プライムビデオ『スパイダー・ノワール』米レビュー│“ニコラス・ケイジ節”が光る異色スパイダーマン作品
大恐慌時代のニューヨークを舞台にしたAmazon MGMスタジオ制作のシリーズ『スパイダー・ノワール』は、スパイダーマンお馴染みのアクションと、ハードボイルドの要素を組み合わせた異色作だ。
幻に終わったティム・バートン監督版『スーパーマン』から約30年、さらに『ザ・フラッシュ』(2023年)でのカメオ出演から3年を経て、ニコラス・ケイジが、ついに本格的なスーパーヒーロー作品の主演を務めることになった。
本記事では、米『ハリウッド・リポーター』による『スパイダー・ノワール』レビューをお届けする。

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スパイダーマン×ハードボイルド!ニコラス・ケイジ主演『スパイダー・ノワール』誕生
全8話で構成される『スパイダー・ノワール』は、ニコラス・ケイジの近年のテレビ出演作の中でも、特に存在感のある一本となっている。
ただし、全体としては好みが分かれそうな仕上がりだ。シーズン1には続編を示唆する余地が残されているが、インパクトのあるクリフハンガーにはなっていない。一方で、100分前後の映画として再構成すれば、より引き締まった作品になったのではないかと思われる。
『スパイダー・ノワール』には魅力的なキャストが揃っており、演技面でも見どころが多い。特にケイジは、後半に進むにつれ独特の個性をより前面に押し出していき、その存在感が際立っていく。ただ、全8話の中にはややテンポにばらつきを感じる部分もあり、もう少しコンパクトにまとめても良かったかもしれない。
オーレン・ウジエルがテレビシリーズとして企画した『スパイダー・ノワール』は、クラシックな探偵ドラマへのオマージュ色が強い。実際、本作は“スパイダー・ハードボイルド”と呼びたくなるような雰囲気だ。「蜘蛛の糸を操る探偵」というユニークな設定はあるものの、物語自体は比較的オーソドックスな展開を辿っていく。

ケイジが演じるのは、大恐慌下のニューヨークで私立探偵として暮らすベン・ライリー。第一次世界大戦の記憶と、愛する女性を失った悲しみを抱えながら生きている。彼は、献身的なアシスタントのジャネット(演:カレン・ロドリゲス)に満足な給料も払えないほど困窮している。
そんなベンは、戦時中のある出来事をきっかけに、スパイダーマンの能力を得ていた。かつては自警ヒーロー「ザ・スパイダー」として人々から親しまれていたが、現在はフェドーラ帽とトレンチコートを身にまとい、探偵業に身を置いている。スパイダーマンの能力も、ドアをノックしようとする人の存在を察知する程度に留まっている。
ある依頼の最中、ベンは自分と似た能力を持つ若者と遭遇する。さらに別件では、犯罪組織のボス、シルバーメイン(演:ブレンダン・グリーソン)と関係を持つナイトクラブ歌手キャット・ハーディ(演:リー・ジュン・リー)と知り合う。シルバーメインは、市長(演:マイケル・コストロフ)と対立を深める危険なギャングだ。
やがてベン、ジャネット、そして記者でありベンの友人でもあるロビー(演:ラモーン・モリス)は、シルバーメインとその右腕フリント・マルコ(演:ジャック・ヒューストン)、さらにはキャットを巡る陰謀へと巻き込まれていく。そして、再び「ザ・スパイダー」が必要とされることになる。
“ニコラス・ケイジ節”が炸裂!往年のノワール映画をオマージュ
作中でベンは、市長について「あいつが共和党なのか民主党なのか、未だによくわからない」と口にする。このセリフは、腐敗した現在の米政治を皮肉っているようにも聞こえる。一方で、『スパイダー・ノワール』の世界観描写がやや曖昧に終わっていることも感じさせる。
『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)のファンなら気づいたかもしれないが、本作は並行世界を舞台にしている(Amazonは両作に直接的な繋がりはないと説明している)。ただ、『スパイダー・ノワール』の世界観は比較的シンプルだ。
実際、20世紀初頭のマンハッタンという設定をより深く活かしたドラマを期待する視聴者には、やや物足りなく感じる部分もあるかもしれない。
作品を通して強く印象に残るのは、やはりケイジの存在感だろう。一方で、黒人ジャーナリストのロビーや、アジア系女性であるキャットといったキャラクター設定については、時代背景との関連が強調されているわけではない。全体としては、雨に濡れた路地やトレンチコート、フェドーラ帽といった、ノワール映画に特有のビジュアルを重視している印象が強い。

本作でケイジが見せた演技は魅力的だが、賛否が分かれるかもしれない。前半では抑え気味の演技を見せているが、第5話あたりから一気に“ニコラス・ケイジらしさ”が全開になる。ハンフリー・ボガート、ジェームズ・キャグニー、エドワード・G・ロビンソンを思わせる古典的スター像を独自にミックスしながら、徐々にスパイダーマンの高い身体性も加わっていく。
特に、第7話の酔った状態での格闘シーンは、まさに“ケイジ節”全開だ。この大胆な変化は好みが分かれるかもしれないが、作品後半に勢いを与えていることは間違いない。
前半では、ロビーとジャネットは親しみやすいキャラクターとして描かれ、モリスとロドリゲスが安定感のある演技を見せている。また、シルバーメインは存在感こそ抜群だが、キャラクターとしての掘り下げは比較的シンプルにとどまっている。彼の重厚な風貌はモノクロ映像と非常によく合っているだけに、さらに見せ場が欲しかったと思わせる。
脚本の面では、一部のキャラクターの描写をもっと掘り下げてほしい印象だ。キャットは非常に魅力的に映し出されているが、人物像そのものはミステリアスなままに終わる。マルコも同様で、ヒューストンは苦悩を抱えた男を熱演しているものの、その背景の説明は控えめだ。

その一方で、助演陣には印象的な存在も多かった。エイブラハム・ポプーラ演じるロニー・リンカーンの威圧感や、アンドリュー・ルイス・コールドウェル演じるダーク・レイドンの大仰な芝居は、作品に独特の味わいを加えている。
“モノクロ”と“カラー”を選ぶ映像体験――硬派な映像美が際立つ
本作の大きな特徴は、「モノクロ版」と「カラー版」の両方で配信される点だ。ダラン・ティアナンとピーター・デミングによるモノクロ撮影は、非常に印象的である。ただ、撮影監督や演出陣が、ノワール映画へのオマージュとしてモノクロ版を撮影したのであれば、カラー版にはやや方向性の違いも感じられる。
反対に、最初からカラー映像が前提で撮影された場合、単純なグレースケール処理だけで“ノワール映画の質感”を再現するのは難しい。モノクロとカラーの両立を目指したことで、結果として、どちらにも振り切れていない印象が残る。
筆者は全8話をモノクロ版で視聴した。暗い路地、漂う煙、キャットがステージに立つ場面の光の演出など、ビジュアルには明確な意図を感じた。『マルタの鷹』(1941年)や『上海から来た女』(1947年)を思わせる構図も多く、後半のアクションシーンや回想シーン、幻覚の描写などは特に美しい。
一方、カラー版ではCG表現がより目立ち、場面によっては映像の統一感に欠ける印象も受けた。ただし、パイロット版でロビーが着ているこげ茶色のスーツなどは、カラー映像の方がより映えていた。
結論として、『スパイダー・ノワール』はモノクロ版での視聴をおすすめしたい。KIRBYによる007風楽曲「Saving Grace」に乗せたオープニングクレジットとも相性が良い。
『スパイダー・ノワール』のユニークかつコミカルなスタイルは、本作が“楽しめるエンターテインメント”であることを思い出させてくれる。実際、随所に魅力的な瞬間がある作品だ。ただ、その面白さが本格的に表れてくるのはシリーズの後半である。ぜひそこまで辛抱強く視聴を続けてほしい。
『スパイダー・ノワール』は、プライムビデオにて5月27日(水)より独占配信開始。
▼Amazonプライムビデオでは、プライム会員なら1万作品以上の人気映画やテレビ番組が見放題、さらに新作映画や最新ドラマなどを1作品からオンラインでレンタル、または購入することが可能!
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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