A24『シビル・ウォー』レビュー:近未来のアメリカを描く“曖昧な”ディストピア映画

『シビル・ウォー(原題)』写真: A24
『シビル・ウォー(原題)』写真: A24

アレックス・ガーランド監督最新作『シビル・ウォー / Civil War(原題)』は、アメリカ人の心理に潜む居心地の悪い問いに切り込んでいる。もしアメリカを引き裂いている深い政治的・社会的分断が最終的に混沌と化したらどうなるのか?もし思想、文化、価値観の戦いが、国が本格的な紛争に陥るほどのレベルにまで激化したらどうなるのか?

これらの恐ろしい問いは、今の私たちがすでに崖っぷちに立っているように感じられるだけに、より一層現実味を帯びている。アメリカがイデオロギーと知見の戦いに閉じ込められているような状況で、わずか2年前の世論調査で40%以上のアメリカ人が今後10年以内に内戦の可能性を恐れていたのも不思議ではない。

しかし『シビル・ウォー』は、私たちの注意を引くものの、その核心にある重要な問いに答えることができていない。どうしてこんな状況になったのか?本作は社会の崩壊を生々しく描いているが、その根本的な原因には触れていない。

確かに、この映画は間違いなく強烈だ。冒頭から最後まで、観客を釘付けにする。しかし、この想像上の未来の恐怖を目の当たりにしても、その背景にある理由は不明なため観客は物足りなさを感じてしまう。

ジャーナリストの4人が戦争によって引き裂かれた風景を駆け抜ける中、彼らの真実に対する探求は称賛に値する。しかし彼らは、混乱の中で紛争の根源についてほとんど洞察を提供していない。

ジェシー・プレモンスがアメリカ人であることの本質を問う感動的なシーンは、転換点として機能するはずだが、紛争の原動力となっている動機を探るには不十分だ。移民、人種、水不足など、さまざまな問題を示唆しているが、物語は曖昧になっている。

イデオロギーがはっきりと定義されている歴史的な内戦とは対照的に、『シビル・ウォー』はキャラクターと動機が複雑に絡み合うタペストリーを提示している。この多様性は新鮮な一方で、観客はより筋の通った混乱の真相を求めているのだ。

結局のところ、『シビル・ウォー』はその可能性を十分に発揮できていない。緊張と不確実性が高まっている現代に、根本的な問題に取り組まないことで、共感を呼ぶのに苦労し、チャンスを逃したように感じられる。問題を明確に理解せずして、どうやって解決策を見出すことができるのだろうか?

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※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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