【吸血鬼映画10選】血と闇の美学…80年代のカルト的名作、マーベル原作『ブレイド』ほか

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永遠の命を得た伝説的な「吸血鬼」…その存在は時代を超えて様々な解釈を生み、スタイリッシュなアクションものだけでなく、吸血鬼ならではの内面的な苦悩に焦点を当てた作品や、“異質な存在”という設定を生かした社会風刺的な作品まで、実に多様な映画が制作されてきた。
現在もなお、吸血鬼が登場する映画は根強い人気を誇っている。日本でも、昨年に世界各国で封切られ高い評価を獲得した新作『ノスフェラトゥ』が、5月16日(金)より公開予定だ。同作は、1922年のサイレント映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』にインスパイアされた恐ろしくも美しいゴシック・ロマンスホラーとなっており、今年開催の第97回アカデミー賞®では衣装デザイン賞のほか計4部門にノミネートされた。
『ノスフェラトゥ』のキャストには、本格的なホラー映画デビューを果たすリリー=ローズ・デップをはじめ、映画『IT/イット』シリーズのペニーワイズ役で知られるビル・スカルスガルド、エガース監督とは3度目のタッグとなるウィレム・デフォー、そして『フォールガイ』や『クレイヴン・ザ・ハンター』など話題作への出演が続くアーロン・テイラー=ジョンソンが顔を揃えている。
それでは、夜が明けてしまう前に、吸血鬼映画の傑作10本を振り返っていこう。
以下、「吸血鬼映画の傑作10選」(製作年順)
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1.『ノスフェラトゥ』(1979)
■ドイツの巨匠W・ヘルツォークが見つめる、悲哀に満ちた吸血鬼の末路
19世紀のドイツ・ヴィスマール。不動産業者のジョナサン(ブルーノ・ガンツ)は、上司のレンフィールド(ローラン・トポール)の命令で、住居の購入手続きのためにトランシルヴァニアにいるドラキュラ伯爵(クラウス・キンスキー)を訪れる。そしてジョナサンの妻ルーシー(イザベル・アジャーニ)の写真に心を奪われたドラキュラ伯爵は、ジョナサンを城に閉じ込め、自らヴィスマールへと向かう。ジョナサンは命からがら脱出に成功するが、彼はルーシーのことを認識できないほど変わり果てていた―――。
ドラキュラ映画の原点、F・W・ムルナウによる『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)をヴェルナー・ヘルツォーク監督がリメイク。「愛の欠如こそが、最も救い難い痛み」と嘆くドラキュラ伯爵(クラウス・キンスキーによる怪演が光る)は、非常に孤独で脆い存在として描かれている。一方ルーシーはジョナサンが変貌してもなお献身的に愛し続け、果敢に伯爵に立ち向かう。そして訪れる衝撃の幕引きには、筆舌に尽くしがたい虚無感が漂う。
2.『ハンガー』(1983)
■『トップガン』T・スコット監督による異色の長編デビュー作
永遠の絆で結ばれた吸血鬼ミリアム(カトリーヌ・ドヌーヴ)とジョン(デヴィッド・ボウイ)は、十字架のペンダントを武器に人間を襲い、生き血を吸って暮らしていた。しかし突然、ジョンが急速に老い始める。そこでジョンは、老化について研究する医者セーラ(スーザン・サランドン)に救いを求めるが、彼にはもう時間が残されていなかった―――。
不老不死の象徴とも言える吸血鬼という存在を通して、人間の誰もが抱くであろう老化への恐怖を真正面から描いた作品。果たして、永遠の命を持つということは祝福されるべき歓びなのか、それとも呪いなのか?その問いに答えを出すかのような終盤の衝撃的な展開のカタルシスは素晴らしい。不協和音のようなサウンド、そしてチェロやピアノが奏でる極上の音色など、音楽が耽美ながらも心をざわつかせる世界観に絶妙にマッチしている。
3.『ロストボーイ』(1987)
■最愛の兄が吸血鬼に?!80年代のカルト的青春ムービー
両親が離婚し、母親とともにサンタ・カーラの祖父の家へと引っ越してきた兄マイケル(ジェイソン・パトリック)と弟サム(コリー・ハイム)。マイケルはある日、野外ライブで出会ったスター(ジェイミー・ガーツ)に一目ぼれするが、デヴィッド(キーファー・サザーランド)率いる謎のバイカー集団に目を付けられてしまう。そして、マイケルはデヴィッドたちに謎の赤い液体を飲まされたことで、幻聴や幻覚など体の異変に悩まされることになる―――。
突如として“半吸血鬼”となってしまった大好きな兄を救うため奮闘するサムや、風変わりな祖父、そして吸血鬼退治に協力する漫画オタクの兄弟など、個性的かつ魅力的なキャラクターが多数登場。終始コミカルなタッチでテンポ良く展開されていくが、ラストは何とも不穏な後味を残している。夜のビーチをバイクで疾走するシーンなど、ザ・80’s的な演出や音楽が気持ちいい。
4.『ドラキュラ』(1992)
■巨匠コッポラが豪華俳優陣で古典小説を映画化
若き弁護士の青年ジョナサン・ハーカー(キアヌ・リーヴス)は、不動産手続きのためトランシルヴァニアのドラキュラ伯爵(ゲイリー・オールドマン)の元へと向かう。しかし、伯爵の正体は数百年以上にわたり生き続ける吸血鬼だった。愛する婚約者のミナ(ウィノナ・ライダー)に危機が迫り、ジョナサンはヴァン・ヘルシング教授(アンソニー・ホプキンス)らとともにドラキュラ伯爵に立ち向かう。
原作は、ブラム・ストーカーによる1897年の小説『吸血鬼ドラキュラ』。本作でアカデミー賞を受賞した故・石岡瑛子氏が手がけた衣装、様々な姿に自在に変化するドラキュラの特殊メイクなど、圧巻の映像美も見どころだ。吸血鬼=モンスターという単純な解釈ではなく、愛に生き愛に死んだ1人の孤独な男の姿を描いた究極のラブストーリーとも言えるだろう。
5.『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)
■2大スターの夢の競演、ある孤独なヴァンパイアの数奇な人生
現代のとあるアパートの一室。青年ルイ(ブラッド・ピット)は、インタビュアーのダニエル(クリスチャン・スレーター)に自身の生涯を語り始める。時は18世紀。家族を失ったルイはヴァンパイアのレスタト(トム・クルーズ)に突然噛まれ、彼の同類となってしまう。やがてレスタトと共同生活を送るルイは、孤児のクローディア(キルスティン・ダンスト)と出会い、3人は奇妙な疑似家族的な関係を築いていく―――。
人間の心を持ったままヴァンパイアに変貌してしまったルイの蒼い瞳は、つねに悲哀に満ちている。人生を思うがままに謳歌するレスタトとは陰と陽のような関係だが、真っ赤な血によって結ばれた2人はもはや表裏一体。そして、精神的に成長しながらも永遠に少女の肉体に閉じ込められてしまったクローディアを見事に体現した当時12歳のダンストが、2人のトップ俳優に引けを取らない圧倒的な存在感を放っている。
6.『ブレイド』(1999)
■マーベルコミック原作、最強の吸血鬼ハンターを描くアクション大作
人間とヴァンパイアの混血として生まれたブレイド(ウェズリー・スナイプス)は、吸血鬼ハンターとして暗躍している。やがてブレイドは、相棒ウィスラー(クリス・クリストファーソン)や命を救った医者のカレン(ウンブッシュ・ライト)とともに、世界征服を目論むヴァンパイアの青年フロスト(スティーヴン・ドーフ)が率いる一派と対峙することになる。
これまでシリーズ3作品が制作されている『ブレイド』。ナイフや銃などさまざまな武器を操り、ヴァンパイアをスマートに退治していくブレイドのアクションシーンは迫力満点だ。現在は、マハーシャラ・アリ主演でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)版のリメイクも進行中。
◆『ブレイド』シリーズは、U-NEXTで配信中!
7.『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)
■ベストセラー小説を映像化、冬の凍てつく夜に彷徨う2つの孤独な魂
学校でいじめを受ける12歳の少年オスカー(カーレ・ヘーデブラント)はとある夜、マンションの中庭で不思議なエリ(リーナ・レアンデション)と出会う。エリは、父親らしき男性とともにオスカーの隣の部屋に引っ越してきた。孤独な2人は夜になると一緒に過ごし絆を深めていくが、街では謎の死体が次々と発見されていた―――。
原作は、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによるスウェーデンのベストセラー小説『MORSE -モールス-』(2004)。陰鬱で血生臭いシーンも残酷な現実を映し出す鏡として容赦なく描きながら、社会の周縁にいる子どもたちがお互いにありのままの姿を受け入れ、自ら人生を切り拓いていく成長譚となっている。2010年には、クロエ・グレース・モレッツ出演のリメイク版が制作された。
8.『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013)
■名匠J・ジャームッシュが贈る珠玉のヴァンパイア・ロマンス
吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)とイヴ(ティルダ・スウィントン)は、何百年もの時を越えて結ばれている恋人同士。2人は離れて暮らしていたが、ある日イヴがアメリカ・デトロイトで密かに生きるアダムの元を訪れる。再会の喜びもつかの間、イヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が突然姿を現したことで生活に混乱が生じる―――。
内向的なアダムは、自分が気に食わない存在を“ゾンビ”と呼んで蔑む。イヴは、厭世的でありながらもロマンチストである彼を「自分の心に囚われたまま生きるなんて時間の無駄」と諭し、再びアダムが愛してやまない音楽の中へと誘う。数多の時を生き抜き、今日の夜の街を彷徨う2人の瞳には、永遠の愛と儚い命が共存している。彩度の低い落ち着いたトーンの映像を通して、絶望的で空虚に思える人生に差す光を鮮やかに描き切った作品だ。
9.『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』(2014)
■夜の街に突如姿を現す謎の存在…その正体とは
イランで薬物依存症の父親と暮らすアラシュ(アラシュ・マランディ)は、裕福な家庭の運転手として貧しい生活を送っていた。一方、ゴーストタウンと化した街には、夜になると様々な人間の後を影のように追う神出鬼没の謎の少女(シェイラ・ヴァンド)が現れる。やがて、孤独な2人の運命が思わぬ形で交差していく―――。
毎夜、黒のヒジャブをマントのようにまとい、女性を貶める男性の命を容赦なく奪っていく少女の姿はダークヒーローさながら。根深い家父長制が残るイラン社会において、男性たちにとっては得体の知れない少女は脅威であり、女性たちにとっては救世主のような存在だ。セリフが少なく、余白も多い作品ではあるが、全編モノクロで収められた美しいビジュアルセンスで独特の世界観が築き上げられている。
10.『ヒューマニスト・ヴァンパイア・ シーキング・コンセンティング・ スーサイダル・パーソン』(2023)
■ゴシック×キュートなビジュアル&ひねりの効いた成長譚
人を殺して血を奪う行為に嫌悪感を感じている吸血鬼の少女サシャ(サラ・モンプチ)は、家族が狩りで得た血液パックを飲むことで日々を乗り切っている。そんなサシャの姿を見るに見かねた家族は、血液パックの供給を断ち切ることに。やがて、自殺願望を持つポール(フェリックス・アントワーヌ・ベナール)と出会ったことで、2人はお互いの苦悩を共有していく―――。
本作の制作にあたり、ウェス・アンダーソン監督のビジュアルにも影響を受けたと語るアリアーヌ・ルイ・セーズ監督。十代の苦悩とヴァンパイアというジャンルを見事に調和させ、個性的なキャラクターとゴシックな世界観が魅力的な瑞々しくオリジナリティ溢れる1本を完成させた。映画『ファルコン・レイク』(2022)で主人公が思いを寄せる16歳の物憂げな少女を見事に演じたカナダの新星サラ・モンプチが、本作でも唯一無二の存在感を発揮している。
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記事/和田 萌
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