“批評家好み”の映画はオスカーに有利?過去には『ドライブ・マイ・カー』も受賞

(左から)D・J・ランドルフ、F・ロゴフスキ、L・グラッドストーン、S・ヒュラー、R・マクアダムス 写真: KILLERS: MELINDA SUE GORDON/APPLE TV+. ANATOMY: COURTESY OF NEON. HOLDOVERS: SEACIA PAVAO/FOCUS FEATURES. MARGARET: LIONSGATE/COURTESY EVERETT COLLECTION. PASSAGES: COURTESY OF MUBI.

2021年末、濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』は全米の批評家からこぞって年間最優秀作品に選出された。同作はその後、アカデミー賞で作品賞を含む4部門にノミネートされ、国際長編映画賞に輝いた。

しばしば、オスカーは大衆ウケしないアート映画のためのものだと揶揄されるが、実際は潤沢な予算がかけられたスタジオ作品がノミネートされることが多い。それゆえ、『ドライブ・マイ・カー』の成功は、より一層例外的だったのだ。

批評家選出=オスカー有力?

批評家たちはオスカーへの投票権を有していない一方で、作品や俳優が受賞する可能性に影響を与えている。

昨年末、LA映画批評家協会は『The Zone of Interest』、NY映画批評家協会は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を年間最優秀作品に選出。両作品とも、今年のオスカー作品賞有力候補だ。

さらに、NYの批評家たちは「キラーズ~」のリリー・グラッドストーンを主演女優賞、『The Holdovers』のダヴァイン・ジョイ・ランドルフを助演女優賞に選んだ。

2人の“ダークホース”

中でも、最も意外だったのは、ドイツ人俳優のフランツ・ロゴフスキ(『パッセージ』)が主演男優賞に輝いたことだ。同作はMubiでの配信という公開形式を取り、キャンペーン活動においては、ロゴフスキは他の候補者に比べはるかに圧倒されていた。

一方、LAの批評家たちは『落下の解剖学』と『The Zone of Interest』の2作に出演したザンドラ・ヒュラーを最優秀主演賞に選出した。

また驚くべきことに、最優秀助演賞にはこれまで賞レースに名前が挙がっていなかったレイチェル・マクアダムス(『神さま聞いてる? これが私の生きる道?!』)が選ばれたのだ。

『ドライブ・マイ・カー』JANUS FILMS / COURTESY EVERETT COLLECTION

L・グラッドストーンの受賞は?

ロゴフスキとマクアダムスが、オスカー入りする可能性は低いかもしれない。しかし、グラッドストーン、ヒュラー、そしてランドルフの3人が批評家からの選出で得られるものは非常に大きいはずだ。

グラッドストーンは助演部門であれば簡単に受賞できただろうが、同俳優の戦略チームは主演女優賞の方向でキャンペーンを行っている。この動きに対し一部の専門家は、同賞の受賞は難しいと推測している。

S・ヒュラーの候補入りは確実か

LAの批評家に選出されたヒュラーは、アメリカの観客の間でも知名度が向上した。また、投票者集団も国際化が進んでおり、ヒュラーがノミネートを逃すことはまずないはずだ。

近年は、アントニオ・バンデラスペネロペ・クルスらヨーロッパ人俳優も批評家賞を獲得したのち、オスカーに候補入りしている。

助演女優賞の“本命”

ヒュラー同様、ランドルフも非常に勢いがある。

これまで、映画『ザ・ロストシティ』やドラマ『マーダーズ・イン・ビルディング』といったコメディ作品に出演してきたランドルフ。悲しみに暮れる母親を演じた『The Holdovers』では、コミカルな内容に深みと温かさを吹き込んでいる。

LA・NYに加え、ボストン、シカゴ、ダラスなど各地の批評家からも称賛されたランドルフは、助演女優賞の本命として勢いを維持していくだろう。

※初出は米『ハリウッド・リポーター』(1月4日号)。本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

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