シャロン・ストーン、タイカ・ワイティティ、エヴァ・ロンゴリアら米ハリウッド・リポーター主催イベントに登場 業界におけるダイバーシティについてスピーチ
5月31日、米ハリウッド・リポーターの主催で“Raising Our Voices”ランチョンが行われた。今年のイベントに基調演説者として出席したタイカ・ワイティティは、マイクの前に立つと「脚本家組合のストライキが行われている中で、下手なことは書いていない」と冗談を飛ばし、まずChatGPTの話題に入り「今やAIが8秒で問題を解決してくれるのに、まだ多くの人がその力を拒否している」とスピーチした。
“Raising Our Voices”は業界で最も影響力のある人々を招き、ハリウッドのダイバーシティ、インクルージョンといった問題の現状や未来に焦点を当てたイベント(ギャラリーはこちら)。また米ハリウッド・リポーター誌では、業界の変革者50人を選出した“Forces for Change Power List”が同時公開された。
ランチョンのスタートを切ったのは、シャロン・ストーン。群衆に対し「司会として呼ばれたのには、いくつか理由があります。声が大きくて、どんな批判も物ともせず、私自身ダイバーシティ問題を抱えている1人だからです」と語りかけた。
「2001年に脳卒中を起こし、生存確率は1%でした。脳出血は9日間続きました。7年かけて回復し、それから仕事は来ませんでした。契約は変更され、働けるのは最大で14日間。何か異変が起きたら、もう必要とされなくなるので最初は誰にも言いたくなかった。そして異変は私の身に降りかかり、20年間はじき出されてきました。もう仕事が来ることはありません。人生のある時点では、大物映画スターだったんですよ」
そして、同イベントのテーマに触れ「ダイバーシティは1つに集約されるものではありません。それは傷で、肌の色で、自分自身のために戦うことです。他の人と異なるなら、この業界では立場を要求しなければなりません。私たちは、声を上げるためここにいます。存在を可視化し、声を聞いてもらえるように。自分は耳を傾けてもらえなかったからこそ、あなたの声が届くよう私は動きます」と続けた。
『Flamin’ Hot(原題)』で監督デビューを果たすエヴァ・ロンゴリアは、同作に出演するジェシー・ガルシアとアニー・ゴンサレスから今年の“トレイルブレイザー アワード”を受け取った。
エイヴァ・デュヴァーネイ、パティ・ジェンキンスら歴代の“トレイルブレイザー”(=開拓者)たちを称え、以下のように強調した。「時々、“トレイルブレイザー”という言葉が嫌になります。なぜ私たちは他の多くの人々に開かれた道を歩めないのか、理解できないからです。私は、誰もが開かれた道に値すると思っています。どうして道は全員に切り開かれていないのでしょうか?」
それから「個人的には、切り開かれた道はこの業界の姉妹たちの成功の標石が敷き詰められたものであってほしい。次の女性たちがこの舗装された道を歩むだけでいいようにね。ここにいる権力をもった方々、どうか戦いにばかり目を向けず、目的に集中できるスペースを与えてください」と訴えた。
『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』にシリーズ初となる有色人種の女性ドワーフ役で出演したソフィア・ノムヴェテは、パネルディスカッション“The State of Inclusion in Storytelling”に出席し、直面した逆風について明らかにした。
「情報が解禁されたとき、私は最も攻撃されたキャストでした。“太りすぎだし、黒すぎる。どうしてここにいるの?”そして“素晴らしい俳優だとは思うけど、これに参加すべきではない。Amazonに辞職願を出してくれたら、感謝します”といった声もありました。残念だけど私は残ります。このドラマにおける私の存在は、祝福だけでなく、現実への反抗でもあるのです。スクリーンやファンタジーの空間に私たちの居場所はない、というのは真実ではありません」
『プレデター:ザ・プレイ』のアンバー・ミッドサンダーは、ネイティブ・アメリカンのキャラクターを演じたことについて「私たちの民族にとっても、スタジオにとっても大きな瞬間だったと思います。現在もなお『プレイ』はHuluで最も視聴された作品になっています。重要人物だという自覚はなかったのですが、その知らせを受け取り、“オーケー。これは重要なことだ”と感じました」
その後、ロンゴリアとともに今年の“トレイルブレイザー アワード”に表彰されたニーシー・ナッシュ=ベッツが、妻のジェシカ・ベッツから紹介され登壇した。
ナッシュ=ベッツはスピーチで「他の人が同じ道を辿る価値のあることをしてきたと自負しています。例えば、ノーを突き付けられたときは、また他のやり方でお願いしてみるとか。最も重要なのは、自分が実現したいと望む人生を声に出すことです」と語った。そして感極まりながら「受け入れられ、愛され、誰を愛するかで判断を下されないことに本当に感謝しています。『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』や『ザ・ルーキー』での仕事は、私が頭を落ち着ける場所とは関係ありません。似た状況に置かれている人々のために扉を開くことがすべてなのです」と続け、イベントに同席したキンタ・ブランソンに感謝を捧げた。
最後に、プロデューサーで活動家のバード・ランニングウォーター氏が友人のワイティティを紹介した。AIにまつわるジョークを飛ばしたのち、ワイティティは以下のように述べた。
「“ダイバーシティ”という言葉は間違っている。スクリーンの中の多様性は、正しいものではない気がします。今起きているのは“作品にあらゆる人種やバックグラウンドの人々を含まなければならない”といった感じで、どうも私たちは勘違いしているのです。それは現実ではありません。それに本物ではない」そして、自身は様々な人種の人々で構成された友達グループで育ってこなかったとし、「ドラマで形だけ登場するたった1人のポリネシア人キャラクターなんて観たくない。私が観たいのは、白人のショーランナーに指図を受けることなく、完全にポリネシア人が主導権を握った物語です。自分たちのやり方で、自分たちの経験から物語を作らせて下さい」
さらに「白人でない人をスクリーンに見つけたら、満足です。『BEEF/ビーフ』や『アトランタ』を観ると、登場人物に自分を重ねるんです。みんなマイノリティーとして同様の経験をしてきた人々ですからね。植民地支配や長い間権力を握ってきた人の物語でない限り、私にはそれで十分です」と続けた。
スピーチの最後、ワイティティはマイノリティーの人々にダイバーシティ問題について答えを要求することをやめるよう訴えた。「何をすべきか、どうやって物事を修復するか、私たちに聞くのはやめてください。ダイバーシティ、インクルーシブ関係の会話にうんざりしています。2~4年で変化は起きない。長い旅路なのです。みんな一緒につまづき、転ぶべきです。きっと辿り着くでしょうが、それで修復されたとは思わないでください」
イベントが終盤に差し掛かるころ、再びストーンが壇上に登場。観客の女性に向かって「私は女性が書いたキャラクターを演じたことがありません。なので、これまで酔っ払いや殺人者をたくさん演じてきました。女性たち、脚本家組合のメンバーでなければ、何か書いてもらえませんか?」と語りかけ、笑いと喝采を浴びた。
※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。