アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』故郷が人生が奪われていく

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』@ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA
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『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』は、イスラエル軍に破壊される故郷を撮影するパレスチナ人青年と、彼を支えるイスラエル人青年の2人の“命懸けの友情”が生んだ奇跡のドキュメンタリー映画。

第74回ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞の2冠を達成。また、第97回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞を受賞した。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』 バーセル・アドラー監督 @ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

パレスチナ人の青年バーセル・アドラーは、イスラエル軍による破壊行為と占領が続いているヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで生まれ育った。

バーセルは幼い頃からカメラを手に取り、故郷の家々が壊されていく様子を撮影し、世界に現状を発信していた。

そんな彼のもとに、活動に協力しようとイスラエル人の青年ユヴァル・アブラーハムがやってくる。抑圧する側と抑圧される側であるイスラエル人とパレスチナ人の青年2人は、同じ想いを持ち互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、友情が芽生えていく。

2023年10月までの4年間にわたり危険を顧みずに撮影された映像から、不条理な占領行為があぶり出されていく。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』 @ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

家族の思い出がつまった家や友情を育んだ小学校が、ただの建物かのように容赦なくブルドーザーで破壊されていく。衝撃的な映像に、占領行為とはこういうものかと言葉を失った。

バーセルはマサーフェル・ヤッタで生まれ、ここが故郷だと感じる唯一の場所だと語る。故郷は人生そのものだ。家々を破壊され住民が追い出され、人生が奪われていく。

抗議をすれば、襲撃され命を奪われる危険がある。それでも住民たちは抵抗し、危険にさらされてしまう映像は、いま起こっている現実なのだ。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』パレスチナ人イスラエル人4人の製作チーム Kevin Winter/Getty Images

3月2日(現地時間)ロサンゼルスで開催されたアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞の授賞式で、パレスチナ人のバーセル・アドラー監督とイスラエル人のユヴァル・アブラハーム監督がスピーチを行った。

バーセルは「私の住むマサーフェル・ヤッタでは、入植者による暴力や破壊、追放の恐怖に直面しています。私たちは世界に対して、パレスチナ人への不正義と民族浄化を止めるための行動を呼びかけたい」とパレスチナ人の強制追放の阻止を世界に訴えた。

またユヴァルは「映画を作ったのは、私たちパレスチナ人とイスラエル人です。2つが一緒になれば、より大きな声になるからです。私は民法のもとで自由に生きていますが、バーセルは軍法のもとで生き、人生を壊され人生を選択することさえできません。ですが政治的な解決方法があります。それはどちらかが優位に立つのではなく、お互いが民族的な権利を持つことです」と誰もが自由に生きる権利、平等に扱われる権利の保障を主張した。

幼い頃から故郷の現状を撮影し、世界に叫び声をあげてきたバーセルの言葉が、2025年アカデミー賞授賞式から世界へと発信された。

しかし『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』は、いまだ米国の配給会社がついてない状態が続いている。日本では2月21日に公開された。

本作を通して、故郷や人生も奪われ自由に人生を生きれない現実を知ったいま、「世界で最も解決が難しい紛争」とよばれる問題に対して、我々は、世界は何ができるのか、どうすべきなのかを深く考えさせられる。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』 @ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

【映画情報】

タイトル:『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』
製作:ノルウェー/パレスチナ合作
監督:バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール
日本語字幕:額賀深雪
字幕監修:高橋和夫
配給:トランスフォーマー

2月21日(金)TOHOシネマズシャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

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