エル・ファニング、「ずっと背中にくくりつけられてた」――『プレデター:バッドランド』驚きの撮影エピソード
即興で生まれた異色のコンビ
『プレデター:バッドランド』で主演を務めるのは、エル・ファニングとディミトリアス・シュスター=コロアマタンギだ。ふたりは、まさに“ぶっつけ本番”で物語に飛び込んだ。

通常なら俳優同士の相性を確かめるためのカメラテストやリハーサルを重ねるところだが、今回はちがった。たがいを知る時間などほとんどなく、スタント練習で一度すれちがったかと思えば、次の瞬間にはニュージーランドの僻地にあるダン・トラクテンバーグ監督の撮影現場で、文字通り体をくくりつけられた状態で共演していたという。そうして生まれたのが、近年まれに見る個性派コンビである。
“はみ出し者”のプレデターと壊れた人造人間
ニュージーランド出身のシュスター=コロアマタンギが演じるのは、シリーズ初のヤウージャ(プレデター)族の主人公・デク。彼は一族の中でも“はみ出し者”として父親から見限られた存在だ。だが運命に抗うように、デクは一族の許しを得ぬまま初めての狩りへと旅立つ。やがて彼の船は墜落し、たどり着いたのは“銀河でもっとも危険な惑星”ジェンナ。そこで出会うのが、ファニング演じるウェイランド・ユタニ社製のシンセティック(人造人間)・ティアだ。

背中に“相棒”を背負って挑む過酷な撮影
そのシンセティックは、墜落の衝撃で深刻な損傷を負っていた。脚を失ったティアを運ぶため、デクはその身体を背中に固定し、死の荒野を共に進むことになる。つまり撮影中、シュスター=コロアマタンギは文字どおりファニングを“背負って”演じていたのだ。
ファニングは撮影を振り返り、「撮影の大半で、私は“Lの字”の形でディミトリアスの背中にくくりつけられていたの。脚には青いカバーをつけて、ワイヤーやリグ、ハーネスを組み合わせて吊り上げていたわ。あとでCGで脚を消すためよ」と笑う。

さらにファニングが「一輪車スタイルもあったの」と語るように、撮影チームは驚くべき工夫を凝らした。ディミトリアスの腰に特殊な装置を取り付け、その後ろに二輪の台車を連結。ファニングはその上に座り、彼が彼女を乗せたまま険しい丘を引っ張り上げる──という、まさに奇妙かつ挑戦的な撮影方法だった。そんな撮影秘話を明かしながら、ファニングは笑顔で語る。
トラクテンバーグ監督が描く“プレデター新章”の未来
6月に公開されたアニメ映画『プレデター:最凶頂上決戦』から本作『プレデター:バッドランド』へ──ダン・トラクテンバーグ監督は、この宇宙にまだまだ数多くの物語の可能性を残している。
ファニングとシュスター=コロアマタンギも、具体的な構想までは知らされていないが、2022年の『プレデター:ザ・プレイ』以来、監督が丹念に築き上げてきたこの世界に壮大なビジョンがあることは理解しているという。

二人が語る“プレデター・ユニバース”への信頼
「この世界には、いくらでも広がりがあると思うわ。ダンにはどこまでもついていくつもりよ」とファニング。これに対し、シュスター=コロアマタンギも「ダンは何かを仕込んでいる。あの人は天才だ」と頷く。
さらにインタビューの中で、シュスター=コロアマタンギは、ファニングが演じる「もうひとりの合成体」キャラクター、テッサと対峙した際に感じた「ぞっとするような感覚」についても語っている。

――『プレデター:バッドランド』のような二人芝居の作品では、通常は俳優同士の相性(ケミストリー)を確かめる“ケムリード”が欠かせない。しかし、饒舌な合成体と寡黙なヤウージャという異色の組み合わせの場合でも、それは必要だったのだろうか?
エル・ファニング ケムリードは……やってないの。
ディミトリアス・シュスター=コロアマタンギ うん、まったくなかった。
ファニング スタント訓練のリハーサル日が一度あって、そのときにすれちがったくらい。その後すぐ、撮影現場では背中同士をくっつけられていたのよ(笑)。
シュスター=コロアマタンギ (爆笑)
ファニング でも、ああいう状況に置かれると、すぐに打ち解けるものよ。ディミトリアスなんて、オーディションのために“アメリカン・ニンジャ・ウォリアー”みたいなトレーニングコースをやり遂げたの。すごかったわ。
シュスター=コロアマタンギ 楽しかったよ。でも正式なケミストリーテストなんてなかった。現場でいきなり背中同士で固定されて、それがすべてさ(笑)。
ファニング ダン(・トラクテンバーグ)には本当に驚くべき直感があるの。彼は卓越した発想力と先見性をもつ人で、この作品のコンセプトもアイデアもすべて、彼の発想から生まれたものなのよ。まさに「大きな賭け」ではあったけれど、私は心からダンを信じていた。彼は最初から、「私たちはきっとうまくいく」という確信を持っていたの。そして、その直感は完全に正しかったの。ディミトリアスが相手で本当によかった。心からそう思っている。
――デクがティアをまるでジャンスポーツのリュックのように背負っている場面を見るたびに、実際のお二人の身長差が気になっていました。レッドカーペットの写真を見る限り、ほぼ同じくらいですよね。撮影時のあの「密着スタイル」は、実際どれほど大変だったのでしょう?
(ファニング&シュスター=コロアマタンギ、笑)
ファニング そのとおりなの。私たちのために、これまでだれも使ったことのない新しいワイヤーリグをいくつも開発してくれたのよ。撮影はニュージーランドの大自然の中で行われていたから、木々にワイヤーを直接張って、実際にリュックのように「低い位置で背負われている」感じを再現したの。
シュスター=コロアマタンギ まさに「背中にくくりつけられてぶら下がってる」って感じだったね。
ファニング しかも私は壊れたシンセティックを演じているから、自分の脚を消さなきゃいけなくて。だから、脚にはブルーの“おしゃれなストッキング”を履いて、ワイヤーにつながるスリングに入れていたの。それで川を渡ったり、山を登ったり、ふたりで一緒に走り抜けたりしていたの。ハーネスも使っていたけど、例の“一輪車スタイル”も健在だったわ。ディミトリアスの腰に装置をつけて、私は二輪の台車に座り、彼が私を引っ張って丘を登る。あれは本当に奇妙で、でもすごく面白い仕掛けだった。
シュスター=コロアマタンギ あれは最高だったよ(笑)。
ファニング でもね、座るときはスツールの高さを変えなきゃいけなかったの(笑)。
シュスター=コロアマタンギ あれはおかしかったね。細かい調整が山ほどあった。
ファニング ときどき私はつま先立ちになって、実際に背負われているように見せていたの。後ろ向きに歩きながら、ディミトリアスと歩幅を合わせてね。後になって気づいたのよ。「あれ? ずっとハーネスをつけなくてもできたじゃない!」って(笑)。
シュスター=コロアマタンギ (笑)「ちょっと待て、これいけるかも!」ってね。
ファニング (笑)「私、これリアルでできるわ!」って思ったの。
――ディミトリアス、エルがティアからテッサへと変わる瞬間を見るのは、やはり衝撃的でしたか?
シュスター=コロアマタンギ まさにそのとおりなんだ。実際、ティアの衣装のときとテッサの衣装のときでは、エルの雰囲気がまったくちがっていて、体がそれを感じ取ってしまうほどだった。テッサのあの清潔感のある白いスーツ姿を見ると、自然と距離を置いちゃうんだよね。「あれ、この人、俺の知ってるあの子じゃないな」って(笑)。でも正直に言うと、エルの演技には本当に敬意を表したい。二つの役をここまで見事に演じ分けるなんて、並大抵のことじゃない。俳優にとって“二役”はとても難しい挑戦だけど、エルはそれをまるで息をするように自然に、しかも優雅にこなしていた。その姿を間近で見られたのは、本当に感動的だった。
(エル・ファニング、照れくさそうに笑いながら小さく「ありがとう」とつぶやく)
――エル、あなたは撮影中にディミトリアスの素顔での表情を見ていましたが、完成版のデクの顔にも彼の演技の痕跡を感じますか?
ファニング ええ、もちろん感じ取れるわ。『プレデター:バッドランド』は、シリーズ史上初めて“プレデター自身が主人公”となる作品なの。観客は、彼の過去や、実は彼にも感情や思いがあることを知ることになるの。ディミトリアスの演技は本当にすばらしくて、ポストプロダクションでどんな加工を施しても、その感情がちゃんと伝わってくるのよ。彼の目、痛み、渇望、闘志、怒り、全部がそこにある。
撮影のときに彼の素顔が見えたのは、私たち二人にとってすごく助けになったわ。特に私にとっては、俳優として彼ときちんと心を通わせるためにとても大事だった。
それに、彼は完全に別の言語まで習得したの。ヤウージャ語っていう架空の言語なんだけど、きちんと構築された“本物の言語”なのよ。専門の言語学者が作ってくれて、ディミトリアスはそれを流暢に話せるようになった。だから、彼がヤウージャ語で話して、私が英語で返す。そんなシーンも多かったの。
特に“バディもの”的なテンポ感が求められる場面では、リズムとタイミングがすごく重要だったわ。言語がちがっても掛け合いの間を完璧に合わせるために、ふたりでセリフを何度も繰り返して練習したの。そうやって、おたがいの呼吸をぴったり合わせていったのよ。

――『プレデター:バッドランド』の結末は非常に満足度の高いものですが、同時に次への余地も感じさせます。ダン監督は今後の構想について、どの程度明かしてくれましたか?
シュスター=コロアマタンギ ほとんど何も!(笑)
(ファニング&シュスター=コロアマタンギ、笑)
ファニング そう、あまり多くは教えてくれないの。でも、この映画の終わり方は本当に気に入っているわ。まだまだ可能性はたくさんあると思うし、私はダンについていくつもりよ。彼はこのフランチャイズをとても聡明に扱っていて、その“大胆な挑戦”が本当に素敵なの。そういう攻めの姿勢って大事だと思うのよ。
それに、この作品は新しい世代の『プレデター』ファンを生み出せる映画だと感じている。過去作を観ていなくても、この作品だけで十分に楽しめるようになっているの。だからきっと、ダンの頭の中にはすでにいろんなアイデアが渦巻いているはず。彼は常に何かを考えている人だから。
シュスター=コロアマタンギ 彼は何かを仕込んでるよ。あの人は本当に天才だ。
映画『プレデター:バッドランド』は、11月7日より全国の劇場で公開。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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