第37回東京国際映画祭:『夜明けのすべて』三宅唱監督&『本日公休』フー・ティエンユー監督が「黒澤明賞」を受賞

第37回東京国際映画祭で三宅唱監督(写真)&フー・ティエンユー監督が「黒澤明賞」を受賞
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10月28日(月)~11月6日(水)に開催される第37回東京国際映画祭(TIFF)の「黒澤明賞」の今年の受賞者に、映画『夜明けのすべて』の三宅唱監督と台湾のフー・ティエンユー監督が決定。また、昨年に新設されたエシカル・フィルム賞の審査委員長に齊藤工が就任した。

■「黒澤明賞」とは?

日本が世界に誇る故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞。2022年に14年ぶりに復活し、昨年はグー・シャオガン監督とモーリー・スリヤ監督が受賞。今年は、山田洋次監督、奈良橋陽子氏、川本三郎氏、TIFFプログラミングディレクター・市山尚三氏の4名の選考委員による選考の結果、三宅監督とフー・ティエンユー監督の受賞が決定した。

第37回東京国際映画祭で三宅唱監督(写真)&フー・ティエンユー監督が「黒澤明賞」を受賞

三宅唱監督は、一橋大学在学中に映画美学校フィクションコース初等科を修了し、卒業後すぐに長編映画を制作開始。2012年には、『Playback』がロカルノ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、第27回高崎映画祭で新進監督グランプリを受賞した。2017年に公開した『きみの鳥はうたえる』(第31回東京国際映画祭Japan Now部門出品)が翌年の第92回キネマ旬報ベスト・テンで第3位に選ばれるなど成功をおさめたのち、2022年の『ケイコ 目を澄ませて』(第35回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now 部門出品)は国内で多くの映画賞を受賞。さらに、今年公開の『夜明けのすべて』は第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された。

選考委員からは、国際的に高い評価を受けた『ケイコ 目を澄ませて』、『夜明けのすべて』において、「“人をみる力”“小さな世界を広げていく力”に大変長けおり、人間を見つめる眼差しが、エンディングのありかた、カメラワークの距離の置き方にも表れている。伝統的な技法を取り入れた技術力も高く、これから大変期待をおける監督である」と評価され、本年度の受賞に至った。

第37回東京国際映画祭で三宅唱監督&フー・ティエンユー監督(写真)が「黒澤明賞」を受賞

フー・ティエンユー監督は、台北の国立政治大学で日本文学を学び、ニューヨーク大学で修士号を取得。小説家としてキャリアをスタートし、いくつかの権威ある賞を受賞したあと、映画制作へと転向。ウー・ニェンチェンの指導の下、映画の脚本を書き始め、2009 年には映画 ”Somewhere I Have Never Travelled” で長編監督デビュー。2016年の『マイ・エッグ・ボーイ』でも監督を務め、2023年には3作目となる『本日公休』を発表。MV 監督としても活躍するなど多彩な才能をもつ俊英だ。

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選考委員は、フー・ティエンユー氏を80年代の台湾ニューシネマの伝統を現代に引き継ぐ監督と評し、今年公開の『本日公休』における庶民の生活を暖かい目線で描いた手法を高く評価した。

黒澤明賞の授賞式は11月5日(火)、帝国ホテルにおいて開催予定。

■エシカル・フィルム賞の審査委員長に齊藤工

エシカル・フィルム賞審査委員長の齊藤工

エシカル・フィルム賞は、映画を通して環境、貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を広げることを目的として、昨年、住友商事の協力によって新設。東京国際映画祭にエントリーされたすべての新作の中から「人や社会・環境を思いやる考え方・行動」という「エシカル」の理念に合致する優れた3作品をノミネートした後、審査委員会で1作品を選出する。昨年の受賞作品『20000種のハチ』は、本年1⽉に『ミツバチと私』という邦題で劇場公開され話題となった。

なお、本年度のノミネート作品は、9月25日にラインナップ発表記者会見の中で発表される。本年度の審査委員長には、俳優・映画監督で、撮影現場に託児所を設置するプロジェクトなどエシカルな活動を実践している齊藤工が就任。また、東京国際映画祭の学生応援団から選抜された3名が審査委員を務める。

受賞作品の発表ならびに、授賞式および審査委員長の齊藤が登壇するトークセッションは11月5日(火)に開催予定だ。

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■映画教育国際シンポジウムを開催へ

昨年、ユース部門で中学生向けに映画制作のワークショップを行っている「TIFFティーンズ映画教室」の延長線上で開催された映画教育国際シンポジウムが、今年も開催されることが決定。今年は「TIFF映画教育国際シンポジウム2024《世界のこどもたちが映画を待っている》~社会課題と向き合う映画教育~」と題して、パレスチナ、チリ、スペインからゲストを迎え、戦争、貧困、難民などの社会問題を抱えた中でどんな映画教育がなされ、それがどう社会に貢献しているのか、各国での事例を伺い、映画教育の可能性について議論を深める。

■三宅唱監督コメント:

「これまで一緒に仕事をしたすべてのスタッフ、俳優に敬意を表します。誰一人欠けても同じ映画はできませんでした。かつての撮影所の時代と異なり、私たちは撮影毎に非正規雇用の形でその都度集まってーメンバーも多少入れ替わりながらー作っていますが、時間をかけて、少しずつチームとしての映画づくりができているように感じます。この度の受賞は、今後もチームとしての映画づくりをより豊かなものにせよ、ということだと受け止めたいと思います。選考委員の皆様ならびに東京国際映画祭に感謝いたします。ありがとうございます」

■フー・ティエンユー監督コメント:

「このような栄誉を与えてくださった第37回東京国際映画祭に心より感謝申し上げます。
私は、尊敬する黒澤明監督や審査委員の山田洋次監督の作品から、映画には人間の本質を描き出す力があることを学んできました。そして、映画は言葉や時間を超えて、人々に理解や癒しを感じさせることができると信じています。
黒澤明賞は私にとってひとつの確証のようなものであり、この名前とともに素晴らしい映画製作の世界に身を置けることは夢のように光栄なことです。東京国際映画祭に心から感謝いたします」

■エシカル・フィルム賞の審査委員長・齊藤工のコメント:

「ありがとうございます。
“エシカル”と言う言葉を調べてみると『法律などの縛りがなくても、みんなが正しい、公平だ、と思っていること』との事でした。そんな現代のエシカルに多少の窮屈さも感じると共に、映画の歴史を振り返ると、まさにこうやって各時代時代で作品を受け取る人達が、形の無い映画的倫理観を形成して未来に繋げて来たのも事実だと思います。映画はエンターテインメント。毎年観客として足繁く通っている TIFF に、今回も肩肘張らず、一観客として映画の未来との出逢いを愉しみにしております」

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