【レビュー】マイケル・キートンが監督・主演・製作を務める『殺し屋のプロット』――記憶を失う病に侵された老ヒットマンの「人生の終わらせ方」
マイケル・キートンが監督・主演・製作の3役を務めた映画『殺し屋のプロット』が、現在全国の劇場で公開中だ。
本作は、記憶を失う病に侵された老ヒットマンが、人生最期の完全犯罪に挑むLAネオ・ノワール。キートンにとって半世紀を超えるキャリアの集大成とも言える。共演には”ハリウッドの生ける伝説”アル・パチーノをはじめ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジェームズ・マースデン、ヨアンナ・クーリクら豪華キャストが集結した。
老ヒットマンが人生最期の完全犯罪に挑む
ジョン・ノックス(演:マイケル・キートン)は、2つの博士号を持つ元大学教師で元陸軍偵察部隊の将校という異色の経歴を持つプロフェッショナルだ。だが、それは表の経歴であり、“殺し屋”という裏の稼業を、老ヒットマンとなった現在まで完璧にこなしてきた。そんなノックスが急速に記憶を失う病だと診断され、残された時間はあと数週間だという。ノックスは病の診断を受け、引退を決意するが、疎遠だった息子マイルズ(演:ジェームズ・マースデン)が殺人の罪を犯し助けを求めてくる。消えゆく記憶の中、父は息子のために人生最後の完全犯罪に挑む。
▼『殺し屋のプロット』予告動画
マイケル・キートンのキャリアの集大成
『ビートルジュース』『バットマン』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『スポットライト 世紀のスクープ』を始め、ヒーロー映画から社会派ドラマまで多岐にわたる作品に出演しているマイケル・キートン。数々の賞を受賞しハリウッドの名優の一人であるキートンは、本作の脚本に惚れ込み、監督・主演・製作を引き受けた。
俳優の円熟期を迎えたキートンが人生最期の仕事に挑む老ヒットマンを演じることで、作品全体に緊張感とリアリティをもたらしている。また本作はLAネオ・ノワールだが、ド派手な銃撃戦やカーチェイスで惹きつけるのではなく、ノックスの潔癖なまでの計画の緻密さや仕事への流儀を描き出す。その“静”の演出が、半世紀のキャリアを持つキートンの存在感と凄みを際立たせる。
マイケル・キートンとアル・パチーノが交わす対話に圧倒される

映画界のレジェンドであるマイケル・キートンとアル・パチーノの初共演も、本作の見どころの一つだ。アル・パチーノは、ノックスの仕事に協力するメンターであり友人のゼイヴィアを演じる。人生の終わりを迎える男たちの対話、そして長年の友情と絆があるからこそ成り立つ沈黙が、仕事の相談をする以上の存在として、ストーリーに重みを生み出している。絶妙な間の取り方や眼差しだけで、孤独や葛藤を表現する2人の演技に圧倒される。
またアル・パチーノの過去作品を彷彿とさせる伝説のシーンが登場する。映画ファンにはたまらない演出になっているので注目してほしい。
「人生の終わらせ方」を描く重厚な人間ドラマ

キートンは「この映画は一つのカテゴリーには入れられない。そして気付いたんだ。一つのカテゴリーにあてはまらないところが魅力なのだと。主人公のノックスの仕事はヒットマンだが、それは生業にしかすぎない。これは人間関係の映画だ」と語るように、ノックスと息子と前妻、メンターであるアル・パチーノ演じるゼイヴィアと、重厚な人間ドラマを繰り広げていく。疎遠だった息子や前妻と向き合って対峙する姿は涙なしでは観られないだろう。
また人間ドラマでありながら、「どのように人生を終えるか」という哲学的なテーマも根底に流れている。急速に記憶を失うクロイツフェルト・ヤコブ病と診断され終活を考え始めるノックス。息子や前妻に対し、父と元夫として自分はどう在りたいか、その理想の姿を体現していく。記憶が失われる中、「人生の終わらせ方」を緻密かつ完璧に遂行しようとするその姿は、美しさすら感じさせる。
映画『殺し屋のプロット』は全国の劇場で公開中だ。

【作品情報】
- 監督・製作:マイケル・キートン
- 出演:マイケル・キートン、ジェームズ・マースデン、ヨアンナ・クーリク、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アル・パチーノ
- 2023年/アメリカ/英語/カラー/ビスタサイズ/115 分/原題:KNOX GOES AWAY/字幕翻訳:大城弥生/映倫区分:G
- 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
- 公式 HP:https://kga-movie.jp
- 公式 X:@5648_plot (https://x.com/5648_plot)
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