ジャニー喜多川氏の性加害問題: 478人が被害を報告、社名変更に非難の声も
日本のジャニーズ事務所が2日、東京で記者会見を開き、社名の変更や会社を2つに分割することについて発表した。
ジャニーズ事務所は「SMILE-UP.」に社名変更し、何百人もの性被害者への補償のみを行う。新設するエージェント会社で現在の所属タレントをマネージメントし、ファンクラブ会員から社名を公募する予定だという。
これまでジャニーズ事務所は何十年にもわたり事態を隠ぺいしてきた。国内外からの清算へのプレッシャーが高まるなか、今回の動きに至った。
ジャニーズ事務所設立の「外部専門家による再発防止特別チーム」によると、9月30日時点で478名が被害を報告し、325名が補償を求めているという。中には、小学生の頃から100回以上にわたり被害を受けたと公表した被害者もいる。
ジャニーズ事務所の東山紀之社長は会見で、「被害者の方々に寄り添う枠組みをしっかりと作り出していきたい」と語った。
一方で、2日に公開された計画に対し、厳しい見方をする「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(JSAVA)メンバーもいる。1990年代に当時18歳で被害を受けたという木村伸一氏は、事務所が単に新たな組織を作るのは適切でないとした。
東京新聞に対し、木村氏は「所属タレントは全く別の会社に移るべき。ジャニーズのエンタメ活動は完全に廃止すべきです」とコメント。
また、社名変更を非難する声も上がっている。JSAVAメンバーのイズミ氏は、「補償を行う会社に“SMILE-UP.”と付けることは、葬式に白を着ていけと求めるようなもの。被害者を嘲笑している」と見解を示した。
ジャニーズ事務所は9月7日、記者会見の場で初めて喜多川氏による性的虐待を認め、謝罪した。藤島ジュリー景子氏に代わり東山氏が社長に就任し、当日に社名変更について否定すると瞬く間に非難を浴びた。
東山社長自身も、少年への性的虐待疑惑に直面した。9月、自身への告発について問われると「はっきりと覚えていない。そういうことがあったかもしれないし、なかったかもしれない。記憶が曖昧で」とコメントした。
9月の会見後、アサヒグループホールディングス、日産など大手企業がCMに所属タレントを今後起用しない意向を示した。また、NHKは事務所が補償を行うまで、所属タレントの出演依頼は行わないと伝えた。
2日の記者会見で東山社長ははっきりと自身の性的虐待疑惑を否定しつつ、若い頃にパワハラを行っていたかもしれないと付け加えた。さらに、9月の会見での会社の対応は不適切だったと認めた。
東山社長は「内向きだと批判を受けた。以来、新たなスタートに必要なことをじっくり考えてきた」と述べた。
東山社長によると、事務所は11月から補償を開始するという。すべての被害者に対し補償を行ったのち、「SMILE-UP.」は廃業する予定だ。
2019年に死去した喜多川氏は、日本の音楽業界において男性グループのモデルを築いたパイオニアとされる人物。権力を利用して自身や会社についての報道を意のままにし、東京の大手メディアやエンタメ複合企業を操っていたことで知られている。
何十年にもわたり、喜多川氏が男性を性的に搾取しているという話は日本のエンタメ業界では公然の秘密とみなされていた。最初に疑惑が持ち上がったのは1965年。4人の少年に対し性的な誘いをかけたとして、その親たちが喜多川氏を訴えようとした。1980~90年代にかけては、経験や目撃証言を含んだ元所属タレントによる著書が出版された。その後1999年、地元週刊誌が複数の被害者による証言を詳しく報じた。喜多川氏は出版社を名誉棄損で訴えを起こし勝訴。しかし後に判決は覆され、東京高裁は性的虐待疑惑は“概ね事実”と認めた。それにもかかわらず、日本のメディアは沈黙を続けていた。
日本のメディアは喜多川氏の疑惑を追ったBBCのドキュメンタリー『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』が放映されるまで、この問題を報じてこなかった。
3月にBBC制作のドキュメンタリーが放映されたのち、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏が週刊文春のインタビューに応じ、外国特派員協会で記者会見に臨んだ。
オカモト氏は、2012年に15歳で事務所入りし、その後4年間で15~20回にわたって喜多川氏から性的虐待を受けたという。さらに、喜多川氏が3人のジャニーズJr.に性的暴行を加えているさまを目撃したと語った。
現地報道によると、なぜ少年たちは虐待に耐えたのかと問われたオカモト氏は「そもそも、ジャニーズでデビューできる子たちはジャニーさんのお気に入りなんです。ジャニーさんの鶴の一声ですべてが決定することを誰もが知っていました」と回答。また、他のジャニーズJr.の少年たちから「(喜多川氏)のマンションに行かなければ、スターにはなれない」と聞いていたそうだ。
8月、国連人権理事会は状況を調査し報告書を発表。喜多川氏が何百人もの男性を虐待し、事務所は犯罪の責任を取らなかったと結論付けた。その後、さらに被害を告白する声が相次いだ。(ジャニーズ性加害問題当事者の会は、性被害告発者のリストを公開している。)
同時期にジャニーズの元ベテランスタッフが週刊文春に対し、状況について「アイドル帝国の社長が性犯罪者であったということ以上の事件」と語った。 「デビュー過程の少年たちをグルーミングするためだけにアイドル帝国を作り出した性的虐待者です」
※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。