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映画『黒の牛』公開記念舞台挨拶|蔦哲一朗監督「坂本龍一さんに報告したい」

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映画『黒の牛』公開記念舞台挨拶にて
(左から)須森隆文、田中泯、リー・カンション、蔦哲一朗監督 ©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC
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2024年の東京国際映画祭でプレミア上映され、第49回香港国際映画祭にて日本映画として初めて火鳥賞(グランプリ)を受賞した映画『黒の牛』の公開を記念し、2026年1月24日、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町で舞台挨拶が行われた。

当日は、監督の蔦哲一朗、主演のリー・カンション、共演の田中泯、須森隆文が登壇。MCは本作プロデューサーの市山尚三が務め、完成までに約8年、企画開始から公開まで10年を要した本作への思いが、登壇者それぞれの口から語られた。

映画『黒の牛』蔦哲一朗監督
蔦哲一朗監督 ©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC

蔦哲一朗監督が語る、映画『黒の牛』完成までの10年

舞台挨拶の冒頭、蔦監督は「企画から考えると公開まで約10年。万感の思いです」と言葉を詰まらせながら感謝を述べた。
さらに、生前に本作への参加を表明していた坂本龍一について触れ、「まだ何も形になっていなかった時から参加を決めてくれた坂本さんのおかげで完成した作品。天国の坂本さんに無事に成功したと報告したい」と語り、会場は静かな感動に包まれた。

映画『黒の牛』より
映画『黒の牛』より ©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS

リー・カンション「主演女優は“牛”でした(笑)」

主演を務めたリー・カンションは、「映画祭では何度も東京に来ているが、今回は『黒の牛』の宣伝で来られたことが本当にうれしい」と喜びを語った。
コロナ禍で来日と隔離を経て行われた撮影を振り返り、「この映画の主演女優は“牛”なので(笑)、どうやってコミュニケーションを取るかが重要だった」とユーモアを交えて会場を沸かせた。

田中泯「無言の会話を楽しめる相手に出会えた」

禅僧役を演じた田中泯は、「きつくて大変だったけれど、とにかく楽しかった」と撮影を回想。
リー・カンションについては「最後まで一緒にタバコを吸うとか、チョコレートを勧めるとか、それくらいの関係。でも無言の会話をこんなに楽しめる相手は久しぶり」と語り、二人の独特な関係性が作品にも反映されていることを示唆した。

8年をかけて完成した、日本初70mmフィルム使用の映像詩

映画『黒の牛』ポスター
映画『黒の牛』ポスター ©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC

山深い自然の中で、ひとり静かに牛と暮らす主人公(演:リー・カンション)。彼は言葉に頼らず、牛の世話をし、土地と向き合いながら、孤独でありながらも満ち足りた日々を送っている。そこに現れるのが、禅僧(演:田中泯)との出会いだ。多くを語らない二人は、沈黙や所作を通じて、次第に深い精神的な交流を育んでいく。

本作は、禅の悟りへの道を象徴的に描いた「十牛図」から着想を得ており、牛という存在を媒介に、人間の内面、祈り、そして生と死の循環を静謐な映像で描き出す。セリフを極力排した表現は、観る者に“物語を理解する”というよりも、“体感する”映画体験をもたらす。

この作品の精神性や映像哲学は、監督がクリストファー・ノーランに宛てた一通の手紙とも深く結びついている。商業性やスピードが優先されがちな現代映画に対し、「時間」「沈黙」「フィルムで撮ること」の意味を問い直すその手紙は、本作が目指す映画表現の思想を象徴するものだ。全編をフィルムで撮影し、長編劇映画としては日本で初めて70mmフィルムを一部使用している。
日本・台湾・アメリカの国際共同製作で、自然と人間、そして“牛”との根源的な関係を、圧倒的な映像美で描き出す。

音楽には坂本龍一の楽曲が使用され、リー・カンション、田中泯という唯一無二の表現者たちが織りなす世界観は、観る者に深い余韻を残す。映画という表現の原点を静かに問いかける一作となっている。

映画『黒の牛』は、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿K’s cinemaほか全国で順次公開中。

映画『黒の牛』作品情報

  • 監督・脚本・編集:蔦哲一朗
  • プロデューサー:市山尚三、エリック・ニアリ、黄インイク、アレックス・ロー
  • 共同プロデューサー:饒 紫娟
  • 撮影監督:青木穣
  • 脚本:久保寺晃一、上田真之、熊野桂太
  • 美術:部谷京子
  • 衣装:大塚満
  • 録音:岩間翼、大町響槻
  • サウンドデザイン:周震、松野泉
  • 音楽:坂本龍一
  • 出演:リー・カンション、ふくよ(牛)、田中泯、須森隆文、ケイタケイ
  • 2024年/日本=台湾=アメリカ/114分/スタンダード&シネマスコープ/5.1chサラウンド/白黒&カラー
    配給:alfazbet、ニコニコフィルム、ムーリンプロダクション

公式X:@BlackOX_2025
公式Instagram:@blackox_2025

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