【ネタバレ解説】Netflix『セイレーンの誘惑』ラストの意味は?キャスト&製作陣が明かす

[※本記事には、Netflix『セイレーンの誘惑』の重大なネタバレが含まれています。]
Netflixシリーズ『セイレーンの誘惑』に出演するメーガン・ファヒー&ミリー・アルコック、モリー・スミス・メッツラーら製作陣が米『ハリウッド・リポーター』に対し、あの“衝撃のラスト”について思いを明かした。
『セイレーンの誘惑』は、病気の父親の面倒を一人で見ているデヴォン(演:メーガン・ファヒー)が“富裕層が集まる島”に向かい、社交界の著名人ミカエラ(演:ジュリアン・ムーア)のアシスタントとして働く妹シモーヌ(演:ミリー・アルコック)を故郷に連れ戻そうとする物語だ。
◆最終話に待ち受ける予想外のラスト
最終話となる5話では、ミカエラが億万長者の夫ピーター(演:ケヴィン・ベーコン)とシモーヌのキス写真を発見した後に彼女を解雇。シモーヌがピーターの新たなパートナーとして君臨し、ピーターもまた最初からシモーヌのことを狙っていたという衝撃のラストが描かれた。デヴォンは一人で故郷に戻り、ミカエラも島を離れ事態を収拾することになる。
アルコックは、この結末について「最終的には、シモーヌを彼女が認識しているよりもずっと可能性を秘めた壊れた若い女の子として見てほしかったのです。彼女があの道を選んだことは、経済的安定を与えてくれる男性を必要としているというマイナスのイメージを強くしています。あんな最後になるなんて、物凄く残念ですね」と率直に語る。
姉デヴォン役のファヒーも、「本当に驚きました」としつつ、「でもよく考えると、シモーヌが故郷に戻らないためには手段を選ばないということは頷けます。彼女たちがそのような選択をしたことに心は痛みますが。一方で、彼女たちがこういった道を選んだことは筋が通っています」と話す。
製作総指揮のニコール・カッセルによると、「シモーヌに嫌悪感を覚えてしまうこと」こそドラマの狙いだったという。
「女性は、家庭の破壊者として責められます。では、男性の責任は?歴史的に見ても、関係を壊した女性にばかり悪口が飛ばされるのです。しかしピーターは、自分よりもはるかに若い女性を狙い、将来的に子どもを持てるかもしれません。女性が卵巣のせいで叶えられないものを、手に入れることができるのです」
またショーランナーのメッツラーは、「ギリシャ神話の時代からある物語です。女性がこの役回りを引き受け、ピーターのような男性はずっとピーターのような男性であり続けます。まさに現実でも起こっていることなのです」と伝えた。
◆シモーヌの選択の理由は?
ドラマでは、ファヒー演じるデヴォンがシモーヌのことを「過去から目をそらしているトラウマを抱えた女の子」と表現し、島から救出しようとする。2人は過去に母親を喪い、父親は育児を放棄していた。ファヒーとアルコックは、2人の葛藤はどちらも正しいと口をそろえる。
「シモーヌにとっては、これが生き残るための戦術なのです」とアルコックは語る。「ロースクールを退学し、無一文の彼女は一からスタートを切りました。これが以前の状態から脱するための出口であり、あの立場を手に入れるためには手段を選ばずに戦うでしょう」
「表面的には、一貫性に欠けたシモーヌは嫌われやすい人物です。彼女は親が与えてくれなかった安心感を得られ、価値ある存在として認識される環境に身を置くことによって、自分なりに反抗しています。シモーヌはいまだに、自分を見失ったままの哀れな少女なのです」
ファヒーは、妹を家に連れ戻し、父親の世話を手伝わせようとするデヴォンの必死さを認める一方で、デヴォンの利己的な面にも言及する。「デヴォンは、自分の望みを優先するあまり、妹の望みを認めようとしません。現実を受け入れることを拒否する態度は、彼女が妹を最悪な状況へと無理やり連れ戻そうとした行動の負の側面の一部です」
◆議論を呼ぶ展開に…製作陣の意図は
一方、なぜシモーヌが島にとどまり、ミカエラに取って代わったのかという疑問に対し、製作総指揮のカッセルは彼女の過去が鍵であると強調する。家族や帰る場所、そして仕事も失ったいま、シモーヌは何かを選ばざるを得なかったのだ。
「もしあの背景がなければ、シモーヌはただの自己中心的で最低な女性に見えたでしょう。でも私は、彼女がもっとも正直な姿を見せているとも感じています。シモーヌはミカエラの補佐として素晴らしい働きをしましたが、その機会が失われたとき、私は彼女の選んだ道を理解します。想像を絶する過去を抱え、それから抜け出す道がこれだったとすれば、彼女を憎みたくなる一方で理解せざるを得ないという、とても居心地の悪い気持ちになります。恐ろしい過去から逃げ続ける人生ならば、女性としてその気持ちは理解できますね」
ショーランナーのメッツラーも、この展開について議論が起こるだろうと承知している。「視聴者はシモーヌを悪役だと思うだろうし、登場人物みんなが悪役だと感じる人も出てくるでしょう。私はただ、シモーヌの行動を理解しようとしてみてほしいです。もし自分が彼女の立場で、過去のトラウマとへと連れ戻されるフェリーが今まさに出ようとしていたとしたら、あなたはどうするのか?その問いについて、みなさんが話し合ってくれることを願っています」
◆姉妹の今後とラストシーンの意味
一方、デヴォンは自身の依存症と過去のトラウマに向き合うことで、新たな理解を得た。ミカエラとの最後の会話で、デヴォンは「あなたのことを怪物だとは思っていない」と伝える。ミカエラもまた、同じ言葉をシモーヌに向けていた。こうして2人は互いに理解し合い、新たな主体性を得たまま、シモーヌと家に別れを告げる。
「この週末の出来事を通じて、デヴォンとミカエラは予想もしなかったほど似た者同士となります。彼女たちは多くを共有していて、最後には互いを澄んだ目で見つめ合えるようになったのです」とメッツラーは語る。
ファヒーは、自身が演じるキャラクターについて次のように話している。「デヴォンは、自分自身に対する強い確信を持ち、どこにいても臆することなく“なりたい自分”であろうとする人物のように見えます。しかし物語が進むにつれて、それが一種の仮面であり、他人を近づけすぎないようにするためのいくつもの手段を使っていることが明らかになるのです」
デヴォンとミカエラが去ったあと、物語はシモーヌが崖の上から海を見つめる場面で幕を閉じる。その表情は読み取りにくいが、ひとつだけ確かなのは、いまの彼女は自らの必要に従って生きる道を歩んでいるということだ。
「ラストシーンの崖の上に立つシモーヌの様々なテイクを確認しましたが、最終的に採用したのは、かすかにモナ・リザのようなほほえみを浮かべているバージョンでした」とメッツラーは語る。「そのカットを選んだ理由は、彼女がある意味で勝者となったように見えるからです。彼女はセイレーンであり、その声はいま力強く響きわたっています」
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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