TikTok:エンターテインメント産業を永遠に変えた理由
2013年、Netflixのテッド・サランドスCEOは自社のコンテンツには「中毒性」がある、と誇らしげに語った。しかし、その3年後に登場したTikTokは、Netflixが確立した「見続けたくなる」アルゴリズムの概念を根本から覆すことになる。数時間に及ぶドラマシリーズの代わりに、1時間で80本もの短編動画を提供する新しい形式を生み出し、視聴習慣を一変させた。
TikTokは、ハリウッド型コンテンツ制作の常識を根底から変革した。従来の長編で洗練された中央集権的なストーリーテリングは、短編で自由度の高い分散型の形式へと移行した。プロフェッショナルによる高額なコンテンツ制作に頼る必要もなくなり、ユーザー自身が主導する低コストな制作モデルが確立された。その結果、米国内で約1億7000万人という、Netflixの2倍もの利用者を獲得するに至った。
視聴者の脳を「再配線」
短い動画を観るという文化がすぐに当たり前のものとなった。しかし、TikTokの影響は単なる文化的な変革にとどまらない。fMRI検査を用いた研究により、頻繁な利用が脳の注意力に関連する部分に影響を与え、実際に注意力を低下させることが判明している。この変化は若年層に限らず、全世代の視聴習慣を根本から変えた。
さらに重要なのは、かつての受動的な視聴者を能動的なクリエイターへと転換させた点である。エンターテインメントの未来も、TikTokの影響を強く受けて変容していくだろう。AIによるパーソナライズされたストーリーテリングが主流となり、視聴者個人の好みに合わせてカスタマイズ可能なビデオコンテンツが台頭すると予測される。従来型のテレビ番組やシリーズは完全に消滅することはないものの、その影響力は徐々に限定的になっていくと考えられる。
TikTokの米国での存続は政治的な要因により不透明な状況が続いている。しかし、TikTokが確立したエンターテインメントの新しい形式は、もはや後戻りできない変革をもたらした。そして、この変革の波は今後も進化を続け、デジタルコンテンツの消費形態をさらに大きく変えていくことだろう。
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。
【関連記事】
- TikTok、米国でサービス停止:新法成立に伴いアプリが停止
- アメリカ議会でTikTokに対する懸念が高まる 国家安全保障の観点から外資系企業の情報テクノロジーを規制する法案を提出
- 【3ヶ月無料】Amazon Music Unlimited|キャンペーン後、勝手に請求されない解約方法も解説
- アジアのストリーミング市場は 2029 年までに 40% 成長、 890 億ドルに達する予測に
- Netflix2025年1月の配信作品:キャメロン・ディアス復帰作『バック・イン・アクション』、『ナイト・エージェント』シーズン2ほか