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『THE WIRE/ザ・ワイヤー』『IT/イット』の名脇役ジェームズ・ランソンが死去 妻が追悼コメントを発表

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James Ransone
ジェームズ・ランソン 写真:EMMA MCINTYRE/FILMMAGIC
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米ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』や映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019年)などで知られる俳優ジェームズ・ランソンが、12月19日に死去した。享年46。ロサンゼルス郡検視局により、死因は自死と発表されている。

ジェームズ・ランソン死去、妻が追悼

訃報を受け、妻のジェイミー・ランソンはインスタグラムで夫への深い愛情を込めた追悼メッセージを投稿した。ジェイミーは、家族支援のために立ち上げられたクラウドファンディングプラットフォーム「GoFundMe」のページによれば、ジェームズ・ランソンは友人の間で「スキッパー」の愛称で知られていたという。

ランソンの妻ジェイミーは、夫と写った写真とともに次のように綴った。
「これまでに千回あなたを愛してきたと言ったけれど、これからもまたあなたを愛し続ける。あなたは『お互い、もっと似た存在になるべきだ』と言っていたね。本当にその通りだった。あなたがくれた最高の贈り物――あなた自身、そしてジャックとヴァイオレットに心から感謝しています。私たちは永遠に一緒です」

「GoFundMe」のページによると、ランソンが「PJ」の愛称でも親しまれていたことが明かされている。
「ジェームズ(PJ)は、ユーモアにあふれ、人を惹きつける存在で、類まれな才能を持った人物でした。何よりも、彼は素晴らしい父親でした。妻のジェイミー、そして子どもたちのジャックとヴァイオレットは、彼の人生の中心でした。家族の絆は深く、喜びに満ち、誰の目にも明らかでした」と記されている。

ランソンはこれまでに、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』をはじめ、『ジェネレーション・キル』『タンジェリン』『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』『ブラック・フォン』など、テレビドラマからインディペンデント映画、ホラー作品まで幅広いジャンルで活躍してきた。

訃報が伝えられた後、ショーン・ベイカー監督、ラリー・クラーク監督、スパイク・リー監督ら、多くの映画人や共演者がSNSを通じて追悼の言葉を寄せており、映画・テレビ業界に大きな衝撃が広がっている。


追悼|ジェームズ・ランソンの代表作

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ドラマシリーズ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』

ドラマシリーズ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』 引用:Prime Video
『THE WIRE/ザ・ワイヤー』 引用:Prime Video

2002年〜2008年にHBOにて放送されたドラマシリーズ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、米メリーランド州ボルチモアを舞台に、麻薬犯罪を起点として警察、ギャング、港湾労働者、政治家、教育現場、メディアといった社会制度の裏側をシーズンごとに掘り下げていく群像劇。派手な演出や勧善懲悪を排し、組織や制度そのものが人々を追い詰めていく現実をリアルに描写した点で、テレビ史に残る傑作と評価されている。

ジェームズ・ランソンはシーズン2に登場するジギー・ソボトカ役を演じた。港湾労働者組合の幹部フランク・ソボトカの息子であるジギーは、父や周囲から軽んじられ、劣等感と承認欲求を抱えながら生きる若者だ。軽薄で衝動的な振る舞いの裏には、自分の居場所を見つけられない不安と孤独がある。違法取引に手を染めた末に破滅へと向かうジギーの悲劇は、システムに飲み込まれていく個人の象徴として強烈な印象を残した。ランソンはその危うさと人間的な弱さを繊細に体現し、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』屈指の忘れがたいキャラクターを生み出している。

映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』より
映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』より 写真:WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019年)は、スティーヴン・キングの小説『IT』を原作とする二部作の完結編。27年ごとに邪悪な存在“それ(ペニーワイズ)”が出現する町・デリーを舞台に、かつて恐怖と対峙した「ルーザーズ・クラブ」のメンバーが大人になって再集結する。成功や平穏な生活を手に入れていた彼らは、過去の記憶と恐怖を封じ込めて生きていたが、“それ”の復活により再び町へ呼び戻される。失われた記憶を取り戻しながら、それぞれの心の傷や弱さと向き合い、恐怖の象徴であるペニーワイズに最後の決戦を挑む姿が描かれる。

ジェームズ・ランソンが演じたのは、大人になったエディ・キャスプブラク。子ども時代から過保護な母親に支配され、虚弱体質だと思い込まされてきた人物で、不安や恐怖に常に縛られている。一方で、仲間を守ろうとする勇気と優しさも併せ持つ存在だ。ランソンは神経質さとユーモア、そして内面に秘めた強さを巧みに表現し、恐怖を乗り越えようとするエディの成長と切なさを印象的に体現した。彼の演技は、物語に人間的な深みと感情的な重みを与えている。

映画『タンジェリン』

※プライム会員は¥0

映画『タンジェリン』 引用:Prime Video
映画『タンジェリン』 引用:Prime Video

 

映画『タンジェリン』(2015年)は、ロサンゼルス・ハリウッドの街を舞台に、トランスジェンダーのセックスワーカー、シンディとアレクサンドラの1日を追ったインディペンデント映画である。クリスマスイブの朝、刑務所から出所したばかりのシンディは、恋人でありヒモでもあるチェスターが浮気していると聞かされ、怒りに任せて街へ飛び出す。一方、歌手デビューを夢見るアレクサンドラも、自身のショーを控えながら現実の厳しさに直面していく。iPhoneで全編撮影された映像は、路上の熱気や混沌を生々しく捉え、社会の周縁で生きる人々の連帯と孤独をユーモアと切なさを交えながら描き出す。

ジェームズ・ランソンが演じたチェスターは、アレクサンドラの恋人であり、彼女を管理する立場にある白人男性だ。軽薄で自己中心的、場当たり的な行動を繰り返す一方、完全な悪役としては描かれず、どこか情けなく未熟な人物として表現されている。ランソンは、街に生きる男のだらしなさや弱さをリアルに体現し、物語に不穏さと人間臭い滑稽さをもたらした。チェスターの存在は、主人公たちの怒りや葛藤を浮き彫りにする重要な役割を果たしている。

ドラマシリーズ『ジェネレーション・キル』

ドラマシリーズ『ジェネレーション・キル』 引用:Prime Video
『ジェネレーション・キル』 引用:Prime Video

HBOのドラマ『ジェネレーション・キル』(2008年)は、米軍によるイラク戦争開戦直後の侵攻作戦を、最前線に投入された海兵隊偵察部隊の視点から描いた戦争ドラマである。原作は、従軍記者エヴァン・ライトによるノンフィクション。英雄譚や愛国的高揚感を強調するのではなく、混乱した指揮系統、情報不足、現地住民との緊張関係、兵士たちの日常的な不安や皮肉をリアルかつ冷静に映し出す。過酷な状況下で任務を遂行する若い兵士たちの姿を通じて、現代戦争の現実と矛盾を浮き彫りにした作品として高く評価されている。

ジェームズ・ランソンが演じたのは、偵察部隊に所属する伍長ジョシュ・レイ・パーソン。粗野で下品な冗談を飛ばす一方、仲間思いで人間味あふれる兵士だ。戦場の緊張を笑いで紛らわせながらも、銃撃戦や死と隣り合わせの現実に直面する中で、恐怖や虚無感を次第に露わにしていく。ランソンは、軽口の裏に潜む不安や脆さを巧みに表現し、戦争に翻弄される若者の等身大の姿を体現。作品全体に強いリアリティと感情的な厚みを与える重要な役どころとなっている。

映画『ブラック・フォン』

※プライム会員は¥0

映画『ブラック・フォン』 引用:Prime Video

映画『ブラック・フォン』(2021年/日本公開2022年)は、作家ジョー・ヒルの短編を原作にしたホラー・スリラー。1970年代の米コロラド州の町で、少年誘拐事件が相次ぐ中、内気な少年フィニーが「グラバー」と呼ばれる謎の男に拉致・監禁される。地下室に閉じ込められたフィニーの前には、切断された黒電話が置かれていた。鳴るはずのないその電話から聞こえてくるのは、過去に殺された被害者たちの声。彼らの助言を頼りに、フィニーは恐怖と知恵を武器に脱出を試みる。一方、妹のグウェンは予知夢に導かれ、兄の居場所へと近づいていく。閉塞感と緊張感を積み重ね、子どもの視点から“恐怖に立ち向かう力”を描いた作品である。

ジェームズ・ランソンが演じたのは、誘拐犯グラバーの兄マックス。酒に溺れ、どこか投げやりで粗暴な性格ながら、弟の異変に薄々気づきつつも真実に踏み込めない男だ。地下室の上階に住みながら、恐怖の核心に手が届かない存在として物語に不穏な緊張をもたらす。ランソンは、無力感と猜疑心に揺れる人物像をリアルに演じ、物語の現実味と後味の苦さを強めている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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