【第38回東京国際映画祭】是枝裕和×クロエ・ジャオ監督『ハムネット』で涙「なぜ映画を撮るのかを肯定してくれた」

第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇したクロエ・ジャオ監督と是枝裕和監督
第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇したクロエ・ジャオ監督と是枝裕和監督
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第38回東京国際映画祭の「国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ」が11月2日に東京ミッドタウン日比谷のLEXUS MEETS․․․で開催され、是枝裕和監督とクロエ・ジャオ監督が対談した。

ジャオ監督最新作『ハムネット』は本映画祭の今年のクロージング作品に決定し、また監督は今年の「黒澤明賞」を受賞している。

第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇したクロエ・ジャオ監督と是枝裕和監督
第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇したクロエ・ジャオ監督と是枝裕和監督

是枝監督は「交流ラウンジで誰と話したいか聞かれるたびに、クロエさんの名前を出していた。いま新作の撮影中ですが、クロエさんに会うために映画祭に来ました」と対談が実現したことを喜んだ。

是枝監督「『ハムネット』を観て涙が止まらなくなった」

『ハムネット』を鑑賞した是枝監督は「とにかく感動しました。試写室で観せていただいたのですが、涙が止まらなくなりました。なぜ自分の物語を描くのか、なぜ映画を撮るのか、なぜ悲しい話を描くのか、そういうことを全て包み込んで肯定してくれた」と感想を述べ、「映画館に人が集まること、人と一緒に悲劇を悲しい物語に触れること、そのことも含めて、とても大きなテーマを描いている作品だと感じた。このような作品を作っていただいてありがとうございます」と感謝を伝えた。

ジャオ監督も「ずっと是枝監督の大ファンでした。『ワンダフルライフ』と『ハムネット』は似ていると感じます。喜びも悲しみも人生を鏡のようにみる体験が有益で、クリエーターとして有意義なことをしていると思わせてくれました」と語った。

(左から)ジェシー・バックリー(『ハムネット』アグネス役)、ポール・メスカル(ウィリアム・シェイクスピア役)映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC
(左から)ジェシー・バックリー(アグネス役)、ポール・メスカル(ウィリアム・シェイクスピア役)、映画『ハムネット』より 写真:Agata Grzybowska / © 2025 FOCUS FEATURES LLC

クロージング作品である『ハムネット』は、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグとサム・メンデスを迎え、日本では2026年春に公開が予定されている。16世紀、イングランドの小さな村を舞台に、ペスト禍に揺れる当時の人々の姿や、アグネスの視点から映し出される夫ウィリアム・シェイクスピアの存在、そして「ハムレット」という戯曲が生まれた背景にある悲劇と愛の物語が描かれる。

『ハムネット』の魅力について是枝監督は、「『ノマドランド』もそうだと思うけど、クロエさんの映画は主人公と一緒に旅をしていく。どこに物語がたどり着くのか人生のようにわからない、その旅に寄り添っていくという監督の目線がすごく好きなんですね。その目線を、『ハムネット』は旅の映画ではないけれど同じように感じました」と絶賛した。

是枝監督とジャオ監督の映画制作プロセスとは

また是枝監督とジャオ監督は、自身の映画制作のプロセスについて語り合った。ちょうどセットで撮影をしていて残りが2週間だという是枝監督は、「撮影のセットに自分が立ってイメージを膨らませながら、現場で台本を書き直していく作業がとても好きなんです。スタッフはみんなハラハラしていると思うんですけど、そうやって出来上がったものは、間違いがない。現場で発見されたものが一番豊かだなと感じています」

「撮影後は夜に事務所に帰って編集し、翌日の撮影を変更する」という是枝監督にジャオ監督は、「私は8時間睡眠が必要です。夜に作業するんですか?」と返答し、会場の笑いを誘った。

第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」の登壇したクロエ・ジャオ監督
第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」の登壇したクロエ・ジャオ監督


『ハムネット』の結末についてジャオ監督は「撮影が終わる4日前に、結末がうまくいってないと私と主演のジェシー・バックリーは感じていました。ジェシーはこれでいいの?って。そんなときにジェシーが送ってくれた歌詞から気付きをもらったんです」と結末は自身とジェシーが作り上げたものであると制作の裏側を明かした。

また、ジャオ監督に「俳優との関係」について質問された是枝監督は、「現場で変えていくことにどう対応してくれるか、それを楽しんでくれる役者さんと仕事がしたいです。細かく動きを決めずに提案します。僕は自分のやり方があるわけではなくて、役者さんとどういう接し方をして、どういう言葉のかけ方をしたらいいかということを見つけていくんです」と答えた。

第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇した是枝裕和監督
第38回東京国際映画祭「交流ラウンジ」に登壇した是枝裕和監督

是枝監督、人生の理念について語る

さらに「人生についてどんな理念を持ってますか?」と積極的に質問するジャオ監督。これに対し是枝監督は「今年は2本映画を撮っていますから、ずっとワークをしているんですけど、それが嫌ではない体になってしまいました。本当に楽しくて。でも、こうしないと映画監督になれないと思われるとまた違う気がしますが。現場にいる子どもたちに、60歳を過ぎた僕が何かすごく楽しそうにしているなという印象を残したい。映画作りを仕事で選んだら楽しいのかも、と少しでも思ってもらいたい」と笑顔で語った。

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