濱口竜介監督「悪は存在しない」、ヴェネチア映画祭で審査員大賞「自分たちにとって一番いい賞」

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第80回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で9日、濱口竜介監督の「悪は存在しない」が金獅子賞(最高賞)に次ぐ銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した。

濱口監督は、「ドライブ・マイ・カー」でカンヌ映画祭の脚本賞とアカデミー賞国際長編映画賞、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭の審査員グランプリを受賞。世界3大映画祭とアカデミー賞を全て受賞したのは、日本人では黒澤明監督以来の快挙となった。

授賞式でタイトルを呼ばれた濱口監督は、濱口監督は主演の大美賀均とともに登壇。「このような素晴らしい賞を頂けるとは、企画が始まった時は思いもよりませんでした。音楽の担当でもありこの企画の発案者でもある石橋英子さんに感謝をしたいと思います。彼女の音楽が、私を今まで体験したことがないところへ導いてくれました」と喜びをかみしめた。

「ドライブ・マイ・カー」の音楽を手掛けた石橋に、ライブパフォーマンス用の映像を依頼されたことがきっかけで企画がスタート。授賞式後の会見でも、「ここまでたどり着けたことは素敵だと思いますし、特に石橋さんの力はとても大きいと思います。そして、キャストスタッフの皆さんの力があったおかげで、こういう結果に結実する映画ができました」と感謝した。

客席にいた撮影の北川喜雄氏らと歓喜の瞬間を共有し、「チームのメンバーが光って見えたというか、このチームでやってこられたことが本当に良かったと思い、胸がいっぱいになった」と感激の面持ち。企画段階から参加し、シナリオハンティングにも参加した大美賀は「凄く小さなチームから始まり、想像よりはるかに凄いところまで連れてきていただいた」と声を弾ませた。

「偶然と想像」のベルリンに続く“準優勝”のため、「金獅子賞を獲りたくなかったか」という質問も。濱口監督は、苦笑しつつも「本当に少しもないです。そもそもコンペに選ばれるとも思ってなかったですし、こうやって賞を頂くことも思ってもみなかったので、自分たちにとっては一番いいものを頂いたという感じです」と胸を張った。

「悪は存在しない」は、自然が豊かな郊外の町でグランピング施設の建設計画が持ち上がったことで地元の人々の暮らしに波紋が広がっていく物語。日本では24年の公開を予定している。

なお、金獅子賞はヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」が受賞。また、オリゾンティ部門に選出されていた塚本晋也監督の「ほかげ」は、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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