マイケル・B・ジョーダン主演『Sinners(シナーズ)』が大当たりした5つの理由

アメリカではイースターを控えた先週末、ライアン・クーグラー監督作『Sinners(シナーズ)』が封切られた。同作は1932年のミシシッピ州を舞台としており、マイケル・B・ジョーダンが一人二役で演じる主役の双子が第一次世界大戦やマフィアの抗争を生き延びた末に同地でバーを開業しようとしたところ、思いがけない恐怖に直面するというあらすじのホラー映画だ。
『Sinners』が公開されてから初めての週末を迎える中、同作の興行収入予測はまちまちだった。配給会社のワーナー・ブラザーズは手堅く3500万〜4000万ドルと予測した一方、他のメディアは4500万ドル、さらには5000万ドル越えを期待する声もあった。ただ、同作が観客の限定されがちなR指定作であるという事実や、トランプ政権下でいわゆる「多様性」などに対する風当たりが強まる風潮の中で主要キャストの多くが黒人であるという事実から、映画の成績を不安視する声も一部には存在していた。
しかし、蓋を開けてみると『Sinners』はアメリカ国内で4800万ドルの初動興行収入を記録し、ヒット作『マインクラフト/ザ・ムービー』(日本では今月25日公開)を押しのけ、堂々の興収ランキング首位に輝く快挙を成し遂げた。
公開前には同作に9000万ドルという制作費が費やされた事実などを踏まえ、赤字必至という声も囁かれたのが公開後には一転、専門家たちは同作が黒字を収めるどころか続編の制作も期待できると大絶賛している。
なぜ『Sinners』は下馬評を覆す大成功を収めたのだろうか。米『ハリウッドリポーター』は今回、その理由を5項目にわたって分析している。
- 「『シネマスコア(CinemaScore)』の呪い」を打ち破る
『Sinners 』は米国の調査会社『シネマスコア(CinemaScore)』によって、調査対象となった観客たちから上からA評価(上から2番目)を得ているが、ホラー映画でA評価に輝いたのは実に『エイリアン2』(1986、ジェームズ・キャメロン監督作)以来のことなのだそう。
多くの場合、ホラー映画は高くてもせいぜいC評価が一般的であるという「シネマスコアの呪い」と呼ばれる現象を踏まえると、『Sinners』に対する観客の満足度がいかに高いかがわかるだろう。
- クーグラーとジョーダンの名コンビ
アメリカの調査会社、『ポストトラック(PostTrak)は全米各地の映画館で映画の観客を対象に出口調査を行なっている。特にコロナ禍以降、同社の調査で最高評価となる5つ星を獲得するのは難しくなっているようで、配給会社の役員は4つ星をとれれば大満足という状況なのだそう。
そんな中でクーグラーは飛び抜けた存在だ。というのも、『Sinners』は彼が監督・制作に携わった4つ目の5つ星評価作品となるからだ。クーグラーはこれまで監督として『ブラックパンサー』(2018)、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)、プロデューサーとしては『クリード 過去の逆襲』(2023)の4作品で5つ星評価を得ているが、そのすべての作品においてジョーダンとタッグを組んでいる。それを踏まえるとクーグラーとジョーダンはまさに「ハズレなし」の名コンビなのだ。
- 評論家も手放しで大絶賛
クーグラーは今から12年前、黒人男性がサンフランシスコで鉄道警察隊に銃撃され死亡したという実話を題材とする『フルートベール駅で』がきっかけでブレイクを果たした。同作は評論家からも高い評価を受け、クーグラーのキャリアはこれを機に大きな飛躍を遂げた。
そして評論家は今回の『Sinners』も大絶賛している。なんと、米国の映画評論サイト『ロッテントマト(Rottenn Tomatoes)』は同作に98%という高評価を与えたのだ。これはクーグラーにとって『ブラックパンサー』の96%、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)の95%を上回る過去最高記録となる。
その意味で、『Sinners』は観客だけでなく玄人までも唸らせるクーグラーの魅力が遺憾無く発揮された一作なのだといえよう。
- 人種的に多様な観客の心を掴む魅力
クーグラーといえば、兼ねてから自身の映画制作において「多様性」を促進してきたことでも知られている。特に『ブラックパンサー』は主要キャストのほぼ全員が黒人という作品にして、13億4千万ドルもの興行収入を記録する歴史的快挙を成し遂げた。
『Sinners』もそうした例に漏れず、ジャック・オコンネルとヘイリー・スタインフェルドをのぞく主要キャストはほぼ全員が黒人だ。
ポストトラックのデータによれば同作の公開初日、チケットを購入した観客のうちほぼ50%は黒人だったそうで、これはかなり異例のことなのだそう。(ついで白人が27%、ヒスパニックが14%、アジア系が6%、先住民系などが4%)
こうした「多様性」への意識が新たな観客層を掘り起こしていることも、『Sinners』が成功を収めた背景に存在するといえるのかもしれない。
- ワーナー・ブラザーズにとっての救世主に?
近年、興行収入面での苦戦が続いていたワーナー・ブラザーズにとって『マインクラフト/ザ・ムービー』に続く『Sinners』の成功は明るいニュースとなった。実に、同一の配給会社による二つの作品が同じ週に4000万ドル以上の興収を記録するのは、20世紀フォックスから公開された『アバター』と『アルビン2 シマリス3兄弟 vs. 3姉妹』(日本では劇場未公開)がそれぞれ7500万ドルと4900万ドルを記録した2009年以来のことなのだとか。
残念ながらそんな『Sinners』は現時点での日本公開は未定だ。北米でのヒットを受けて日本でも公開されることを願いたい。
※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら
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