『哀れなるものたち』撮影監督が語る独特な世界観の裏側 映画『ドラキュラ』から着想
ヨルゴス・ランティモス監督の新作『哀れなるものたち』は、ヴィクトリア朝時代を舞台に、型破りな科学者(ウィレム・デフォー)の手によって生き返った主人公ベラ(エマ・ストーン)が自由を求めて旅に出る姿を描いている。
その一風変わった物語をレンズ越しに支えたのは、撮影監督のロビー・ライアン。アカデミー賞ノミネート歴を有するライアンは、映画『女王陛下のお気に入り』でもランティモスとタッグを組んだ。
映画『ドラキュラ』から着想
ライアンによると、本作の撮影方法は、フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ドラキュラ』(1992)から着想を得たという。
「本作は、あらゆる面で人造的です。『ドラキュラ』は加工背景といった初期のテクニックに加え、クレイジーな照明効果を多用していて、狂気を本当に楽しんでいるようでした。私たちは、いかにそれが刺激的であったかということに夢中になりました」
『哀れなるものたち』は、全編フィルムで撮影を行った。序盤のシーンは白黒で、ライアン曰く「ベラが旅に出たときに、彼女の世界が豊かに色づくようにしたかった」という。また、「本作でも広角レンズを用いましたが、監督は『女王陛下~』のときよりもズーム撮影を増やしたがっていました」と明かした。
撮影地はハンガリー
本作はハンガリーのブダペストとその周辺で撮影され、大半の撮影は同国にある2つのスタジオで行われた。ライアンによると、様々な街に分散されたセットでの撮影は困難を極めたという。
「『女王陛下~』のときは、照明がありませんでした。しかし、本作は600個もの照明があるセットでの撮影となりました。なので、これまでの撮影現場で経験したことのなかった計画が必要だったのです」
監督との信頼関係
監督との仕事は、「面白い」と語るライアン。2人は毎日、オフィスの中で映画について語り合っていたそうだ。「ヨルゴスは撮影についても、豊富な知識があります。私はいつも、校長室にやってきた学生のような気分になるのです」
「ヨルゴスはつねに、正しいと思ったことを実行する自由を与えてくれます。もしそれが間違っている場合は、彼の方から教えてくれます。本当に健全な関係性ですよね。一緒に楽しい時間を過ごせるし、2人とも映画愛が強いので共通点が沢山あります。ヨルゴスとの仕事は、非常に不思議な過程をたどります」
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌