。独特のリズムで演奏される彼らの音楽は、20世紀初頭のパリの雰囲気を現代の観客にも親しみやすい形で表現することに成功している。
ジョニー・デップの27年ぶりの監督作品『モディリアーニ!』は、リッカルド・スカマルチョとアントニア・デスプラの熱演、魅力的な音楽、パリの映像美を通して、誰もが知る芸術家の人間的な側面を丁寧に描き出した。アートハウス映画ファンはもちろん、幅広い観客に響く内容となっている。
映画『モディリアーニ!』は、2026年1月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
<映画『モディリアーニ!』作品情報>
- 監督:ジョニー・デップ
- 脚本:ジャージー・クロモウロウスキ、マリー・オルソン・クロモロウスキ
- 原作:戯曲「モディリアーニ(デニス・マッキンタイア)」
- 出演:リッカルド・スカマルチョ、アントニア・デスプラ、ブリュノ・グエリ、ライアン・マクパーランド、スティーヴン・グレアム、ルイーザ・ラニエリ、アル・パチーノ
- 2024年/イギリス・ハンガリー/英語・フランス語・イタリア語/108 分/ヨーロピアンビスタ/カラー/5.1ch/原題:Modi:Three Days on the Wing of Madness/日本語字幕:岩辺いずみ
- 配給:ロングライド、ノッカ
- 協賛:LANDNEXT、セレモニー
©︎Modi Productions Limited 2024 https://longride.jp/lineup/
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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