『ザ・ピット』『ブリリアント・マインズ』のショーランナーが語る医療ドラマ復活の理由――「いま人々には希望が必要だ」

医療ドラマが再び注目を集めている。2024〜25年のエミー賞シーズンでは、『ブリリアント・マインズ(原題)』『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』『ワトソン(原題)』『パルス』などの新作が話題を呼んでいる。
ショーランナーたちは、その背景に「希望への欲求」があると語る。『ザ・ピット』のR・スコット・ゲミルは「人々はいま、これまで以上に希望を必要としている」とし、『ワトソン』のクレイグ・スウィーニーも「ジャンルそのものにポジティブさが詰まっている」と分析した。
『ブリリアント・マインズ (原題)』(NBC)
写真: Rafy/NBC
神経科医オリヴァー・ウルフ(演:ザカリー・クイント)が活躍する本作は、オリヴァー・サックスの著書『妻を帽子とまちがえた男』および『火星の人類学者』に着想を得ている。ショーランナーのマイケル・グラッシは「COVID後の医療や孤独、メンタルヘルス危機といった現代的なテーマに切り込める」と語る。また、脳科学に特化した視点がジャンル内でもユニークな切り口となっている。
※日本での配信情報:6月16日現在、日本で利用可能な配信サービスはなし。
『ワトソン(原題)』(Paramount+)
写真:Colin Bentley/CBS
舞台はピッツバーグ。母が勤務していた病院で育ったというクレイグ・スウィーニーにとって、この街と医療の現場は個人的な原体験とつながっている。本作には、モリス・チェスナット、イヴ・ハーロウ、ピーター・マーク・ケンドールが出演する。医療ドラマに推理的要素を掛け合わせ、『Dr. HOUSE』へのオマージュも込めた作品である。最先端科学の境界を描く独創的な展開が魅力だ。
※日本での配信情報:6月16日現在、日本で利用可能な配信サービスはなし。
『パルス』(Netflix)
写真: Anna Kooris/Netflix
Netflix初となる、英語オリジナル医療ドラマ。高度救命救急センターを舞台に、セクハラ告発の余波とハリケーン被害という二重の危機に直面する研修医たちを描く。主演はウィラ・フィッツジェラルド、コリン・ウッデル、ジャスティナ・マシャド。ドラマ『LOST』で知られるカールトン・キューズが、本作の製作総指揮を務めている。災害時の医療という切り口は、彼の前作『メモリアル病院の5日間』(Apple TV+)にも通じる。
※日本での配信情報:Netflixで独占配信中
『セント・デニス・メディカル (原題)』(NBC)
写真:NBC
本作はいわゆる医療ドラマとは異なり、医師やナースたちの過重労働と、病院の財政難という実際の医療現場で起こっている問題を風刺するコメディ作品だ。出演はウェンディ・マクレンドン=コーヴィ、デヴィッド・アラン・グリア、アリソン・トルマン。ショーランナーのエリック・レジンは、医療現場が財務重視で疲弊する中でも、医療従事者が限界を超えて支えている現状を指摘し、「今こそ人々はかつてないほど病んでいる」と語った。『ザ・ピット』と同様に、制度の矛盾がテーマとなっている。
※日本での配信情報:6月16日現在、日本で利用可能な配信サービスはなし。
『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』(Max)
写真: Courtesy of Max
ノア・ワイリー演じるロビー医師を中心に、資金も人手も不足した救急病棟の1シフト15時間を15話で描くリアル志向の医療ドラマ。タイトルは混沌としたERの通称「ピット」と、舞台であるピッツバーグのダブルミーニングとなっている。ピッツバーグは救急医療や路上医療の起源でもあり、ショーランナーのR・スコット・ゲミルは『M★A★S★H マッシュ』(1972-1983)をインスピレーション源として挙げている。
※日本での配信情報:U-NEXTで独占配信中
『ドクター・オデッセイ』(ABC)
写真:Tina Thorpe/Disney
メガプロデューサーのライアン・マーフィーが、ジョン・ロビン・バイツ、ジョー・ベイケンと共に手がけた。本作は、豪華客船を舞台にした異色の医療ドラマだ。出演はジョシュア・ジャクソン、フィリッパ・スー、ショーン・ティール、ドン・ジョンソン。直近4年間で、ABCで最も視聴されたドラマデビュー作となった。イギリス出身でコメディアン・俳優のジョン・オリバーは「セクシーな船上のER」「サメのいるザ・ピット」と評している。
※日本での配信情報:Disney+で配信中
『DOC-わたしを思い出す日まで-』(Fox)
イタリアの人気シリーズ『DOC(ドック) あすへのカルテ』が原作。主人公エイミー・ラーセン医師(演:モリー・パーカー)は事故で12年分の記憶を失い、離婚など人生の大きな出来事を思い出せないまま、医療の現場に復帰しようとする。ショーランナーのバービー・クリグマンは「警察や裁判所に行かない人生でも、病院に行かない人はいない」と語り、医療ドラマの普遍性を強調している。
※日本での配信情報:6月16日現在、日本で利用可能な配信サービスはなし。
まとめ
2020年代半ば、視聴者が医療ドラマに求めているのは「解決」と「希望」である。多様なフォーマットとテーマで描かれる新たな作品群は、社会の変化とシンクロしながら進化を続けている。
※本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。
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