米評論家『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』レビュー

※『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』のネタバレを含みます。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』には、シリーズの約30年にわたる歴史の中でも特に大胆かつオリジナリティあふれるスタントシーンが2つ存在する。
イーサン・ハント(トム・クルーズ)が、バイクで1,200メートルの崖から飛び降り、最後の150メートルをベースジャンプで降下する場面。そしてもう一つは、前作『デッドレコニング PART ONE』のクライマックスを飾った列車での息をのむようなアクションシーンだ。
最新作では、イーサンが沈没したロシアの潜水艦を探索する。浸水した区画と乾いた区画を移動するたびに、潜水艦が傾き、深海へと沈んでいく危機を招くシーンが描かれている。
その後、2機の複葉機が3,000メートルを飛ぶ中、南アフリカの壮大な景色を背景に、クルーズ自らが翼からぶら下がるというスリリングなスタントを披露。クルーズが自らスタントを行い、デジタル加工に頼らないリアルさが、このシリーズの魅力を支えている要因である。
前半の展開に物足りなさあり ― 3時間超の長尺で感じる停滞感
一方で、3時間近い映画の前半では、説明シーンが過剰に詰め込まれており、テンポが失われている。
イーサンとIMFに加わったグレース(ヘイリー・アトウェル)が捕まる拷問シーンを除けば、目立ったアクションは少なく、物語の進行がやや遅い。暗殺者パリス(ポム・クレメンティエフ)が北極圏でガブリエルを裏切るシーンでようやく盛り上がりを見せるものの、それまでの展開には冗長さが残る。
前作『デッド・レコニング』が迫力あるアクションシーンの連続で観客を魅了したのに対し、『ファイナル・レコニング』では前作の説明やサイバー用語のやりとりが多く、まるで延々と続く会議のような印象を受ける。
監督のクリストファー・マッカリーと共同脚本のエリック・ジェンドレセンが、前作でイーサンの内省的な一面を描こうと試みた結果、物語が重たく感じられるのも残念である。
AIの脅威と複雑なストーリー展開が緊張感を削ぐ
さらに、強力なAI「エンティティ」の存在感にも疑問が残る。金融機関や核施設に侵入可能な強力AIという設定だが、その脅威が実感しにくく、緊張感が削がれている印象だ。AIが悪役となる映画が今後増えるかもしれないが、現実味に欠ける設定である。
ストーリー展開も複雑で、イーサンが手に入れた「十字架型の鍵」と、その鍵を起動するための装置を巡る追跡劇が続く。映画の終盤では、装置を正確なタイミングで起動しなければ、世界各国の核弾頭が発射されるという緊迫感が描かれる。しかし、その重苦しさが映画全体のトーンを支配している。
魅力的なキャラクターと映像美も、シリーズ最終章としては物足りなさが残る
イーサンと仲間たちのやりとりは相変わらず魅力的であり、グレースの再登場も嬉しいが、前作ほどの遊び心が感じられない点が惜しい。クルーズの圧倒的な体力と演技は健在だが、全体として過去作にあった軽妙さやユーモアが減少しているのが気がかりである。
ビジュアルやカメラワーク、音楽の力強さは変わらず健在であり、南アフリカの雄大な自然を背景にしたシーンも映像美として映える。しかし、もし本作がシリーズの最終作であるならば、過去作と比べて物足りなさが残ることは否めない。むしろ、さらなる続編でイーサン・ハントの冒険がどのように続いていくのかを期待せずにはいられない。
映画情報
- タイトル: 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
- 日本先行公開: 2025年5月17日(日本)日米同時公開:2025年5月23日
- キャスト: トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、ヘンリー・ツェニー、アンジェラ・バセット
- 監督: クリストファー・マッカリー
- 脚本: クリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセン
- 上映時間: 2時間49分
この映画のチェックポイント
- 見どころ: トム・クルーズの沈没潜水艦内アクションと複葉機間移動という2つの危険なスタント
- 残念な点: 説明に時間を割きすぎた前半のテンポ
- キーキャラクター: 自己認識型AI「エンティティ」(かなり頻繁に名前が呼ばれる)
- 雰囲気: 陰鬱で重め、初期シリーズの皮肉や軽快さが薄れる
- 継続性:『デッドレコニング PART ONE』からの続編で、全シリーズのコールバックが随所に散りばめられている
※この記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。
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