早川千絵監督『ルノワール』外国特派員協会で会見し「どの国の人にも届くと実感」
映画『ルノワール』の早川千絵監督、出演の鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーが10日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で記者会見を行った。
11歳の少女フキが、病と闘う父と仕事に追われる母との間で揺れながら、不条理な大人の世界を垣間見て成長するひと夏の物語。第78回カンヌ映画祭のコンペティション部門に出品され、称賛を持って迎えられた。
主演の鈴木は冒頭、「鈴木唯です。皆さん、来てくださってありがとうございます。この場に来られてとてもうれしく思います」と英語で挨拶し、温かい拍手を受けた。カンヌで「注目すべき10人の才能」に選ばれたことを改めて問われると、「とても光栄。これからも俳優を頑張っていきたい気持ちになりました」と笑顔で話した。
母親役の石田は、「完成した作品を見て、私の知らない唯ちゃんがたくさんいた。何より、純粋にそこに存在できることが素晴らしい」と絶賛。父親役のリリー・フランキーも「この年頃の女の子は不安定で不完全だけれど、安定した演技を見せている。この映画は唯ちゃんとフキの両方の成長を描いた素晴らしい映画」とべた褒めだ。
早川監督は、「フキが見つからない限り、この映画は撮れない」と大々的なオーディションを敢行。だが、最初に会ったのが鈴木だったそうで「とても幸運な出会いだった。子役を使うのは初めてだったので監督としてチャレンジだったけれど、演出が必要ないくらい素晴らしい演技をしてくれた。楽をさせてもらいました」と明かした。
撮影では、鈴木を子役として扱わないことがキャスト、スタッフ間で暗黙の了解としてあったという。早川監督は、「一人の表現者として頼っていた。私が教え導いたのではなく、一緒に役をつくっていった感覚」と説明。鈴木は「フキとは似ているところも似ていないところもあるけれど、素直で思ったら行動しちゃうところは同じ」とあっけらかんと話し、会場の笑いを誘った。
早川監督は自身の子供の頃の思いを脚本に反映させ、「とてもパーソナルな物語なので、世界の観客に受け入れられるとは全く考えていなくて、自分が見たい映画を作りたい気持ちが強かった」そうだが、結果、フランス、シンガポールなど6カ国による共同プロジェクトに発展。「各国のパートナーやプロデューサーの反応が良く、どの国の人にも届くと作りながら実感していった」と自信のほどをうかがわせた。
『ルノワール』は、6月20日に全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
【関連記事】
- 『ルノワール』主演の鈴木唯、カンヌで審査委員長ジュリエット・ビノシュから金言授かる
- 映画『ルノワール』レビュー:早川千絵監督作、孤独と向き合う少女の繊細な心の軌跡
- 【カンヌ国際映画祭2025】日本人監督の過去作品をご紹介!早川千絵監督『PLAN 75』ほか
- 吉沢亮『国宝』公開に万感「役者人生の全てを懸けた、至極のエンタメ」
- 堺雅人8年ぶり主演映画『平場の月』で平凡な印刷工役「素晴らしい人物演じられた」