A24から最恐の“聴覚ホラー”が誕生!映画『Undertone』制作秘話を監督が語る――両親の末期がん介護から着想
A24の新作ホラー映画『Undertone(原題)』は、「あなたが今まで“聞いた”中で最も恐ろしい映画」と宣伝され、音響効果によって恐怖を煽る「聴覚ホラー」として話題となっている。
本作は昨年7月の第29回ファンタジア国際映画祭でプレミア上映され、数々の賞を受賞した。
全米では3月13日(金)より公開中で、ギャガ配給で日本でも公開が決定した。
本記事では話題の新作『Undertone』が誕生した背景を、脚本・監督を務めたイアン・トゥアソンのインタビューを交えて紹介する。
「音」が恐怖を生む聴覚ホラー!話題沸騰の映画『アンダートーン』とは
『Undertone』は、末期がんの母親の世話をしながら超常現象ポッドキャスターとして活動するエヴィ(演:ニーナ・キリ)が、「邪悪な何か」に追い詰められていくホラー作品。
イアン・トゥアソンは、制作費約50万ドル(約8,000万円)で本作を撮影した後、A24が配給権を獲得した。電子プレスキット(EPK)の制作時、トゥアソンは「A24あるいはNEONに数百万ドルで売り込む」と宣言し、見事実現させた。
本作は、トゥアソンの実体験から制作されたという。本作の完成までの5年間、トゥアソンは地元のカナダ・トロントで末期がんを患った両親の介護にあたり、母親は2021年、父親は2023年に亡くなった。主人公エヴィは、トゥアソン自身を投影したキャラクターだ。
トゥアソンはその悲痛さを表現するため、ラジオドラマの脚本を執筆した後、長編映画の脚本として完成させた。そして、両親が残した遺産も含めて全財産をはたき、全制作費の3分の1を自費で捻出。その他の出資者も確保し、本作を撮影した。予算を抑えるため、撮影はトロントのトゥアソンの自宅で行われた。
以下、米『ハリウッド・リポーター』によるトゥアソンのインタビューをお届けする。トゥアソンは『Undertone』制作の経緯や、次回作の展望について赤裸々に語った。
監督・俳優のポッドキャスト経験が生きた「音」の演出
――『Undertone』を鑑賞して、本作の監督はポッドキャスターか、ポッドキャストに詳しい人だと感じました。いかがでしょうか?
私は、自分で書いた小説を音楽に合わせて朗読する、オーディオブックのようなポッドキャストをいくつかやっていました。今もネット上で聴くことができます。また、毎日多くのポッドキャストを聴いています。
――本作は、ポッドキャスト収録におけるリアルな描写が多く含まれていました。主演のニーナ・キリが元ポッドキャスターであることも関係していますか?
それはニーナのおかげだと思います。彼女は「大学時代にポッドキャストを配信していた」と語っていました。アダム・ディマルコ(ジャスティン役)は、実録犯罪系のポッドキャストを聴きながら寝る女性が多いことを「不思議だ」と言っていました。
だからアダムは、劇中のポッドキャストで柔らかく落ち着いたASMR風の声を出すようにしたのです。これは台本の指示ではなく、俳優たちが自分で考えたものです。

――エヴィとジャスティンの出会いに関する裏設定はありますか?
2人は、大学時代に一緒にポッドキャストをやっていた旧友という設定です。
――制作関係の知人に聞いたところ、一般的な映画の音声トラックやファイル数は200~600程度だそうです。「聴覚」を前面に出した本作は、これよりもトラック数が多いのでしょうか?
そうです。トロントのポストプロダクションスタジオが提供してくれた膨大な音声ライブラリの中から、最適な音声を厳選しました。そして、観客の「頭」の周りのあらゆる方向から聞こえるよう、音声をミックスしました。
――クリストファー・ノーランは「映画業界は音響デザインに関してかなり保守的だ」と語っています。音声と映画体験の関係について、どう考えていますか?
その分野は、まだほとんど発達していないと思います。今作について「こんな音響は聞いたことがない」という意見をいただきますが、技術が進歩するにつれ、似たような作品が出てくるでしょう。世の中の天才たちがこれからどんな作品を作るのか、とても興味があります。
A24が配給へ――インディーズ映画が大型配給を勝ち取るまで
――『アンダートーン』は自主的なプロジェクトから始まり、制作から配給まで見事実現させました。その経緯を教えてください。
正直に言って、最初から信じてくれる人はほとんどいませんでしたが、脚本を読んで「参加したい」と言ってくれる人もいました。そして少しずつ出資者が増え、50万ドルの予算をカバーすることができました。
資金ゼロの状態で脚本だけを売り込むのと、資金を確保した状態でプロジェクトを売り込むのとでは、大きな違いがあります。コーディ・キャラハンとダン・スレイターという2人のプロデューサーは、最も大きな役割を果たしてくれました。特にダンは、信頼できる人脈があっただけでなく、「この作品は成功する」と信じてくれました。
そして、昨年7月のファンタジア国際映画祭での上映後、1日で多数の入札があり、入札合戦になりました。その結果、カナダ映画史上最高の買い付け金額を記録しました。
――最終的にA24が落札しましたが、まさにA24らしい映画ですね。最初からA24を意識していましたか?
そうですね。2025年2月に撮影を終えた直後、電子プレスキット(EPK)を制作した時点で「A24かNEONのどちらかに売却する」と明言していました。
イアン・トゥアソン監督の「介護体験」から生まれた物語
――A24が実際に入札してきた時は、どんな心境でしたか?
プロデューサーやチームのメンバーは大喜びしていましたが、私は不思議な心境でした。もし5年前の自分だったら、手放しで喜ぶことができたでしょう。
というのも、2年半にわたる両親の介護を経験し、『アンダートーン』はまさに私の実家で撮影したからです。すばらしい脚本を書き上げることができた一方で、感情が麻痺したような状態になってしまいました。劇中のエヴィも、酒を飲み、現実から目を背け、嘘をつくなど、私と同じような状態でした。

しかし映画を仕上げる段階では、チームのメンバーと100%正直に接するようにしました。するとメンバーも正直に意見を言ってくれて、何度も脚本を修正しました。これはチームワークで作り上げた作品です。
その過程を経て、介護生活をしていた2年半の間に抱え込んだ多くのものを手放すことができました。残念ながら、5年前の感情をもう感じることはできません。その代わり、『アンダートーン』という映画を作ることができたのです。そして、この映画の制作が確かに癒しになった部分もありました。
――トゥアソンさんは話題のインディーズ映画を手がけた新人監督として、すでにシリーズ作品へのオファーがあったそうですね。『パラノーマル・アクティビティ』のプロデューサーであるジェイソン・ブラム、ジェームズ・ワンらから声がかかったのは本当ですか?
はい。ファンタジア国際映画祭の後、ジェイソン・ブラムとオンラインミーティングを行いました。いつか一緒に仕事をすることになるでしょう。
※為替レートは2026年3月14日時点の数値で換算しています。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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