巨匠リドリー・スコット、生涯現役を明言「死ぬまで続ける」―『トップガン』の故トニー・スコット監督への思いも【インタビュー】

リドリー・スコット=9月19日、ウェスト・ハリウッドにて 写真: Josh Telles
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新作『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のリドリー・スコット監督が、米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに登場。

今月87歳を迎える巨匠が、『グラディエーターII』のキャスティング秘話やデンゼル・ワシントンとの仕事、そして50年に及ぶキャリアで制作した作品の中で、最もお気に入りのショットなどについて話した。

―――この仕事をやめたら、どのように感じますか?

『グラディエーター』以来、私は16本の映画を撮ってきたと思います。20年間では、かなり多い本数です。俳優ができる2、3本の映画を撮れるようなスピードがうらやましかったですね。俳優は台本を覚えるだけで済むのですから。

私は脚本を書き、予算を組み、キャストを集め、撮影し、完成させ、納品しなければなりません。俳優は、ただ現場に来て自分の仕事をするだけでいいのです。

―――あなたの考えでは、死ぬまで監督を続けるということですね。

死ぬまで続けます。クリント(・イーストウッド)は94歳ですからね。

―――クエンティン・タランティーノが10本目の映画を最後に引退すると発言したことについて、どう思いますか?

信じられません。

―――私も同意見です。何かが好きで、それに長けていれば、一度やめたとしてもまた巻き返すことがあります。

その通りです。あんな嘘は信じられません。黙って、次の映画を撮れ。クエンティンは弟のために数本の脚本を書いたことがあります。2人は仲良くやっていたようですが、私がクエンティンに会ったことはないかもしれません。

―――『トップガン:マーヴェリック』(オリジナルの『トップガン』は2012年に死去した弟のトニー・スコットが監督)を観たときに、違和感は感じませんでしたか?

いいえ。製作者から監督を依頼されましたが、「弟のあとを追いたくない」と言いました。トニーは、常に現代に興味があった人でした。私の作品の多くは、歴史、ファンタジー、SFなどです。

トニーはファンタジー好きではなく、『エイリアン』や『ブレードランナー』、『レジェンド/光と闇の伝説』のような作品は好まなかったようです。ちなみに、『レジェンド』はほとんどの人が見ていませんが、ティム・カリーの演技は素晴らしかったですよ。

―――80年代はエイドリアン・ライン監督やアラン・パーカー監督をライバル視していたそうですね。現在の競争相手は、誰だと思いますか?

特にいませんね。もう、競争関係にはありません。投資と期待が独立した島々になっていて、誰もはっきりしたことは分かりません。今年公開された作品の中で、どうしてこれほど成功したのかと不思議に思うものもありました。『グラディエーターII』も相当な成功が予想されます。必要なものが、ほぼ全て備わっていると言えるでしょう。

―――スティーヴン・スピルバーグや、ジェームズ・キャメロンといった他の著名監督とは関係がありますか?

特にはありません。キャメロンとは、常に親しくしてもらっていますが。スピルバーグとの付き合いは、彼が『ミュンヘン』を撮った頃まで遡ります。たまに連絡を取り合うのは、マイケル・マンですね。

『グラディエーター』の制作を知ったマイケルは、映画『インサイダー』の初期映像を送ってきて、「ラッセル・クロウという俳優を見てくれ」と言ってきたんです。会議室でラッセルに会うと、彼は自分が太り過ぎだということを延々と話していました。私は「ダイエットできるって信じてるよ」と言ったら、実際に減量できたんですよ。 

―――『エイリアン:コヴェナント』の続編が期待されていますが、『エイリアン:ロムルス』を観ると、次作はその両作品を組み合わせたものになるのではないかと感じます。両作品とも、ラストで船が未知の惑星に向かっていますね。

『コヴェナント』が続編に最適ですね。主人公がカプセルに入っていて、アンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)がエイリアンの卵と2000人の入植者達を抱えているからです。これは完璧な始まりといえます。

―――『グラディエーターII』で、どの俳優の演技が一番あなたを驚かせましたか?

俳優を見抜くのは、私の仕事です。キャスティングディレクターはとても優秀ですが、撮影の準備をしているときはすでに誰かを想定しています。テレビを観ていたら、ドラマ『ノーマル・ピープル』に出ていた若手俳優のポール・メスカルが興味深いと感じたんです。

「ああ、リチャード・ハリスにそっくりだ」と思いました。「彼こそがルシアスだ」と思い、「この作品に出てくれないか?」と声をかけたのです。

―――デンゼル・ワシントンとの仕事はどうでしたか?

そうですね、私たちはすでに『アメリカン・ギャングスター』という作品で一緒に仕事をしています。この作品は、私のお気に入りの1つです。撮影はハーレムの真ん中でしたが、デンゼルが「あなたは本当に自分のやっていることがわかっているの?」と聞いてきたんです。「当然、自分のやっていることはよくわかっているよ」と答えると、「音楽のことも知っているの?」と。「もちろん知っているよ」と言ったら、デンゼルは安心したようでした。

『グラディエーターII』ではスケールの大きさに少し戸惑っていたようですが、それも無理はないですよね。私にとっては、日常茶飯事のことですが。

―――現在『ブレードランナー 2099』や『エイリアン:アース』など、あなたの映画を元にしたドラマが複数制作されています。代表作がスクリーンからテレビへ移動することについて、どう思いますか?

私は長い間、視覚的なペースを創り出してきました。自分がどのようなことを行い、それがどのように影響力を持ったかはよく知っています。「ああ、これも私の作品だ」と思うことがよくあります。最初は煩わしかったですが、今では愉快で健全なことだと感じています。

例えば『エイリアン:アース』は、オリジナルの『エイリアン』を十分に尊重した作品になっています。そうした試みを通じて、これらの作品が生き続けることを願うばかりです。プラットフォームがどうであれ、家で視聴するのを楽しみにしています。これらの作品は永遠に保存され続けるのですから、それは非常に健全なことだと思います。

―――これまでの監督作の中で、最も誇りに思っているショットはありますか?

『ブレードランナー』のロサンゼルスを映した冒頭のショットは、素晴らしいと思っています。あのショットは音と深くリンクしていて、敬愛するヴァンゲリスの音楽と結びついています。ヴァンゲリスとは『1492 コロンブス』でも一緒に仕事をしましたが、こちらも私が非常に誇りに思っている作品です。

今でも『1492 コロンブス』を復活させようと試みています。撮影、演技、音楽全てが素晴らしいので。4時間の映画作品として配信プラットフォームに出せるよう、今も努力しています。

―――過去の作品の中で、リメイクすべきだと感じているものはありますか?

『悪の法則』は、最高の対話劇だったと思います。コーマック・マッカーシーが脚本を書き、彼と(プロデューサーの)ニック・ウェクスラーからオファーを受けました。私は、「すぐにやるよ、今すぐにね」と答えました。キャスティングは2週間で完了し、マイケル・ファスベンダー、ブラッド・ピット、ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアスなど、誰もがこの作品に出たがっていたんです。

酷評されたと聞きますが、私は優れた作品だと思います。ただ、暗すぎたのかもしれませんね。でも、セリフは素晴らしいと思います。

―――最後に、何か伝えたいことはありますか?

弟に会えなくて、寂しいよ。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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