シンシア・エリヴォ、ジェシー・バックリーら注目の女性俳優6人が本音を語る――撮影秘話と役作り、その裏にあるリアルな素顔
オスカーシーズンを前に、米『ハリウッド・リポーター』は今注目を集める6人の女性俳優、ローラ・ダーン、シンシア・エリヴォ、ジェニファー・ローレンス、レナーテ・レインスヴェ、ジェシー・バックリー、アマンダ・セイフライドの座談会を開催した。
今年のオスカー有力候補作には共通点が多い。ローレンス主演の『Die My Love(原題)』やバックリー主演の『ハムネット』、セイフライド主演の『アン・リー/はじまりの物語』では、女性たち、特に母親の悲しみや暗い側面に焦点が当てられた。
レインスヴェ主演の『センチメンタル・バリュー』や『Die My Love』、エリヴォ主演の『ウィキッド 永遠の約束』、ダーンが出演する『ジェイ・ケリー』では、あらゆるタイプの「ダメな父親」が描かれた。
これら注目作の撮影舞台裏をはじめ、6人の俳優たちは撮影現場での体験や、プライベートでのエピソードを赤裸々に語り合った。
最新作について――キャリアの現在地、そして俳優としての立場
――最近共演した人との出来事で、一番楽しかったこと、あるいは一番やりがいを感じたことは何ですか?ジェシーさんは『ハムネット』の撮影前にポール・メスカルさんと出かけたそうですね。
ジェシー・バックリー:それは秘密にしていました。Joyface(ニューヨークのバー)で起こったことはその場だけのものです。ABBAや昔のヒット曲がかかり、お酒に酔って踊ったりしました。ポール・メスカルと知り合う場としては最高でしたね。
ジェニファー・ローレンス:リン・ラムジー(『Die My Love』の監督)は、撮影が始まる前に私とロバート・パティンソンに即興ダンスのレッスンを受けさせました。初日の撮影は互いに裸で取っ組み合うシーンでしたが、それが初日で良かったです。おかげで不安が払拭されました。
アマンダ・セイフライド:それは理想的ですね。
シンシア・エリヴォ:私の場合は、それより地味に感じるかもしれません。アリアナ(・グランデ)と私は、ただ私の家で床に座って野菜を食べただけですから。5時間も話してお互いのことを知り、次に会った時にはもう一緒に歌っていました。
ローラ・ダーン:(新作『これって生きてる?』で共演する)ブラッドリー・クーパーは古くからの友人で、ブラッドリーとウィル・アーネットも友人同士だったので、ワークショップに参加してお互いの夢や幼少期について語り合いました。今回の映画には背景ストーリーがほとんどないんです。最初のシーンから結婚生活が崩壊していくので、その背景もまるで全てを知っているかのように臨む必要がありました。
――皆さんはキャリアのさまざまな段階にいますが、業界内で自主的に何かをしたり、仕事をコントロールできる立場になったと感じたのはいつ頃ですか?
エリヴォ:誰しも最初からそういう立場だったとは思いますが、気づいていなかっただけです。私たちは権利を他人に譲り渡したり、必要もないこと、やりたくないことをするよう圧力をかけられたりします。しかし、「イエス」あるいは「ノー」という権利は最初から私たち自身のものです。やりたいことをする選択肢はもともとあり、今はその声がより大きくなっています。
レナーテ・レインスヴェ:自分の内側から発される「何が正しいのか」というシグナルは、最初は本当に小さなものです。しかし、経験を積む中で痛い目を見れば見るほど、そのシグナルがどんどん強くなっていきます。ここ数年でようやく「自分が正しい道を歩んでいる」と感じられるようになりましたが、長い道のりでした。
俳優と監督の信頼関係が“作品の深み”を生む
――レナーテさんは『わたしは最悪。』(2021年)が評価され、多くのラブコメディのオファーがあったそうですが、自分には合わないと感じたのですか?
レインスヴェ:質の高いラブコメディは大好きですが、本当に良い作品を作るのはかなり難しいんです。『わたしは最悪。』の後に同じようなラブコメ作品をやったら、型にはまってしまうと思いました。だから代わりに『顔を捨てた男』(2024年)に参加したんです。これはチャーリー・カウフマン(『マルコヴィッチの穴』(1999年)などで知られる脚本家・プロデューサー)の世界観に近い作品で、『わたしは最悪。』とは正反対でした。

ダーン:レナーテとは、何度も起用してくれる映画監督に出会える幸運について話し合いました。そういう監督に出会うと、「この世界で自分の居場所が見つかった」と感じます。それが俳優の自主性につながるんです。特に映画の撮影現場は、パートナーと関わる時の自主性に近いものがあります。相手を巻き込みながら、真のチームメイト、そしてパートナーとして受け入れたいという複雑な関係です。
――ローラさん、『これって生きてる?』は男性が主人公ですが、2人芝居で夫婦の関係性を描いたすばらしい例です。皆さんから見て、女性が主人公の映画は多いですか?女性だけが出演する映画は除いて。
エリヴォ:端的に言えば「いいえ」です。
ローレンス:ベクデル・テスト(フィクション作品におけるジェンダーバイアスを測る基準)は気にしますか?
エリヴォ:昔は気にしていませんでしたが、今は気にしています。「女性キャラクターがどれくらいセリフを言うか、何を言うか」については常に考えます。
――長きにわたって共に仕事ができる監督を見つけ、その関係を維持するための方法はあるのでしょうか?
レインスヴェ:ヨアキム・トリアー監督とは、『わたしは最悪。』の撮影現場で「もっと表現を探求したい」と感じました。しかし、また仕事できるかどうかは監督次第なので、私は口に出しませんでした。ノルウェーでは俳優より監督のビジョンが重要視され、スターになりすぎるとむしろ足枷になることもあります。しかし、ヨアキムと共同脚本家のエスキル・フォクトは、私のために『センチメンタル・バリュー』のノーラ役を書いてくれたんです。

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FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE
バックリー:2度目の仕事で、監督との関係は変わりましたか?
レインスヴェ:ええ。ノーラはよく怒り、映画全体を通して暗い感情をまとっています。私は役に憑依するタイプではありませんが、感情移入して、いつもと違うトーンで監督と話していました。それがコミュニケーションにも影響しました。その体験を経て、さらに親しくなったんです。
セイフライド:芸術家同士がパートナーとして成長していく中で、作品も成長していき、相乗効果があると思います。仕事とプライベートを混同するなとよく言われますが、私はそうは思いません。なぜなら、人間関係や愛情を築くことで、より作品に深みが生まれるからです。もちろん、何か悪い影響があり、関係が切れてしまった場合は別ですが。
歌、ダンス、アドリブ……役作りの舞台裏とは?
ダーン:シンシア、『ウィキッド 永遠の約束』の撮影ではどうでしたか?
エリヴォ:実は『ウィキッド 永遠の約束』は、1作目『ウィキッド ふたりの魔女』(2024年)と同時に撮影したんです。
ローレンス:じゃあ、ある日は続編を撮影して、ある日は1作目を撮影するという状態だったんですか?
エリヴォ:同じ日に1作目と続編を両方とも撮影することもありました。“For Good”の歌唱シーンを撮影した日は、本当は1作目の撮影日だったんですが、雨で中止になったんです。

――アマンダさんは『アン・リー/はじまりの物語』で歌とダンスも披露しましたが、準備は万全でしたか?
セイフライド:歌とダンスがある作品では、他のジャンルの映画では考えられないほど潤沢な準備期間が設けられます。でも私はダンスが苦手で、踊っていると落ち着かないんです。
エリヴォ:苦手だなんて全然分かりませんでした。
セイフライド:ありがとうございます。準備期間のおかげですね。しかし、とても直感的な動きだったので『マンマ・ミーア!』(2008年)の時とはまた違いました。
レインスヴェ:それでも落ち着かなかったんですか?
セイフライド:そうですね。撮影現場では「ダメだ、ダメだ、撮影できてる?」と感じていました。でも、誰もそんなことに付き合っている時間はないので、私の内面的な問題です。

――ジェニファーさんは『Die My Love』でかなり多くのアドリブ演技をしていたように思います。特にキャラクターの心が壊れたり、暴言を吐いたりするシーンで。
ローレンス:その通りです。例えば、バスルームのシーンで台本には「バスルームを破壊する」という指示だけが書いてあり、そこにいるのは私とカメラマンだけです。そして撮影が始まると、まるで思考が生きて私の中に侵入してくる感じでした。私は壁をひっかいたのですが、ポストプロダクションで壁紙を剥がす映像にしてもらいました。
俳優は表現者か“営業担当”か――映画プロモーションのあるべき姿
――『Die My Love』のプロモーションで、女性の産後うつについて伝える代表者になるのだと考えましたか?
ローレンス:馬鹿げているように聞こえるかもしれませんが、10年前には話題にも上らなかったことについて伝えられるのは光栄です。実は、本作の撮影中に第2子を妊娠中で、ポストプロダクション中は産後うつに苦しんでいました。これまで私が出演した中で、自分自身の人間関係や家族観を最も投影しているのが本作です。最近のプロモーションでは、産後うつについてたくさん話しました。
――映画のテーマが、役を引き受けるかどうかの決定に影響を与えることはありますか?
ローレンス:私はずっと「子どもの話はしたくない」と厳しく言っていたので、本作のプロモーションは自分でも驚きました。本作の話をする中で自分の子どもに触れないことは不可能だったので、母親としての経験を話そうと決めたんです。しかしこれがきっかけで、以前の自分なら考えられないほど産後うつについて伝えるようになりました。インタビューでは、服用していた産後うつの薬についても明かしました。

レインスヴェ:おかしなことですが、私はプロモーションの時期に「(撮影時の)1年前に表現したことを正確に伝えないと」と考えて、いつも苦労するんです。撮影時には、自分が何かを代弁する立場になるなんて考えもしません。しかし結局、映画と似た経験をした人たちと会うことになるんです。
バックリー:映画のプロモーションが(観客の)経験を狭めてしまうこともあると思います。作った作品に対して、誰しもそれぞれ個人的な感情を向けます。時には(観客に対して)何も説明せず観てもらえればいいのにと思うこともあります。
ローレンス:分かります。ビジネスだから、私たちはセールスパーソンにならなきゃいけないんです。でも、変ですよね。
セイフライド:私たちは映画に出演していても、そのテーマの専門家ではありませんから。
ダーン:監督が自分の映画のテーマを語りたくない時、俳優に頼ることが多いんです。俳優は映画が伝えたいことの「代弁者」ですから。皆さんに聞きたいのですが、監督が(プロモーションで)自身の作品を説明するような時、腹が立ったことはありますか?
ローレンス:それはデヴィッド・リンチ監督のことですか?
ダーン:そうです。『ブルーベルベット』(1986年)の撮影当時、私は17歳で、プロモーションで作品について語るのも初めてでした。その時リンチ監督は「作品について何も語る必要はない。ただ『楽しかった』と言えばいいんだよ」と言ったんです。しかし、私は監督のアドバイス通りにせず、作品について説明しました。今でも作品の内容を説明しようと思っています。
ローレンス:(『インランド・エンパイア』(2006年)のプロモーションで)リンチ監督がハリウッドの路上に牛を連れてきたのが好きでした。
ダーン:アカデミー賞の時のキャンペーンですね。彼の映画のプロモーション方法は、確かに普通ではありませんでした。
バックリー:私は、「自分の演じる女性たちがどうあるべきか」という観念を押し付けたいわけではありません。ただ、彼女たちと一緒に川を下り、彼女たち自身の声を届けたいだけです。
つらいシーンとどう向き合う?俳優が心を守る方法
――ハムネットが死ぬシーンで、ジェシーさんは信じられないほど生々しい悲鳴のような泣き声を上げます。あの演技をどうやって引き出したのですか?
バックリー:あのカットは台本になかったんです。彼女の悲しさを表現する上で私ができるのは、可能な限り正直に、悲しさの深淵に触れることでした。あのシーンは3回ほど撮影し、3回目であの泣き声が出ました。ハムネット役を演じた子役のジャコビ・ジュープは、本当にすばらしかったです。ジャコビと強い絆を築いていたので、まるで自然なことのようにあの叫び声が出ました。

エリヴォ:質問ですが、そういう状況からどうやって抜け出し、自分を守っていますか?バックリーの映画を観ると、いつも心配になります。
バックリー:重要なのは、地に足のついた生活に戻ることです。私はプライベートではかなりシンプルな生活を送っています。トーストを焼いたり、ガーデニングをしたり、散歩をしたり……そういう環境に感謝しています。仮面を着けたくないし、影の部分も全部さらけ出したいんです。それに、すばらしい夫や兄弟姉妹がいて関係も良好なので、心配しないでください。あとはセラピーも受けています。
ダーン:俳優として、私たちは「ありのままの感情を抱いていいよ」と自分に許可します。なぜなら、感じたことが真実だからです。しかし現実の生活では、私たちはさまざまな感情を抑えて生きています。社会的にそうすべきだからです。俳優として痛みを感じる時間は必要ですが、現実の生活ではそうもいかない、と考えることも時々あります。仕事の中で苦しい感情に苛まれても、自分の子どもとはしっかり向き合い支えるべきです。
初めての給料で買ったものは?スターたちの素顔が明らかに
――先ほどアマンダさんは「映画に出演していてもそのテーマの専門家ではない」と指摘しましたが、皆さんを何かの専門家と言うなら、何ですか?
ローレンス:イギリス王室の歴史ですね。特にチューダー朝が昔から大好きです。
レインスヴェ:私は量子物理学が大好きです。バックリーはガーデニングをすると言っていましたね。
バックリー:ガーデニングはすごく下手で、しおれたズッキーニを1本育てたことがあるくらい。でも、自分の庭は大好きです。
エリヴォ:想像がつくと思いますが、私は音楽ですね。音楽は私にとっての第二言語です。
セイフライド:シンシアは、魂を絞るように音符を歌い上げる専門家です。人間が持つ感情の山を動かす達人と言えます。それ以外に表現できません。
――最後に、ハリウッドで初めて稼いだお金で何を買ったか、覚えていれば教えてください。
レインスヴェ:確か、家賃の支払いをしました。
バックリー:私も家賃だったと思います。少し良い家に住めるようになりました。
エリヴォ:私は初めてシャネルのバッグを買ったのと、学生ローンを完済しました。
――そのバッグはまだお持ちですか?
エリヴォ:そのバッグは盗まれてしまいました。
セイフライド:私も、お気に入りのルイ・ヴィトンのバッグを盗まれたことがあります。駆け出しの頃、映画の撮影中に買ったものでした。高かったのに……。
ダーン:私もカメラと三脚を買ったら、カメラを盗まれました。自分のお金で購入したから大切にしたくて、三脚は寝室の隅に置き、2年間コート掛けとして使っていました。なぜお金を貯めて新しいカメラを買わなかったのか、自分でも分かりませんが、とにかくショックでした。写真を勉強していましたが、盗難がきっかけでその熱も冷めてしまって。もしかしたら、カメラを盗んだのは当時の恋人かもしれません。
エリヴォ&ローレンス:最低ね。
ダーン:そろそろカメラを買う時ですね、みんなで(笑)。
エリヴォ: 買わなきゃ。私も一緒に行きます。
今回紹介された映画はそれぞれ以下の日程で日本公開を控えている。
- レインスヴェ主演『センチメンタル・バリュー』 2026年2月20日
- エリヴォ主演『ウィキッド 永遠の約束』 2026年3月6日
- バックリー主演『ハムネット』 2026年4月10日
- ダーン出演『これって生きてる?』 2026年春
- セイフライド主演『アン・リー/はじまりの物語』 2026年初夏
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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