Apple TV+『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』レビュー

Apple TV+『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』
Apple TV+『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』 写真: COURTESY OF APPLE TV+

「私の人生は後進的だ」ーモーガン・ネヴィル監督のApple TV+『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』で、スティーヴ・マーティンはこうつぶやいた。

マーティンが言いたいのは、ベンジャミン・バトン的な異常さではなく、30代で不安にさいなまれていた自分が、70代で満足と幸福を手に入れたという主張からきている。

「年齢とともに知恵と平和を見出す」ことは理想的であり、珍しいことではないが、マーティンの主張には真実味がある。伝記映画は、複雑な人生の矛盾を調和させるようなおなじみの弧を描く傾向があるが、マーティンの伝記にはそのような弧はない。

ネヴィルのアプローチは、マーティンの人生を二分することである。

98分の「過去」では、マーティンのコミカルなスタイルの原点に注目し、ステージ上での前代未聞の成功への迂回路をたどる。その後、マーティンはスタンダップから足を洗った。

95分の「現在」は、マーティンの人生、今に迫る。映画スターとして、夫・父親として、さらにマーティン・ショートとの愛すべき漫才コンビの一員としてステージに戻ってきたマーティンを検証しながら、スタンドアップ後のキャリアと彼の個人的な成熟を追う。

『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』の2つのエピソードは、ネヴィルのアプローチを正当化するような方法でイメージを調和している。が、それらが分離していることで、この野心的なプロジェクトの大きなフラストレーションが生じている。「過去」 はあまり良くなく、「現在」 は大衆ウケする大団円のように感じられ、それ自体が物語ではない。だから、「現在」 は 「過去」 なしでは最大限に機能せず、「過去」 はおそらく「現在」なしでは全く機能しない。

この2つのエピソードには、相性の良い場面がある。「過去」では、マーティンの父親は愛のない人物だ。「現在」では、年老いて内省的になったマーティンは、父親を新たな基準で理解している。やがて、マーティンは父親を愛し、恋しく思うようになるのである。

『スティーヴ!(マーティン)2つのドキュメンタリー』

配信日:2024年3月29日
監督:モーガン・ネヴィル

※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。

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