CAA(クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー)のエージェントの投稿が大炎上: ハリウッドは前進できるのか?

マハ・ダフィール 写真: ©KATE GREEN/GETTY IMAGES
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昨年11月、CAA(クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー)は反ユダヤ主義に関する対話集会を開催した。同プログラムを紹介したエージェントのマハ・ダフィールは、「反ユダヤ主義と闘い、アライシップを促進することに焦点を当てている」と語った。またCAAのリチャード・ラヴェット共同会長も「私たちは言葉の重要性を改めて学ぶことでしょう。そして大きなプラットフォームを持つ人間が、それを責任を持って使用しないことによって引き起こされる損害についてもね」と述べた。

それから12か月後、2万7000人のフォロワーを抱えるダフィールは、インスタグラムの投稿で大炎上した。イスラエル・ハマス戦闘に関するコメントを受けて、アーロン・ソーキンはダフィールを解雇。「スパイグラス・メディア」のゲーリー・バーバー会長兼CEOら重役陣はCAA幹部に電話をかけ、懸念を表明。そしてスティーヴン・スピルバーグの関係者は、ダフィールをエージェントとして表記していたIMDbの情報を削除させた。

イスラエル攻撃から1週間以上経った10月18日、ダフィールは「フリー・パレスチナ」というアカウントから、“あなたは現在、誰が大量虐殺を支持しているかを学んでいる”という文章をリポスト。そしてダフィールは、「大量虐殺を目撃すること以上に心が痛むことは何でしょう?大量虐殺の事実が否定されるのを目撃することです」とキャプションをつけた写真を投稿した。

ダフィールの友人・マドンナのマネージャーで、イスラエル系アメリカ人のガイ・オセアリーは最初の投稿を見て彼女に電話したという。「あの投稿は、君のユダヤ人の友人にとって非常に刺激的なものになるかもしれない、と伝えました。彼女はそれが人々の引き金になるとは知らなかった」とオセアリーは語る。

すぐに投稿を削除し、ダフィールは謝罪文を出した。「リポストで、傷つけるような言葉を使ってしまいました。皆さん同様、私もショックで動揺しています。人道と平和の味方だという自負はあります。影響を指摘し、そして学ばせてくれたユダヤ人の友人・同僚に凄く感謝しています。苦痛を与えてしまったことをお詫びします」

ダフィールは謝罪の電話をかけ始めたが、数日のうちに映画部門の共同責任者から降り、内部役員を当面の間辞任することとなった。一方で、エージェンシー内部では未だに緊張が続いている。

ダフィールを知っている人で、彼女が反ユダヤ主義者だと思うという人はいなかった。その一方で、投稿は“社会正義の戦士”としての彼女のイメージと矛盾していると考える人もいた。とある同僚は言う。「彼女はこのような問題に関して、常に自分自身を前面に押し出してきた。あの投稿は一致しないね」

情報筋によると、ダフィールはエージェンシーで大型の新規契約を結ぶ寸前だったという。現在、条件が変わるかどうかは不明だ。

CAAのトップ陣は、ダフィールのキャリアを救おうと「名誉毀損防止同盟」(ADL)や「アメリカユダヤ人委員会」(AJC)の両方に働きかけている。ADLはダフィールと話し合いを続けていることを認め、AJCは指導員を派遣した。

しかし、ハリウッドの一部の人々は、リビア移民の親を持つダフィールが言葉の影響に気づかなかったとは考えていない。一部の業界関係者の間では、ダフィールが1996年にUCLAの『デイリー・ブルーイン』紙に送った手紙が出回っている。

この手紙は、反ユダヤ主義の決定的な証拠とは言い難い。ダフィールは、レバノン南部でのイスラエルによる攻撃に抗議する集会についての「ブルーイン」紙の記述に苦言を呈した。“あらゆる肌の色、人種、宗教の人々が参加していた”にもかかわらず、同紙がその集会をムスリムのイベントと決めつけていることに異議を唱えた。さらに、記事が “レバノンの人々を襲撃した残忍なイスラエル軍”について触れていないことにも言及した。

10代の頃から中東の紛争について率直な発言をしていたダフィール。元同僚は以下のように語った。「特定の思考プロセスが長く続いていることを示している。90年代にUCLAに通い、手紙を書くほどはっきりと意見を言っていた。その後エージェントになり、CAA役員になり、そして今ユダヤ人の友人が君を学ばせていると言うのか?」

あるCAAのクライアントは言う。「多くのユダヤ人アイコンの代理人を務めているエージェントが、あのような投稿をするなんて衝撃でした。(無知を)言い訳にすることに、大勢が呆れていました」

二極化している問題だからか、ダフィールを賞賛したり非難したりする人はほとんどいない。エヴァ・デュヴァーネイは「私の優秀なエージェント、マハ・ダフィール、真の宝石」と綴り、笑顔のダフィールの写真を投稿。J・J・エイブラムスはダフィールを支持する手紙をエージェンシー幹部に書いたが、公表はしていない。一方、UTAのシニア・テレビ・エージェント、ダン・アーライは次のように投稿している。「どうやら、この街で解雇される“ボーダー”はヘイトスピーチを投稿することではないらしい。では、一体何なんだ?」

CAA内部では、まだ波風が立っている。ダフィールは、クライアントでレバノンの血を引くメキシコ人の父を持つサルマ・ハエックと非常に親しいと言われているが、ハエックもコメントを控えている。

ある元同僚によると、ダフィールを非難する人たちの中には、単に彼女の成功を恨んでいるだけの人もいるという。「ロケット船の速さで成長してきた人だから、彼女の不幸を喜ぶ声は少なからずある」「表面上は非常にタフな人です。私はいつも彼女に感心していました。得難い成功を自分で掴んだからね」別の元関係者は 「強硬派の人に流れが向くと、誰もがその人を陥れようとする」と述べた。

ダフィールの騒動は、“エージェントがニュース記事になってはならない”というルー・ワッサーマンとCAAの共同設立者マイク・オヴィッツが尊重する信条を軽んじたことも一因だ。支持活動やクライアントとの関係を通じてパブリックな立場にいるダフィールは、トム・クルーズやマドンナといったクライアントとの写真を投稿。マドンナ自身も過去に、インスタグラムの投稿でダフィールを“親愛なる妹”と呼んでいた。

一部の中傷者は、ダフィールは自分自身をタレントとして見るようになったと言う。あるCAAの関係者は、カンヌの化粧室で身だしなみを整えるダフィールのインスタグラム投稿について“人々が呆れる転機となった”と語る。ある元同僚は、“インスタのフォロワーが2万7000人もいるエージェントを知っていますか?”と尋ねる。

また、なぜダフィールは謝罪と個人指導を許されたのかという別の問題も浮上している。2021年、CAAは人気エージェントのジェイ・ベイカーがマネージャーのジュワール・キーツ・ロスを立腹させ突然解雇された。ロスは、ベイカーに今後のプロジェクトで候補に挙がっている俳優を見るために試写会の手配を依頼。ベイカーはその依頼で、「『ポケットいっぱいの涙』のコカイン中毒者のシーンを思い出した」と答え、同作のYouTube動画のリンクを送った。

その後のEメールでロスは、最初は笑っていたものの、やはり考え直したと綴った。「私はアメリカの黒人だ。アメリカの黒人は、頼みごとをするのはコカインをねだるようなものだと白人が考えているとは思いたくない」ベイカーは謝罪したが、20年務めたエージェンシーを解雇されることとなった。

あるプロデューサーは「人々は更生の機会を与えられるべきだと思うが、ビジネスでは通用しない」と語っている。

ある元同僚はベイカーとダフィールは元々親しい友人だと明かし、「彼はすぐに有罪判決を受けて、さようならだった」と付け加えた。さらに別の人は、「彼は悪い冗談を言い、不適切だったのは確かだ。それでクビになっていいのか?もっと悪い発言をしたまた別の大人は、委員会から降格させられただけ」と伝えた。

この騒動が最終的にどうなるのか、気になる人もいるだろう。ダフィールは以前のポジションに復帰するのだろうか?そうでない場合、彼女は降格を受け入れるのだろうか?競争者は語る。「本当に処分が下されるのかどうか、興味深い。今、彼女が街を歩けば人々に好奇の目で見られるだろう。言葉には結果が伴う」

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

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