熊切和嘉監督「658㎞、陽子の旅」、上海国際映画祭で作品、脚本、女優賞の3冠

第25回上海国際映画祭の長編コンペティション部門で、熊切和嘉監督の「658㎞、陽子の旅」が最優秀作品賞、最優秀脚本賞(室井孝介、浪子想)、最優秀女優賞(菊地凛子)の3冠に輝いた。

©2022「658km、陽子の旅」製作委員会

同部門で日本映画の作品賞は、2005年「村の写真集」(監督三原光尋)以来18年ぶり。熊切監督は、2001年「空の穴」でヒロインに抜擢した菊地との22年ぶりのタッグでの戴冠に「このような素晴らしい賞をいただきまして、大変光栄に思います。菊地さんといつかまた仕事をしたいと20年間思っていて、それがかなったので撮影中から夢の中にいるようで、それがまだ続いているような気持ちです」と感激の面持ちで話した。

脚本の「浪子想」は妻の智子さんとの共同ペンネームで「もちろん室井さんの脚本が素晴らしかったのですが、そこからさらに妻の力で主人公の女性を深く掘り下げて描けたのかなと思っています。妻にこの場を借りて感謝をしたい」と笑顔。室井も、「本作には私の実体験が入っています。私は映画祭の経験というのがないものですから、このような華やかな場 は夢のような場所です。この場にお呼びいただき大変光栄ですし、賞をいただけると思っていなかったので、本当にうれしいです」と相好を崩した。

菊地は、2016年「団地」の藤山直美以来の女優賞に「まさか自分が獲ると思っていなかったので、油断して気を抜いていたら名前を呼ばれたので驚きとその事実を受け入れるのに時間がかかりました」と照れ笑い。「バベル」でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるなど、国際経験も豊富だが「役者をやっていて、心から良かったと思います。ここからの役者人生、また身が引き締まる思いです。 20年前に熊切監督に拾っていただいたことも、こうしてまた新しい作品で監督に感謝できる環境に来られたことは、何よりの宝物です。こ の作品を愛していますし、多くの方にこの作品が届くことが幸せです」と喜びをかみしめた。

©2022「658km、陽子の旅」製作委員会

夫の染谷将太は、チェン・カイコー監督の「空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎」(2017)に主演。菊地も初めて参加した国際映画祭が上海ということもあり、中国映画への興味を問われると「ぜひ。子供の頃から中国の映画を見て育ってきましたし、本当に出演してみたいんですけど、中国語の挨拶すら難しくて。今から勉強します」と意欲を語った。

「658㎞、陽子の旅」は、引きこもりがちで人との交流を避けていた陽子が、疎遠だった父親の死を知らされヒッチハイクで故郷の青森へ帰るまでを描くロードムービー。日本では、7月28日に公開される。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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