今オスカーシーズンは名監督が本気モード:ヒット連発の背景とは?

ライアン・クーグラー 写真:Jeff Spicer/Getty Images for Warner Bros.
ライアン・クーグラー 写真:Jeff Spicer/Getty Images for Warner Bros.
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2025〜26年のオスカーシーズンは、例年以上に“外さない名監督”たちが揃ったシーズンとなっている。
罪人たち』を観た際、多くの観客が抱いた疑問は「ライアン・クーグラーは失敗することがあるのか?」というものだった。

『罪人たち』より 写真:Courtesy of Warner Bros.
『罪人たち』より 写真:Courtesy of Warner Bros.

クーグラーは『フルートベール駅で』で鮮烈にデビュー後、『クリード』でシリーズを蘇らせ、『ブラックパンサー』で世界的成功を収めた。そして最新作『罪人たち』でも独自の視点でホラーを再構築し、被抑圧者の自由への闘いを象徴的に描ききっている。

だが、好調なのはクーグラーだけではない。今シーズン、オスカー戦線に挑む監督のうち少なくとも9人はキャリアの絶頂を維持している。
もちろん全員が傑作を届けたわけではないが、全体として“名匠シーズン”と呼べるほど層が厚い。

カムバックしたキャスリン・ビグローは8年ぶりの新作『ハウス・オブ・ダイナマイト』で、かつての緊張感あふれるサスペンス演出を完全に取り戻した。
ポール・トーマス・アンダーソンは『ワン・バトル・アフター・アナザー』で混沌を見事に構造化し、熟練の語り口で観客を魅了している。

アンドリュー・ガーフィールド、ジュリア・ロバーツ、映画『アフター・ザ・ハント』より
映画『アフター・ザ・ハント』より 写真:© Amazon MGM Studios

一方で、ルカ・グァダニーノは今年の『アフター・ザ・ハント』で久々に“外した”印象も。だが『ボーンズ アンド オール』『チャレンジャーズ』『クィア/QUEER』と続いた近年の快進撃を考えれば、むしろ稀なケースと言っていい。

ケリー・ライカートの新作『The Mastermind(原題)』は、デビュー作以来一貫する静謐な作風を保ちながら、70年代の美術品強盗を題材にユーモアと哀感を織り交ぜた好作に。
また、ソフィア・コッポラもキャリア全体で見れば“安定した熱量”を保つ監督の一人で、作家性の揺るぎなさが評価され続けている。

長い映画史を振り返れば、スティーヴン・スピルバーグマーティン・スコセッシフランシス・フォード・コッポラら、いわゆる“ホットストリーク(連続ヒット)”を持つ監督は数多い。
コッポラが『ゴッドファーザー』『カンバセーション…盗聴…』『ゴッドファーザー PART II』『地獄の黙示録』と続けて放った5年は、今なお“史上最強の連打”とされるほどだ。

今シーズンも、各国の名匠たちがその持続力を証明している。
ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィーリョは新作『The Secret Agent(原題)』で4連勝を更新。
ヨアキム・トリアーは『わたしは最悪。』に続き、『センチメンタル・バリュー』で家族の感情を見事に掘り下げてみせた。
さらに、ジャファル・パナヒのパルムドール受賞作『It Was Just an Accident(原題)』は、抑圧と闘い続ける作家としての姿勢がにじみ出た力作となっている。

今年のオスカーは、作品そのものだけでなく、
「なぜこの監督は失速しないのか?」
という“監督の持久力”自体も見どころとなりそうだ。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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