約100年前の傑作『雄呂血』東京国際映画祭で上映 田村亮、主演の父を語る
第36回東京国際映画祭で31日、日本映画史に残る無声映画『雄呂血<4Kデジタル修復版>』の坂本頼光による活弁上映が行われた。その後に行われたトークセッションには立川談笑(落語家)と田村亮(俳優)も参加。楽しい作品トークで現場を盛り上げた。
『雄呂血』は、1925年(大正14年)に公開された、二川文太郎監督による無声映画。日本に「剣戟ブーム」を起こしたともいわれ、ラストの大立ち回りは日本映画屈指の名シーンと名高い。今回は現存する日本最古のオリジナルネガを最大限に活かした修復バージョンの上映となる。
上映は活弁の迫力も重なり、観客も大満足な様子。トークセッションでは、まず主演・阪東妻三郎の息子である田村が「最初観た時は、昔の若いスタッフがエネルギーをむき出しにして色々な撮り方をしていると感じました。それを現代のスタッフがハイテクを駆使して作って4Kにしてくれた」と編集スタッフを労る。
活弁を務めた坂本も「散逸していたフィルムを色々なところから寄せ集めて足したりしてデジタル化しています。今の若い人の力も加わっている」とした。
また坂本は「『雄呂血』は既に何度かやらせていただいていますが、本作は落語でいうところの『文七元結』や『芝浜』みたいな大ネタなんですよ。演じる度に未熟さを感じます。光栄ですけれども難しい」と率直な感想を聞かせる。芸の道は険しい。
そして立川が「阪東妻三郎に似ている」と冗談交じりで話すと、「時々扮装などすると言われる」と返す田村。さらに「末っ子だったから、よく遊んでもらいました。お正月や豆まき、鯉のぼり、夏休みなどは率先して『友達呼んでこい』と言ってくれた」と回想。ご近所付き合いも豪快な家だったようだ。さらに「母からも父からも叱られた経験がない」という。
一番上の兄・高廣氏は18歳違い。それにも『「父親代わりだった」と本人は言っていましたが、全然そんなことはないですよ。兄貴は兄貴で自分のことで精一杯じゃないかな」と言及。下の兄に当たる田村正和の名も挙がり、家族話に花が咲く。
最後にこの「4Kデジタル修復版」を若い人や世界の人にどう見てもらいたいかという質問を受け、まず坂本が『日本映画』の父と言われた牧野省三は『1スジ(脚本)、2ヌケ(画面)、3動作』と言いました。今回『雄呂血』はもともと芝居は素晴らしいから、4K修復によって3要素も整った。たくさんの人に観ていただきたいです」とコメント。
続いて田村が「立ち回りといえば派手なイメージですが、本作の最後ほど“虚しい”ものはない。そういうところをぜひ観てほしい」と語って、トークセッションを締めた。