『セックス・アンド・ザ・シティ』神回15選|名言・名シーンで振り返る決定版

(左から)シンシア・ニクソン、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、サラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
(左から)シンシア・ニクソン、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、サラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
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いよいよ今週、『AND JUST LIKE THAT…/セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン3が最終回を迎え、キャリー・ブラッドショーは“マノロ”の靴を履く日々に別れを告げる。

復活版シリーズの賛否

大ヒットシリーズの復活版では、サラ・ジェシカ・パーカーシンシア・ニクソンクリスティン・デイヴィスが再びマンハッタンの街に戻ってきたが、この作品は賛否両論を呼んだ。なかには、かつての“魔法”が再びよみがえることを期待しつつ、複雑な思いで見続けたファンもいた。

4人の女性が築いたテレビの新ジャンル

キム・キャトラルは、マイケル・パトリック・キングが手がけた3シーズンのHBOのリブート版への出演を辞退したものの、これらの女性たちがテレビの1つのジャンルを築き上げ、セックスや恋愛、友情についてもっとも洗練された形で一世代の女性たちを導いたことは間違いない。

『セックス・アンド・ザ・シティ』 写真:Courtesy of Photofest
『セックス・アンド・ザ・シティ』 写真:Courtesy of Photofest

パーカーは、スタイリッシュなセックスコラムニスト、キャリー・ブラッドショー役として輝きを放ち、ニクソンは皮肉屋で率直な弁護士ミランダ・ホッブス役を演じた。デイヴィスは華やかな美術業界の学芸員、シャーロット・ヨーク役として登場し、やがてパークアベニューのプリンセスとなった。そしてキャトラルは、セックスに前向きな広報担当者サマンサ・ジョーンズ役を、挑発的かつ完璧に演じきった。

タブーなしのテーマ設定と社会的影響

ありとあらゆるテーマ――「アナルセックス、性感染症、結婚、離婚、出産、中絶、不倫、スウィンギング」――を彼女たちは網羅した。2004年のシーズン6最終回までに、『セックス・アンド・ザ・シティ』は1話あたり1,000万人超の視聴者を獲得し、当時のHBOシリーズで2番目に多く視聴された番組となった。

※スウィンギングとは、夫婦やカップル同士でパートナーを交換して性的関係を持つこと

米『ハリウッド・リポーター』が選ぶベストエピソード

彼女たちが笑い、涙し、コスモポリタン(劇中に登場するカクテル)を共に味わった女性たちへの敬意を込めて、米『ハリウッド・リポーター』は、全6シーズンから選ぶ決定版ベストエピソードを発表する。

惜しくもランク入りを逃したエピソードとしては、キャリーの恋の相手が多く挙げられる。たとえば、同じセラピー仲間のセス(演:ジョン・ボン・ジョヴィ)や、高校時代の恋人ジェレミー(演:デイビッド・ドゥカブニー)などだ。しかし、いくら容姿端麗な男性ゲストが出演しても、それだけで“殿堂入り”に値すると考えるべきではない。

サラ・ジェシカ・パーカー、『AND JUST LIKE THAT… シーズン3 / セックス・アンド・ザ・シティ新章』©2025 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.

また、ジャスティン・セローが演じた“早漏”に悩む男性が登場する「恋人のファミリー」(シーズン2・第15話)や、シリーズ屈指のロマンチックな場面が描かれた「ブレイクは別れのサイン!?」(シーズン6・第6話)も候補には入った。後者では、シャーロットとハリー(演:エヴァン・ハンドラー)がユダヤ系の独身者向けパーティーで涙ながらに愛を取り戻す姿が描かれている。

以下で紹介するのは、テレビ史に輝く厳選した名場面ばかりである。

15.「別れてもお友達?」(シーズン2・第18話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン2の第18話「別れてもお友達?」より 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン2の第18話「別れてもお友達?」より 写真:Courtesy of HBO

本エピソードで、バーブラ・ストライサンドとロバート・レッドフォードの力を借りながら、ビッグ(演:クリス・ノース)とキャリーの関係性がついに“その本質”として描かれる。物語は、ビッグが20代のナターシャと婚約したという話題から始まる。ナターシャは背が高く、ブルネット(濃い茶色の髪)で、彼女たちいわく「平凡」な女性だ。そこで話題は1973年の映画『追憶』に直結し、キャリーは自分がまさに複雑すぎるケイティーそのものだと悟る。

キャリーは、自分はシンプルなパートナーを求めるビッグには“重すぎる”存在だと気づく。そして物語は、戸惑うビッグの顔にキャリーがそっと手を伸ばし、映画のセリフ「あなたの恋人は素敵よ、ハベル」と語りかけるという、やや奇妙な演出のシーンでクライマックスを迎える。もちろんビッグはその意味を理解していない。しかし、その瞬間キャリーの心の中では何かが癒え、世界中の“複雑な女性たち”は報われたのだ。

14.「ロマンスの定義」(シーズン6・第14話)

(左)スティーブ役のデヴィッド・エイゲンバーグ、(右)ミランダ役のシンシア・ニクソン、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
(左)スティーブ役のデヴィッド・エイゲンバーグ、(右)ミランダ役のシンシア・ニクソン、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

まさにミランダとスティーブ(演:デヴィッド・エイゲンバーグ)らしい展開として、2人はランチ中に3ドルのビールを飲みながら婚約する。とはいえ、これは『セックス・アンド・ザ・シティ』なので、エピソードの中心はキャリーがアレクサンドル・ペトロフスキー(演:ミハイル・バリシニコフ)に「生理的に無理」と感じてしまう回だ。本エピソードは今回も、女性が経験する暗い側面まで掘り下げる姿勢を貫き、魅力的なロシア人彼氏にふと嫌悪感を抱いてしまう瞬間までも描き出す。

もちろん、ペトロフスキーがオペラを鑑賞するために贈った見事なオスカー・デ・ラ・レンタのドレスによって、キャリーは彼を許す。

一方サマンサは豊胸手術の事前検査を受けた際に乳がんと診断される。本エピソードの最後10分間は見事な脚本だ。落ち着き払ったサマンサが、ミランダの結婚式に向かう道中でキャリーに病気のことを打ち明ける。しかしミランダは披露宴でこの話をするよう求める。完璧な結婚式の日を犠牲にしてでも友人を支えたいという思いからである。
「あなたたちは私の大切な仲間。だから今すぐ話しましょう。最初から聞かせて」とミランダは言うのだ。

13.「20代の男との情事」(シーズン1・第4話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン1の第4話「20代の男との情事」より 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン1の第4話「20代の男との情事」より 写真:Courtesy of HBO

本エピソードがリスト入りした理由は、キャリーがビッグとの初デートに向かう途中のタクシーの場面に見られる、巧みな脚本技術にある。物語はまだ4話目だが、この短い道中で、彼女たちのキャラクターが鮮やかに描き出され、私たち視聴者は、それをむさぼるように味わい、理解するのである。

ロマンチストのシャーロットは、新しい恋人からアナルセックスを求められたことにショックを受けている。キャリーはそんなシャーロットを拾いながら仲間を集めていくが、シャーロットは明らかに不満顔だ。

現実主義者のミランダは冷静に分析する。「もし彼があなたのお尻に入れたら、あなたをもっと尊敬するの? それとも尊敬しなくなるの? それが問題よ」

そこへパーティーガールのサマンサが口を挟む。
「これは身体が体験するように作られた自然な表現よ。ついでに言うと、最高よ」

このワンシーンだけで、私たちはまるで友人のように彼女たちを理解することになる。シャーロットはこう返す。
「何言ってるの? 私はスミス大学出身よ!」

※スミス大学とは、1871年創立のアメリカ・マサチューセッツ州ノーサンプトン所在の名門女子大学である

12.「男はみんな変わり者?」(シーズン2・第3話)

ベン役のイアン・カーン、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン2の第3話「男はみんな変わり者?」より 写真:Courtesy of HBO
ベン役のイアン・カーン、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン2の第3話「男はみんな変わり者?」より 写真:Courtesy of HBO

キャリーがニューヨークの“クセの強い男たち”を次々と渡り歩く物語だ。これは、現代の出会い市場がまるで完全なるくじ引きのようだという絶妙なたとえであり、恋愛に身を投じるときだれもが抱く最大の不安「この人はいったい何者なのか?」を突いてくる。

そんななか、キャリーは超イケメンのベン(演:イアン・カーン)と出会い、いい意味で驚かされる。これまで街の“ピエロ”のような男たちとばかり遭遇してきたせいで、キャリー自身もかなり被害妄想気味になっていたのだ。

本エピソードには、『セックス・アンド・ザ・シティ』がいかに軽やかに、そして少し禁断の魅力があるテレビを作り上げていたかを示す要素が詰まっている。シャーロットは“ミスター・プッシー”と呼ばれる男性とデートするが、彼は特殊な愛撫の方法で知られる人物。サマンサはというと、自分のお尻の脂肪を顔に注入したいと考えている。

11.「素顔のままで」(シーズン4・第2話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン4の第2話「素顔のままで」より 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン4の第2話「素顔のままで」より 写真:Courtesy of HBO

キャリーはチャリティ・ファッションショーのランウェイで、派手に転んでしまう。その直後、本物のモデルが後ろから歩いてきて、キャリーをまたぎ越えながら「彼女、ファッションのロードキル(車に轢かれた動物)ね!」と一言放った。キャリーはまさにどん底に落ちる。しかしキャリーは立ち上がり、堂々と頭を上げてランウェイの終わりまで歩ききる。

一方、シャーロットとサマンサの世界が絶妙に重なる場面も描かれる。医師から「あなたの膣はうつ状態だ」と告げられたシャーロットは、鏡で自分の外陰部をしっかり見る勇気を奮い起こす。同時に、サマンサは自分のヌード写真を撮影し、それを自宅に飾ろうとしている。

そして何より印象的なのはミランダだ。ジムで男性から「セクシーだ」と言われ、完全に面食らったミランダの姿。知性を武器に自信を手にするミランダを演じるシンシア・ニクソンは、このシーンでとびきり魅力的だ。

10.「リスクの高い恋」(シーズン3・第11話)

キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン3の第11話「リスクの高い恋」より 写真:Courtesy of HBO
キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン3の第11話「リスクの高い恋」より 写真:Courtesy of HBO

キャリーは、ビッグとの関係が結局は安っぽいホテルでの秘密のセックスにすぎないことに気づく。そして事態は、ナターシャ(演:ブリジット・モイナハン)が2人のアパートでキャリーを目撃したことで一気に悪化する。ナターシャはキャリーを追い出そうとし、階段で転んで歯を欠けさせてしまう。ブリジット・モイナハンは、病院へ向かうタクシーの中で、キャリーを乗せないようにドアをロックしようとする場面を見事にアドリブで演じているのだ。

最終的にキャリーは、自分の謙虚さ、あるいはその欠如と向き合わされ、ほんのわずかに後悔の色を見せる。もっとも、それはミランダから容赦ない説教を受けたあとのことだ(この2人はやり合っているときが1番輝く)。

一方その頃、結婚式プランナーのアンソニー・マレンティーノ(演:マリオ・カントーネ)が初登場。サマンサは自分の男性版のような人物と出会うが、アンソニーからHIV検査を受けたか尋ねられて動揺する。この場面は、世紀の変わり目のニューヨークを舞台に、オープンリーゲイの脚本家たちが描く物語の中で、HIVを巡る偏見と恐怖が依然として根強かったことを示す重要な描写となっている。

9.「運命の人を求めて」(シーズン6・第12話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第12話「運命の人を求めて」より 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第12話「運命の人を求めて」より 写真:Courtesy of HBO

アレクサンドル・ペトロフスキー(演:ミハイル・バリシニコフ)が“ロシア人の恋人”として初めて登場し、冷たく、芸術的で、艶やかな存在感を放つ。しかし本エピソードでもっとも輝くのはクリスティン・デイヴィスだ。長い間ハリーとの間に子どもを望んでいたシャーロットは、3週間の妊娠を誇らしげに報告するが、その後流産してしまう。ソファに座り、感情を失ったようなシャーロットのもとへキャリーが駆けつけるものの、慰める言葉を見つけられなかったのである。

同じ頃、ミランダはスティーブへの想いと向き合っていた。きっかけとなったのは、信じられないほどハンサムなロバート・リーズ医師(演:ブレア・アンダーウッド)から贈られた巨大な「I Love You」クッキー。そしてサマンサは、恋人スミス(演:ジェイソン・ルイス)の好みに合わせて“フル・ブッシュ(Full bush)”に挑戦しているのである。

※フル・ブッシュとは、アンダーヘアを自然なまま、ほとんど処理せずにフルに残している状態を指す俗語

ミランダの息子ブレイディの1歳の誕生日パーティーに行く気力をなくしていたシャーロットは、エリザベス・テイラーのエピソードに勇気を得て、テイラー風のピンクのドレスに身を包んでミランダの家へ向かう。涙ながらに、そして勇敢に、そのお祝いに加わる。そこでスティーブはミランダに「君こそが運命の人だ」と告げる。

8.「女の特権、シューズマジック」(シーズン6・第9話)

(左)スタンフォード役のウィリー・ガーソン、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
(左)スタンフォード役のウィリー・ガーソン、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

「彼女は私の靴をバカにしたの」――子どもを持たない女性たちの代弁者キャリー・ブラッドショーは、友人との対立を経て、自分が好きなものにお金を使う正当な権利を勝ち取る。

キラ(演:テータム・オニール)は、自宅で開いたパーティーでゲストに靴を脱ぐよう求めた結果、なくなってしまったキャリーのマノロの靴代を支払うことを拒否する。キャリーが「485ドルしたの(約6万3,500円)」と告げると、キラは「あなたの贅沢な暮らしを私が負担する必要はない」と拒絶する。キャリーが「あなたも昔はマノロを履いていたでしょう」と諭しても、キラは「それは“本当の生活”を始める前の話よ」と返す。

※円表記は、1998年放送当時の為替レートで換算しています

視聴者の多くは、キャリーが子どもを持つかどうかにかかわらず、自分の人生を自由に生きる権利があると主張し、キラのような“靴による恥かしめ”は不当だと感じる。最終的に、キラは新しいマノロの靴を買ってキャリーに渡す。このエピソードは、お金、自己決定権、そして母親であることをテーマに深く掘り下げている。

7.「我が心のNY」(シーズン4・第18話)

(左)ミスター・ビッグ役のクリス・ノース、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
(左)ミスター・ビッグ役のクリス・ノース、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

2001年9月11日の同時多発テロ後に放送された本エピソードは、瞬く間にニューヨークの人々への感動的なオマージュとなった。『セックス・アンド・ザ・シティ』の視聴者の間では、ニューヨークは“5人目のキャラクター”だと冗談めかして語られることも多いが、それは事実であり、本エピソードほどそれがはっきりと表れている回はない。

キャリーは澄んだ秋の空気が街に吹き込む様子を詩的に語り上げるが、そこでビッグがカリフォルニア州のナパへ移住することを知る。キャリーにとってビッグは“ニューヨークそのもの”のような存在であり、この衝撃的な知らせはキャリーを打ちのめす。しかし同時に、ビッグが子供時代をどのように過ごしてきたのか少しだけ垣間見ることができる場面もある。2人が彼のアパートを片付けながら古いレコードに合わせて踊るシーンだ。

一方、リチャード(演:ジェームズ・レマー)はサマンサの心の壁を少しずつ崩し、ミランダとスティーブには赤ちゃんのブレイディが誕生する。仲間たちは確実に大人の階段を上っていくのである。

6.「弱気な男のポストイット」(シーズン6・第7話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第7話「弱気な男のポストイット」より 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第7話「弱気な男のポストイット」より 写真:Courtesy of HBO

『セックス・アンド・ザ・シティ』は、どうして20年後になったいまでも、自信のない男たちが女性と別れるためにもっとも卑怯な方法を探し続けていると予見できたのだろうか。広く知れ渡った“ポストイット破局”では、バーガー(演:ロン・リヴィングストン)がキャリーとの関係を終わらせるために残した1枚の付箋は、独身生活の地獄を見事に描き出していた。

キャリーは当然のごとく「別れは男性にとってあまりにも簡単すぎる」と感じる。一方で女性は、失敗した恋愛の後にはかならず何らかの自己成長を遂げるべきだと期待されがちだ。

同じ頃、ミランダはスキニージーンズに再び体を収めようとして大慌て。この姿に多くの視聴者が共感するのである。女性たちは新たにオープンした人気クラブ「Bed」で盛り上がるが、キャリーはついバーガーの友人たちに詰め寄ってしまう。心の奥では自分もキャリーと同じ立場だと感じるからこそ、私たちは思わず身をすくめてしまうのだ。

5.「過去という名の亡霊」(シーズン4・第5話)

エイダン役のジョン・コーベット、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
エイダン役のジョン・コーベット、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

エイダン(演:ジョン・コーベット)が短髪になって再登場。キャリーは、エイダンとスティーブがオープンした新しいバー「スカウト」の開店祝いに出向き、関係をやり直したいと心に決める。しかし、ジョン・コーベットの演技はまさに歴史に残るものだ。控えめで、怒りを秘め、物思いに沈む姿を見事に表現している。彼の心の痛みはエピソード全体を通して水面下でくすぶり続け、次回エピソードでの「僕を傷つけた(You broke my heart)」というセリフへとつながる。

一方ミランダは、自分のアパートに幽霊がいると仲間たちに告げる。少々あからさまだが、このたとえにはどこか心をつかまれるものがある。おそらくは、ニクソンが恐る恐る歩く演技によって、ミランダとスティーブ、そしてキャリーとエイダンの間に残された未解決の関係に、胸をえぐるような深い悲しみが漂っているのだ。

シャーロットはマクドゥーガル家とベッドを買いに行くが、トレイの母バニー(演:フランシス・スターンハーゲン)はいつものようにとびきり魅力的だ。「これはすばらしいわ」とトレイに告げ、バニーとシャーロットの間には、シーズンを通して繰り広げられる見事な対立劇に突入する。

4.「恋の本音とタテマエ」(シーズン3・第2話)

政治家ビル・ケリー役のジョン・スラッテリー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
政治家ビル・ケリー役のジョン・スラッテリー、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

ビル・ケリー(演:ジョン・スラッテリー)、早く帰ってきて、子どもたちが寂しがっている。そんな気分になるほど、本エピソードは『セックス・アンド・ザ・シティ』の魅力が凝縮されている。キャリーは“政治家”のビル・ケリーを追って選挙活動に同行し、衣装も振る舞いもすっかりファーストレディ気取り。彼はシリーズを通じて、ビッグに匹敵するほどの権力とニューヨークでの存在感を誇る数少ない男性の1人だ。

ミランダは、スティーブからのかわいらしい「付き合おう」という告白に対して気持ちの整理をしており、サマンサは非常に背の低い男性と向き合うことを受け入れつつあった。キャリーの世界における“セックスと政治”の交差は妙にエレガントで、濃厚なドラマを生む題材だ。しかし、物語がフェチの話題に足を踏み入れた途端、キャリーの慎み深い性格が前面に出てきて、シャワーで放尿してほしいというビルの頼みにドン引きして別れを告げる。

それでも、このエピソードで登場するサマンサ・ジョーンズの名言が炸裂する。
「私は共和党も民主党も信じない。ただ“パーティー”だけを信じてるの」

3.「女と男の別れのルール」(シーズン2・第1話)

『セックス・アンド・ザ・シティ』 写真:Courtesy of HBO
『セックス・アンド・ザ・シティ』 写真:Courtesy of HBO

キャリーはビッグとの初めての別れ、文字通り“ビッグ・ブレイクアップ(Big break-up)”に動揺しているが、それでもキャリーが番組のなかでも指折りのハイスペック男性を逃したことは許せない。「ニューヤンキー」ことジョー(演:マーク・ディヴァイン)は、極度にシャイで信じられないほどのハンサムな男性。ミランダに誘われて行った野球の試合で登場する。

観客席に並んだ4人の姿は象徴的だ。皮肉屋のミランダが審判に向かって叫ぶ横で、ほかの3人は酒を飲み、愚痴をこぼし、下ネタ話をする。なぜかキャリーはジョーの番号を手に入れ、ドルチェ&ガッバーナのパーティーに連れて行く。そこでは、キャリーの衣装史に残る最高級の青いドレスを披露し、さらに“Carrie”ネックレスを初めて身につけているとされる。

本エピソードはまさに『セックス・アンド・ザ・シティ』の真骨頂。楽しく、ファッショナブルで、色っぽく、そして意外に胸を打つのである。ダーレン・スターら製作陣は、最後の場面で見事に締めくくる。数週間ものあいだ最悪の事態を恐れていたキャリーは、ジョーと一緒に外出しているとき、ビッグがキャリーのほうへ歩み寄ってくるのを見て、視界がかすむ。別れて以来初めての再会。元恋人とばったり出くわしたときの胃の底がきゅっと締めつけられるような痛みは隠しようがない。まさに失恋とはそういうものだ。

2.「私とマザーボード」(シーズン4・第8話)

ミランダ役のシンシア・ニクソン、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO
ミランダ役のシンシア・ニクソン、『セックス・アンド・ザ・シティ』より 写真:Courtesy of HBO

本エピソードは、シンシア・ニクソンとキム・キャトラルの胸を打つほど圧倒的な演技によって支えられている。
キャリーとエイダンは、これまでにないほど率直にぶつかり合うが、その衝突も、ミランダからフィラデルフィアで母が心臓発作で亡くなったという電話が入った瞬間、すべてがかすんでしまう。

一方、サマンサは「快感を失った」と不安になり、キャリーは壊れたノートパソコンに頭を抱えているが、ミランダはもう二度と母に会えないという現実に向き合っていた。それは、下着店の店員と揉める場面で見事に描かれている。「自分に何が1番必要かは、私が1番わかっている!」とミランダは言うのだ。

友人の悲しみに寄り添えないように見えたサマンサも、自分なりの死生観と向き合うことになる。葬儀で2人が目を合わせたとき、サマンサは口の動きで「ごめん」と伝え、ミランダは「ありがとう」と返す。2人はいつだって、言葉にしなくてもわかり合える関係だった。

1.「しあわせ探しの末に」(シーズン6・第20話)

(左)ミスター・ビッグ役のクリス・ノース、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第20話「しあわせ探しの末に」より 写真:Courtesy of HBO
(左)ミスター・ビッグ役のクリス・ノース、(右)キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン6の第20話「しあわせ探しの末に」より 写真:Courtesy of HBO

『セックス・アンド・ザ・シティ』の名場面集は、最終回を入れずには完成しない。スミスは、抗がん剤治療によるサマンサの浮き沈みを支え続け、このシリーズで間違いなく最高の男性キャラクターの1人であることを改めて証明する。サマンサから「今まで一緒にいた誰よりも大切な存在だった」と告げられる。養子縁組を申し出ていた夫婦に断られ落ち込むシャーロットだが、ハリーが養子縁組機関からの電話を受け、中国に両親を必要としている女の子がいると知らされる。「あの子が私たちの赤ちゃんよ!」とシャーロットは涙する。

一方ミランダは、病気のスティーブの母親を引き取り、世話をするという、これまでで最大の献身を見せた。パリでの生活に馴染めないキャリーは、ペトロフスキーに頬を叩かれ、状況はさらに悪化。そこへビッグが現れ、長年にわたる複雑な関係にようやく決着がつく。その前にビッグがパリのホテル内を走り回り、ペトロフスキーを探して殴ろうとする一幕も。靴に夢中な作家キャリーにとって、まるでおとぎ話のような結末となる。

U-NEXTでは、『セックス・アンド・ザ・シティ』と『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』のシリーズを配信中!

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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