ホーム » NEWS » ニック・ライナーの薬物依存と、名家に生まれた葛藤とプレッシャー

ロブ・ライナーの息子ニック・ライナーとは何者か――名家の重圧と依存症の苦悩

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(左から)ロブ・ライナー、ニック・ライナー(2016年5月4日のイベントにて撮影)写真:Laura Cavanaugh/FilmMagic
(左から)ロブ・ライナー、ニック・ライナー(2016年5月4日のイベントにて撮影)写真:Laura Cavanaugh/FilmMagic
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かつてロブ・ライナーの息子ニック・ライナーと数多くのやり取りを交わしていたポッドキャスト司会者が、いまとなっては「比較的幸せだった時期」とも言える数年前の会話を振り返っている。

事件の概要と逮捕に至る経緯

俳優で映画監督のロブ・ライナーは、現地時間12月14日(日)にブレントウッドの自宅で妻ミシェルとともに死亡しているのが発見された(享年78)。警察によると、夫妻の32歳の息子ニック・ライナーは同日夜、殺人の容疑で逮捕され、保釈なしでロサンゼルス郡の拘置施設に収監されているという。この事件は現地時間12月16日(火)にロサンゼルス郡地方検事局に送致され、起訴の可否が検討される予定である。

ロブ・ライナー監督夫妻殺人事件で逮捕された、息子のニック・ライナー
ロブ・ライナー監督夫妻殺人事件で逮捕された、息子のニック・ライナー 写真:LAURA CAVANAUGH/FILMMAGIC

ニック・ライナーと映画『ビーイング・チャーリー』

ニック・ライナーは、長年にわたり薬物依存やホームレス生活を経験してきたことを公に語ってきた。彼は2015年のインディペンデント映画『ビーイング・チャーリー』で父ロブと共に仕事をしており、同作はロブ・ライナーが監督を務め、ニック自身が共同脚本を手がけた半自伝的作品だ。政治的な野心を持つ成功した俳優と、依存症からの回復を拒む息子との関係を描いている。

映画『ビーイング・チャーリー』(2015年)写真:Prime Video
映画『ビーイング・チャーリー』(2015年)写真:Prime Video

ポッドキャスト番組出演とマンハイムとの交流

同作の公開時、ニック・ライナーはニューヨークのデイビッド・マンハイムの自宅で、回復をユーモラスに語るポッドキャスト『Dopey』の収録に参加した。共演した共同司会者はクリス・オコナーで、彼は2018年に薬物の過剰摂取で亡くなっている。この収録は、マンハイムとニックにとって初めての本格的な対話であり、その後数年にわたって電話やテキストメッセージでも交流が続いた。

マンハイムが語るニックの人物像と回復の葛藤

「ニックは若く、頭が良く、ハンサムで、回復の初期段階にいた。私はロブ・ライナーの大ファンだったから、彼を番組に迎えられることが本当にうれしかった」と、マンハイムは米『ハリウッド・リポーター』に語る。静脈注射でヘロインを使用していた依存症から回復し、現在10年の回復歴(断薬歴)を持つマンハイムは、「ニックの話には共感できる部分が多かった」とも付け加えている。

▼デイビッド・マンハイム(David Manheim)

2015年のトロント国際映画祭での『ビーイング・チャーリー』の記者会見(取材対応)では、ロブとミシェル・ライナーがロサンゼルス・タイムズに対し、息子が「強制的なリハビリは自分には合わない」と訴えていたにもかかわらず、専門家の意見を優先し、本人の声に十分耳を傾けなかったことを悔やんでいる。ロブは当時、「ニックがうまくいっていないと言っても、私たちは聞かなかった」と語り、映画で親子関係を描く過程は「本当に過酷な時期もあった」と振り返っている。

(左から)ミシェル・ライナー、ロブ・ライナー、ニック・ライナー(2013年8月ロサンゼルスにて撮影)写真:Michael Buckner/Getty Images for Teen Vogue
(左から)ミシェル・ライナー、ロブ・ライナー、ニック・ライナー(2013年8月ロサンゼルスにて撮影)写真:Michael Buckner/Getty Images for Teen Vogue

マンハイムによれば、これまでにニックとは10回ほど会話を交わしたという。当時の彼は回復に苦戦しているように見えたと語る。「12ステップのプログラムに特別な関心を持っていた記憶はない」としつつも、「治療を受けた経験があり、執筆に取り組み、ニューヨークでバスケットボールをするのが好きで、スピリチュアルなものに興味を持っていた」と語っている。

性格については、特に収録時には前向きで希望に満ちていたという。「正直なところ、ニックは若者らしいエネルギーと前向きさを持っていた。僕やクリスの活動に加わりたいと思っていて、回復の過程を楽しみながら、エンタメ業界で成功する書き手になりたいと思っていた」とマンハイムは語る。

名家の重圧:父と祖父という大きすぎる存在

一方で、ニックが家族の成功にプレッシャーを感じていたことも察していたという。父ロブ・ライナー、写真家である母、そして2020年に98歳で亡くなった伝説的コメディアンの祖父カール・ライナーという家族の存在は、あまりにも大きかった。

カール・ライナー 写真:Charley Gallay/Getty Images
カール・ライナー 写真:Charley Gallay/Getty Images

「小さな視点で見れば、彼が実際に何かを作っているとき――『ビーイング・チャーリー』を書いたり、アイデアを出したりしているとき――彼はただの“一人の人間”だった」とマンハイムは言う。「しかし大きな視点で見れば、ロブ・ライナーやカール・ライナーと並べられ、しかも依存症に苦しんでいる24歳にとって、その重圧は計り知れない。24歳で、いったいだれがどれほどの成功を収められるというのか」

関係の決裂:ロブ出演打診が招いた断絶

やがて二人の関係は、ある出来事をきっかけに突然終わりを迎えることになる。最初の出演時、ニックは収録中に「父に電話しようか」と提案したが、マンハイムはその必要はないと断っていた。しかし2018年にオコナーが亡くなり、番組の将来に不安を感じたマンハイムは、ロブ・ライナーをゲストに呼べば番組の注目度が上がるのではないかと考え、その提案をニックに持ちかけた。これが彼の気分を害したようで、その出来事を境に、連絡は事実上途絶え、その後7年間でマンハイムが送ったとされる約150通のメッセージにも、ニックが返信することはなかった。

(左から)妻ミシェル、ロブ・ライナー、3人の子どもたち(一番右がニック)、2014年4月28日撮影 写真:Michael Loccisano/Getty Images
(左から)妻ミシェル、ロブ・ライナー、3人の子どもたち(一番右がニック)、2014年4月28日撮影 写真:Michael Loccisano/Getty Images

「ロブ・ライナーを番組に呼んでほしいと頼まなければよかった。少なくとも、あのタイミングではなかった」とマンハイムは悔やむ。

すでに報じられている通り、ニック・ライナーは2018年の『Dopey』出演時、アッパー系薬物(興奮剤)で錯乱状態にあった際に実家のゲストハウスを破壊したことや、「コカインによる心臓発作」を経験したと本人が語っている。

マンハイムは最後にこう語る。公平性を欠く見方かもしれないが、と前置きした上で「もしニックが本気で回復に取り組んでいたなら、時間が経つにつれて番組への関わりも増えていたと思う。回復を目指す人は、人間関係を大切にし、メッセージを伝え続けたいと思うものだからだ」

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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