知られざる沖縄戦の歴史『尖閣1945』映画化始動、中山義隆石垣市長が音頭「後世に語り継ぎたい」
1945年の「尖閣列島戦時遭難事件」を題材にした門田隆将氏のノンフィクション「尖閣1945」の映画化プロジェクト発表会見が18日、東京・内幸町の日本プレスセンターで行われた。
同事件は太平洋戦争での沖縄陥落から1週間後、米軍の上陸を恐れた石垣島の人々が2隻の船で台湾への疎開を開始。だが、1隻は米軍機の攻撃で沈没し、もう1隻はエンジンを損傷しながら尖閣諸島の魚釣島にたどり着く。戦後、人々が飢えや病で次々と倒れていく中、8人の決死隊が木造船で石垣島に助けを求め救助された一連の出来事を指す。
原作を読んだ石垣市長の中山義隆氏が「感動した。なんとしても映画化したい」と熱望。門田氏に相談し、沖縄戦を描いた『島守の塔』(2022)などで知られる五十嵐匠監督が賛同。この日から製作費3億円を目標にガバメントクラウドファンディングと企業版ふるさと納税の募集を開始した。
中山氏は、「魚釣島には、今も多くの日本人の遺骨が埋まっている。そのことを石垣でも知らない人が多い。史実に基づく映画として、後世に語り継いでいきたい」と語気を強める。3億円以上集まった場合でも映画に投資し、下回った時には「ふるさと納税の中で尖閣を支援する枠があり、その基金もある程度あるので捻出する」とした。
著書「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」が『Fukushima50』(2020)として映画化されたこともある門田氏は、「地方自治体の長が言ってくれたことに感激した。たかぶる気持ちが抑えられない」と声を弾ませる。さらに「8~10億円あれば、世界に発信できる大作になる。この歴史、奇跡を知らない日本人が多すぎる。広く全国に伝わってほしい」と期待した。
五十嵐監督は石垣島を数度シナハンで訪れ、現在は脚本の準備をしている段階。尖閣諸島は領土問題の渦中にあるため上陸、撮影は不可能だが「石垣市が中心となって映画を作り残すことは歴史的、文化的に意義がある。ヒューマンストーリーとして共感でき、全国規模の映画になる可能性はある。疎開船の機関士らを中心にしたストーリーを熟成中です」と意欲を語った。
戦後80年となる来年秋のクランクイン、彩プロが配給し2026年夏の公開を目指す。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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