Netflix『リプリー』アンドリュー・スコット演じる天才詐欺師の光と闇

Andrew Scott and Dakota Fanning in Netflix Thriller
『リプリー』でのアンドリュー・スコット LORENZO SISTI/NETFLIX
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主演アンドリュー・スコットダコタ・ファニングのNetflixドラマ『リプリー』は全8話のリミテッド・シリーズ。

原作小説はパトリシア・ハイスミスの「The Talented Mr. Ripley」で、アラン・ドロン主演『太陽がいっぱい』(1960)、マット・デイモン主演『リプリー』(1999)で映画化されています。

映画との違いに触れながら、Netflix版『リプリー』の魅力に迫っていきます。

Netflix『リプリー』のあらすじ

舞台は1960年代。ニューヨークで文書偽造をしていた詐欺師のトム・リプリー(アンドリュー・スコット)。

ある日、船舶会社を営む資産家のグリーンリーフからイタリアにいる放浪息子ディッキー(ジョニー・フリン)を連れ戻すよう依頼を受けます。

旅費を全て負担してもらったリプリーは、ディッキーと恋人マージ(ダコタ・ファニング)が住むイタリアへ。

ディッキーの洗練された振る舞いや上流階級の暮らしに触れていく内に、リプリーの人生は思いもよらぬ方向へと向かっていきます。

リプリーの異常なこだわりと執着心

Netflixドラマ『リプリー』 NETFLIX

人物像を丁寧に描かけるのはドラマならではの醍醐味。リプリーの冷酷さや狂気がより滲み出る演出になっています。

最も特徴的だったのは、部屋でこっそりディッキーの洋服を試着するリプリーが本人に見つかってしまうシーン。

ドラマではリプリーが裸になりディッキーの下着まで身に着けていきます。『太陽がいっぱい』と『リプリー』(1999)ではシャツとジャケットと靴だけ。

これから御曹司ディッキーの人生を乗っ取ろうとしていくリプリーですが、この下着の描写があるだけで欲への執着心が一層ぞわぞわと伝わってきます。

特定の物への異常なこだわりもアンドリュー・スコット演じるリプリーの特徴。

ある理由から人に見られてはいけないガラス製の灰皿を大胆に愛用し続け、どんな不穏なことが起きても普段と同じようにミーナの「Il cielo in una stanza」を好んで聴きます。

タバコ、ライター、財布を置く順番も位置も必ず同じ。完全犯罪をやってのけるような潔癖さを見せつけながら、大胆不敵な行動も起こしていくキャラクターにどんどん引き込まれていきます。

カラヴァッジオに心酔していくリプリー

イタリアの画家カラヴァッジオに心酔していくのもドラマだけの描写。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオは、16世紀に活躍した画家。光と闇を巧みに操る表現でバロック芸術に革命を起こします。素行が悪く1606年に殺人を犯しローマから逃亡。身を隠しながらナポリ、マルタ、シチリアと各地を転々とします。

リプリーはまるでカラヴァッジオの後を追うかのように、ディッキーの住むアトラー二からスタートし、ナポリ、サンレモ、ローマ、パレルモ、ヴェネチアとイタリア中を放浪。

ときには美術館でカラヴァッジオの絵画を眺め、画集を大切に保管し、嘘を重ねる詐欺師リプリーの心の拠り所にしていきます。

Netflix『リプリー』 NETFLIX

Netflix『リプリー』は全編を通して白黒で描かれています。イタリアの絶景がカラーで見れないのは残念だと思っていましたが、そんな心配は一切不要でした。

モノクロ映像はまるでカラヴァッジオの光と影の技法を使っているかのように、闇に浮かび上がるリプリーの不気味さや狡猾さを際立たせていきます。

白黒とカラヴァッジオの対比は宿命のような相性の良さを感じます。

陰の面ばかりではなく、モノクロが醸し出す高貴さや美しさも魅惑的。フェラガモ、ボルサリーノ、サンタ・マリア・ノヴェッラなどイタリアを代表する名品がさりげなく登場するのも相まって、ヨーロッパの上流階級の世界が艶っぽくエレガントに演出されています。

Netflix『リプリー』を観ると白黒にした理由が腑に落ちるはずです。

8話のラストもドラマのオリジナルな終わり方で、最後までゾワッとさせる仕掛けにびっくり。

エレガントだけど不気味な天才詐欺師リプリーの世界をぜひ堪能してみて下さい。

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