早川千絵監督『ルノワール』カンヌで世界初上映「熱気が段違いで胸がいっぱい」
早川千絵監督の『ルノワール』が17日、第78回カンヌ映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映された。
早川監督は、2022年の初長編『PLAN 75』がある部門に出品され、2作連続でのカンヌ。パルム・ドール(最高賞)を競うコンペ部門という晴れ舞台に、主演の鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキー、プロデューサー陣とともにレッドカーペットに登場した。
12歳の鈴木はレッドカーペットを歩く直前、高揚感を抑えきれずに飛び跳ねるなど無邪気に振る舞う。それでも、詰めかけた多くのメディアの呼びかけに満面の笑顔で手を振り、堂々とした対応を見せた。
早川監督のオリジナル脚本で、11歳の少女フキが両親をはじめとした大人たちの世界をのぞきながら、さまざまな感情にふれて成長していく一夏の物語。会場のリュミエール劇場は、約2300席が埋まる熱気に包まれた。
エンドロールに差し掛かった途端、会場からは拍手と歓声が沸き起こり、6分に及ぶスタンディングオベーションに発展。上映後はロビーで観客から称賛を受けサインを求められた早川監督は、「映画祭の一番大きいリュミエールで上映するのは初めてでしたが、場内の熱気が段違いで、胸がいっぱいになりました」と感激の面持ちで語った。
初の海外映画祭となった鈴木は、「俳優を始めてたった2年でカンヌに来られてビックリしています。自分が想像していた以上に観客の皆さんが反応してくれたり、『ユイ』って声を掛けてくれたり、今まで見たことがないくらいの人に見てもらえて、すごくうれしかったです」と笑顔。「経験したことがないことばかりでしたけれど、『あ~、めっちゃくちゃうれしいなあって体の底から感じました」と破顔した。
早川監督については、「優しくて、ほわんとしていて、あたたかい太陽みたいな人」と評した。対する早川監督も、「子供を演出するのは難しいだろうなと覚悟を持って挑んだのですが、唯ちゃんは何も言わなくても演技をしてくれて、監督としては非常に楽でした。どうやったらこんなふうにできるんだろうと思うことばかりで、唯ちゃんさまさまでした」と称えた。
フキの両親役の石田とリリーも、鈴木を絶賛。その上で、石田は「海外の映画祭に参加するのは35年の俳優人生で初めての体験。観客の映画を見てやるぞという意気込み、クレジットひとつひとつに拍手が起こることに驚きました。映画に対する真摯さと温かさを感じました」と感想。リリーも、「スタンディングオベーションは、いつも座持ちがしないなと思っていたんです。でも、唯ちゃんが居ると何分でもできるなって、楽しかったです」と振り返った。
コンペの審査結果が発表されるのは24日。鈴木には史上最年少での最優秀女優賞の期待がかかる。日本では6月20日から全国で公開される。
記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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