マット・デイモンは本当に『アバター』出演を断ったのか――ジェームズ・キャメロンが語る「10%オファー」の真相
拡散した「デイモンの逸話」と巨額ギャラの噂
ジェームズ・キャメロンは、マット・デイモンが「『アバター』の主演を断ったことで莫大なギャラを逃した」と語った発言について、「事実はそこまで単純ではない」と明かしている。
発端となったのは、ここ2年ほどの間に広く拡散されたデイモンの発言を収めた動画だ。そこで彼は、2009年公開の大ヒット作『アバター』で主人公ジェイク・サリー役のオファーを受け、さらに作品の利益の10%という破格の条件を提示されたと説明していた(最終的にこの役はサム・ワーシントンが演じた)。
マット・デイモンが語った「10%オファー」当時の判断
「ジェームズ・キャメロンから電話があって、『アバター』の利益の10%を提示されたんだ」とデイモンは語っている。「これほど大金を断った俳優はいないと思うよ……。ただ、当時は『ボーン・アイデンティティー』シリーズの撮影の真っ最中で、途中で現場を抜ける必要があった。それでは制作陣に迷惑をかけることになるし、やりたくなかったんだ。キャメロンは本当に紳士的で、『もし君がやらなくても、この映画は成立する。スターは俳優ではなく、映画そのもの、アイデアなんだ。だからかならずうまくいく。でも、もしやるなら10%を払う』と言ってくれたんだ」
『アバター』は世界興行収入約29億ドル(約4,495億円※)を記録しており、この話が事実であれば、デイモンは続編2作を含め、数億ドル規模の収入を逃したことになる。
※2025年12月19日時点の為替レートで換算

ジェームズ・キャメロンが否定する「そもそも正式オファーはない」
しかしキャメロンは、『タイタニック』のローズの言葉を借りれば、現実は「やや異なる」と語る。

「彼に正式なオファーを出したことは一度もない」とキャメロンは米『ハリウッド・リポーター』に語った。「脚本を送ったかどうかも、正直覚えていない。おそらく送っていないと思う。その後の電話で、彼は『あなたと一緒に映画を作ることにはとても興味があるし、映画監督として尊敬している。『アバター』も魅力的に思える。でも、すでに『ボーン』シリーズの映画に出演する約束をしていて、スケジュールが完全に重なっている。だから残念だけど断らざるを得ない』と言った。しかし、役を提示したわけでも、契約の話をしたわけでもない。役柄について話す段階にすらいたっていない。単なるスケジュール上の問題だった」
さらにキャメロンはこう付け加える。「彼は『自分は出演作すべてで利益の10%をもらっている』という前提から話を膨らませている。もし彼の中で、『アバター』に出る条件がそれだったのなら、そもそも実現していなかっただろう。それは断言できる」
「だから彼はもう自分を責めなくていい。マット、大丈夫だ。何も逃してはいないから」と、冗談めかして付け加えた。
キャメロンはまた、デイモンに対する敬意も示している。先約を理由に出演を断るのは「倫理的」な判断だとし、「彼は代理人任せにせず、わざわざ自分で電話をかけてきた。とても誠実な人物だ」と語る。「マットには心から敬意を払っているし、いつか一緒に仕事ができたらうれしい。ただ、今回の件は、実際に起きたことと別の要素が混ざってしまった結果だ」
サム・ワーシントン抜擢の舞台裏
キャメロンは当時、サム・ワーシントンを主演に起用するため、スタジオと交渉を重ねたことでも知られている。オーストラリア出身のワーシントンは当時ほぼ無名で、ほかにはチャニング・テイタムらも候補に挙がっていた。だがキャメロンは、荒削りながらも強烈な存在感を放つワーシントンに惹かれ、ゾーイ・サルダナとのスクリーンテストが決め手となった。

最新作での成長――シリーズ最高の演技へ
最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、ワーシントンがシリーズ最高の演技を見せているとの評価もある。「サムの演じるキャラクターは、これまでにない試練に直面する。俳優としてのサム自身も成長したと思う。以前から生々しく、リアルで、本物だった。だが、選択の“賢さ”という点でさらに成熟した」とキャメロンは語る。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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