『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』東京国際映画祭で日本初披露|若きブルースの魂の旅路を描く感動の音楽ドラマ

ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より
ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より ©2025 20th Century Studios
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ロックの英雄ブルース・スプリングスティーンの若き日を描いた感動の音楽ドラマ『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』が、11月14日(金)に全国公開される。第38回東京国際映画祭ガラ・セレクションで日本初披露され、上映後のトークイベントではファンが大集結、会場は熱気に包まれた。

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より
映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より © 2025 20th Century Studios.

若き日のブルース・スプリングスティーンの孤独な創作の旅

1982年、キャリアの岐路に立つスプリングスティーンは、名声の裏で孤独と葛藤に揺れていた。ロックスターとしての喧騒から離れ、彼が向かったのは、誰もいない荒野のような“どこでもない場所”。手元には4トラックのレコーダーと、曲になりかけた断片のみ。恋人との時間や幼少期の母との思い出、父との確執に苛まれながら、静かに魂を刻み始める——その時、彼に何が起こっていたのか。

ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より
ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より © 2025 20th Century Studios.

伝説の名盤『ネブラスカ』誕生の裏側を描き、主演のジェレミー・アレン・ホワイトが圧巻の歌声でブルースを体現する。監督はアカデミー賞を受賞した『クレイジー・ハート』(2009年)で音楽映画の真髄を描いたスコット・クーパー。乾いたアメリカの風景と魂の声、祈りに満ちた物語は、観る者の心を深く揺さぶる。

東京国際映画祭ジャパンプレミアの熱狂

湯川れい子氏と五十嵐正氏
湯川れい子氏と五十嵐正氏 ©2025 20th Century Studios

11月1日、TOHOシネマズ日比谷で行われたジャパンプレミアでは、音楽評論家の湯川れい子氏と字幕監修を務めた五十嵐正氏が登壇。上映前には、スプリングスティーンのTシャツやトレーナーで装った熱烈なファンが詰めかけ、二人のトークに聞き入った。上映後には満席の客席から大きな拍手が巻き起こり、ファンからは感動のコメントが続々と寄せられた。

湯川氏は上映後、「ブルースが自分の内面に向き合い、音楽を通して魂を刻む姿が描かれている。本作は単なる音楽映画ではなく、人間としての葛藤や孤独、希望を深く映し出している」と語った。また、「ジェレミー・アレン・ホワイトが、自らリトル・リチャードの歌も吹替えなしで披露する場面は圧巻で、ブルースの魂を完璧に体現している」と絶賛した。

五十嵐氏も、「字幕監修には苦労しましたが、歌詞やセリフの情報を適切にまとめ、音楽のニュアンスを日本語で伝えることに注力しました。この映画は、音楽ファンだけでなく、ブルースの生き方や人間性に興味がある方にとっても価値のある作品です」と語った。

ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より
ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より © 2025 20th Century Studios.

さらに湯川氏は、スプリングスティーン来日時の秘話も披露。「1985年に初来日した際、ブルースがエルヴィス・プレスリーの音に対してどれほどこだわりを持っていたかを目の当たりにしました。その姿勢は、彼の創作の原点にも直結している」と明かした。

五十嵐氏も付け加える。「映画には、スプリングスティーンの音楽的ルーツや創作の苦悩が忠実に描かれており、観る者は彼がどのように偉大なアルバム『ネブラスカ』を生み出したのかを体感できます。彼の精神的な苦闘を通じて、私たちは芸術の価値や創造の意味を改めて考えさせられるでしょう」。

湯川氏は最後に、「恋人役の女性は架空ですが、その他の人物は実在。歴史的事実に基づいた物語なので、ドキュメンタリー感覚で楽しめる。ブルースの生き様を感じてほしい」とコメント。五十嵐氏も「ブルースが偉大な作品を作る過程で直面した内面的な苦悩や葛藤が描かれている点が、最大の見どころ」と語り、ファンに向けて熱いメッセージを送った。

ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より
ジェレミー・アレン・ホワイト、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』より © 2025 20th Century Studios.

音楽史に刻まれた瞬間を映画で体感

本作はスプリングスティーン本人の協力のもと、アルバム『ネブラスカ』制作期の心の旅路に焦点を当てた音楽評論書『Deliver Me from Nowhere』(ウォーレン・ゼインズ著)を原作とする。架空の人物はほとんどなく、実在のエピソードや人物を忠実に描写。恋人役の女性は架空だが、父や母、音楽関係者は実在し、ブルースの孤独と創造の苦闘がリアルに映し出される。

五十嵐氏は「ブルースが『ネブラスカ』という偉大な作品を作るために、自分の内面と向き合った姿勢が描かれている。観る者に様々な気づきを与える映画です」と語る。湯川氏も「ブルースがエルヴィス・プレスリーの音に強いこだわりを持ち、ロックの魂を追求した姿が印象的」と補足した。

Springsteen: Deliver Me From Nowhere (Original Motion Picture Soundtrack) サントラ 『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
Amazon.co.jp

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
サウンドトラック
12月5日発売予定

【登壇者プロフィール】

湯川れい子

音楽評論家。昭和35年、ジャズ専門誌 『スウィング・ジャーナル』 への投稿が認められ、ジャズ評論家としてデビュー。その後、16年間に渡って続いた 『全米TOP40』 (旧ラジオ関東・現ラジオ日本)を始めとするラジオのDJ、また、早くからエルヴィス・プレスリーやビートルズを日本に広めるなど、独自の視点によるポップスの評論・解説を手がけ、世に国内外の音楽シーンを紹介し続け、今に至る。

五十嵐 正

音楽評論家。社会状況や歴史背景をふまえたロック評論から世界各国のフォークやワールド・ミュージックまでに健筆を奮う。
著書に『スプリングスティーンの歌うアメリカ』(音楽出版社)。本作『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』の字幕監修も務める。

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』 ©2025 20th Century Studios

作品情報

  • 監督・脚本:スコット・クーパー
  • 原作:ウォーレン・ゼインズ『Deliver Me from Nowhere』
  • 主演:ジェレミー・アレン・ホワイト(ブルース・スプリングスティーン)
  • 共演:ジェレミー・ストロング、ポール・ウォルター・ハウザー、スティーヴン・グレアム、オデッサ・ヤング、ギャビー・ホフマン ほか
  • プロデューサー:スコット・クーパー、エレン・ゴールドスミス=ヴァイン、エリック・ロビンソン、スコット・ステューバー
  • 製作総指揮:トレイシー・ランドン、ジョン・ヴァイン、ウォーレン・ゼインズ
  • 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
  • 公開日:11月14日(金)全国ロードショー
  • 公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/springsteen

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