【単独インタビュー】『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』西野亮廣にインタビュー! 「一番怖くて、一番おもしろい場所にいる」 “待つ覚悟”と続編への挑戦
『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』で、製作総指揮・原作・脚本を務める西野亮廣にインタビューを実施した。
2020年に公開され、社会現象を巻き起こしたアニメーション映画『映画 えんとつ町のプペル』。その待望の続編『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』がついに完成し、3月27日(金)より全国ロードショーとなる。
【動画】『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』予告編
再びタッグを組むのは、西野亮廣と、アニメーション制作を担うSTUDIO4°C。前作では“挑戦する孤独”を描いた西野亮廣が、続編で向き合ったのは“待つ覚悟”。そこには、相方・梶原雄太(カジサック)との実体験が色濃く投影されているという。
本作では、えんとつ町で暮らす少年ルビッチが、新キャラクター・モフとともに再び冒険へと踏み出す。失われた約束と再会への希望を胸に進む物語は、友情の物語にとどまらず、「誰かを信じて待つ」という選択の重みを静かに問いかける。
今回、ハリウッド・リポーター・ジャパンは西野亮廣に単独インタビューを実施。続編製作のプレッシャー、相方との深い友情、白紙からの書き直し、ベルリン国際映画祭へのノミネート、そしてブロードウェイ進出構想まで、創作の核心と現在地をたっぷりと語ってくれた。

『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』は「待つ覚悟」から生まれた物語
――まずこの『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』という物語は、西野さんにとってどういうタイミングで生まれたのでしょうか?
西野:これは本当に自分の経験からなんですけど、22、23歳くらいのときの話です。僕は19歳くらいからスタートして、デビューがちょっと早かったというか、スタートはだいぶうまくいったんですよ。
それ自体はすごくよかったんですけど、ただ運がよかっただけで、実力が伴わないまま出てしまった感覚があって。すぐ売れたんですけど、どの現場に行ってもあまり結果が出なかった。それでもがんばろうと思ってやっていたんですが、あまりにも結果が出ないもんですから、相方の梶原がストレスで精神的に病んでしまって。後に心身症だとわかったんですけど、失踪してしまったんです。
ある日急に仕事に来なくなって、キングコングは活動休止に追い込まれました。そこから僕は2、3カ月くらい家で1人で過ごしていたんですよ。そのとき会社から「梶原が戻らなさそうだから1人で行くか」という提案をされたんですけど、もし1人でうまくいってしまったら、梶原が戻ってくる場所がなくなってしまうなと思って。それは嫌だったんですよね。
2人でしゃべっている時間も楽しかったし、漫才している時間も楽しかった。だから「これは1人でやっていい話じゃないな」と思って、「待ちます」と決めました。
自分ががんばることはいくらでもできるけど、相手が頑張るまで待つって本当に勇気がいる。これはお父さんお母さんや先生方も経験していることだと思うんです。口を挟みたくなるけれど、本人が考えて動くまで待つ。その“待つ覚悟”を軸に書いた物語です。
友達だったから、信じ抜けた
――コンビとはいえ他人ですよね。それをそこまで信じ抜けた理由は?
西野:僕、高校卒業して吉本の養成所NSCに入ったんですけど、そこで初めてできた友達が梶原だったんですよ。もともとは別のコンビでした。18、19歳って、みんな「俺が一番おもしろい」って思って集まってくるんですよ。他のやつは認めない、みたいな空気がある。でも梶原だけはそういう関係じゃなくて、普通に友達として一緒にバイク乗ってどっか行ったりしてた。その時間が結構大きかったのかもしれないですね。
最初はビジネスパートナーじゃなくて、友達だった。その時間があったから、急に忙しくなって仕事だけの関係になったときに、「あれ、なんで一番好きな友達とこんな感じになっちゃったんだろう」って思ったんですよね。やっぱり友達の時間が長かったっていうのは大きいと思います。
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ーーーまさにこの作品はラブレターのようですね。誰かのことを作品にするというのは究極の愛のように感じますが、梶原さんの反応はいかがでしたか?
西野:そう、まさにそうなんですよ。恥ずかしいですよ。3回号泣したって言ってました。 どこで泣いたかもわかります。
梶原くんがいなくなった時に一回謝りに来たことがあって、3ヶ月ぶりぐらいに会ったんです。「ごめんなさい」と言うシーンがあるんですね。 彼が僕の部屋に彼が来て「ごめんなさい」って言って、僕は「いや、大丈夫、大丈夫。まだ22、23だし、まだ間に合う」って言った。その場面がそのまま映画にあるんですよ。
だから絶対自分を重ねただろうなと思います。僕も4、5日前にもう一回観たんですけど、何百回も観ているはずなのに泣きそうになった。それは映画というより、梶原との思い出を思い出してしまうからだと思います。
続編プレッシャーと“白紙”の決断
ーーー今回、続編ということで、前作を超えなきゃいけないと考えたり、ファンの期待を考えたり、そういうプレッシャーはありましたか?
西野:ありましたよ。やっぱり1作目を公開してバーンっていったんですよ。それで結構早めに続編の話はもう出てたんです。書き始めたんですけど、やっぱりいろいろなことを意識し始めちゃって。
2回目っていうのは、要するに売れなきゃいけないとか、前作を超えなきゃいけないとか。書いてるときに「売れるためにはどうすればいいんだろう」って考え始めちゃった。これ、前作のときは全く考えてなかったことなんですよね。

ーーー興行的なことでしょうか。
西野:そう、興行的な。前作をやったときにエンドロールをパッと見たら、「そっか、スタッフさん300人ぐらいいるぞ、400人ぐらいいるぞ」と。これだけの方の人生の時間をいただいて、生活をかけてもらってるわけで、って考えると、映画って当てなきゃっていう思いが芽生えてしまったんです。
だから続編を書くときは、そっちがまず来てしまった。これ大失敗だったんですけど、「どういうのが売れるんだろう」って考え始めて。書いてみたんですけど、全然おもしろくなかった。マーケが先に出ると、いいこと1個もないなって。
脚本は8割ぐらい書いてました。STUDIO4°Cのチームとも共有してました。でもあるタイミングで、「もうこれ全部白紙にしよう」っていう日があって。
ーーーやり直したんですか?
西野:はい、実はやり直しました。それで10カ月ぐらいロスがあったんです。本当に申し訳ないことをしちゃったなと。なぜかというと、アニメーション映画って作るのに3年、4年かかるじゃないですか。例えば廣田裕介監督が『映画 えんとつ町のプペル』でドンと当たりました。そのあと当然オファーが来るわけです。廣田監督がそこで別の作品を受けてしまったら、続編が出来上がったときに参加できないじゃないですか。だから廣田監督は、他の話を受けずに待ってくれてたんです。
だったらなおのこと早く書かなきゃいけないのに、僕が変な下心を出して、「売れなきゃ」とか思っちゃって寄り道してしまった。そこは本当に反省してますね。書き直しのときは、一回全部忘れました。前作のときみたいに、自分の中にあるものから引っ張り出そうと。前作は、日本中から叩かれながら挑戦していた経験をそのまま作品にしたんですけど、今回も自分の思い出から引っ張り出したほうがいいなと思った。
だから22、23歳のときの話に戻るわけですけど、世間に受けるかどうかは一旦どうでもいい。まずは本の段階では、自分の感情が一番あふれてるところから書こうと。それでやり直しました。だから一回はプレッシャーにつぶれてます、はい。

制作のよろこびと、資金という現実
ーーー 今回、制作にあたり楽しかったエピソードと、苦労した部分があったら教えてください。
西野:楽しかったのはやっぱり、クリエイティブはなんじゃかんじゃ全部楽しいですね。もちろん苦労はありますよ。筆が進まないとか、家にいて「めんどくせえな」って思うときもある。でもどこ切り取ってもやっぱクリエイティブは楽しい。キャラクターどうするとか、ストーリーどうするとか、楽曲どうするとか、アフレコのやり取りの位置とか。うまくいかないこともあるけど、それをクリアしていく作業は楽しいですね。
大変なのは、今回は配給とか制作委員会の幹事もやっているので、運営周りですね。映画を作るってなったら、リアルにお金をどう用意するかって問題がある。しかも桁が大きい。でもどこかに任せるんじゃなくて、自分たちが旗振り役になって、権利も含めて握る勝負をしなきゃいけないなと思った。そこはヒヤヒヤしましたね。
MEGUMI起用の理由
――声優さんたちが前回に続きとても豪華です。声優さんたちをキャスティングするにあたってどんな基準があったのでしょうか。特にMEGUMIさんは西野さんの同期のような存在で、特別な思いがあったとお聞きしました。
西野:MEGUMIちゃんには、今回モフというキャラクターの声優を務めていただきました。ルビッチのパートナーとして冒険するんですけど、ルビッチが2作目なので、ちょっとキャラクターを掘り下げることができたというか。
ただただかわいくていい子ということじゃなくて、子どものムカつくところとか、ワガママなところとか、空気読まずにバーって走っていっちゃうところとか。子どもって急に車道に飛び出したりするじゃないですか。「あんたいい加減にしい!」みたいな瞬間がある。そういうところもちゃんと書きたいなと思ったんです。今回ルビッチはそっち多めなんです。
ということは、その横にいる人は保護者のようであり、ツッコミの能力が絶対必要だなと思ったんです。モフはルビッチに「あんた」って言うんですけど、その「あんた」が自然にハマる人。日本でそれがしっくりくるのは、MEGUMIちゃんかマツコ・デラックスさんの2択だなと思いました。
MEGUMIちゃんは昔から一緒にやっているし、バラエティでツッコミが達者なのは当然知っているし、アフレコのときに「ちょっとこれお願いできる?」って振ったらパパッと対応できる人だってことも知っている。だからもうMEGUMIちゃんしかいないなと思って、直接連絡しました。確かそのときフランスかどこかにいたんですけど、「ちょっといいから帰ってきて」って言って、帰ってきてもらって、なんとか間に合わせてもらいました。
ベルリン国際映画祭ノミネートの意味
ーーー本作は、「第76回ベルリン国際映画祭」のジェネレーション部門にノミネートされました。世界の3大国際映画祭の一つとされるこの映画祭でノミネートされた率直な感想をお聞かせください。
西野:うれしかったですよ。やっぱり当然狙ってたんですよね。公開前に狙える映画祭がそこしかなかったんですよ。だからもう一発勝負でした。公開前にちゃんと狙いたいと思っていて。実際その打ち合わせでも、海外の映画祭の話はベルリンしかあがってなかったですね。ピンポイントで投げて、どうか選ばれますようにと祈っていたら選ばれました。まずそれがうれしかったっていうのが1つ。
2つ目にうれしかったのは、続編が選ばれたっていうことですね。前作を見てない人でもどう楽しんでもらえるかっていうのが最初のテーマとしてあったので。だから『えんとつ町のプペル2』とも言ってないんです。海外に売り込むときも「続編」とは言っていないし、映画祭に出すときも「前作がこうで」みたいな説明はしていない。それでちゃんと刺さるか刺さらないかっていう、そこだけで勝負した。その攻め方をして、それを受け入れてもらえたっていうのは本当にうれしかったです。
ベルリン国際映画祭での様子↓↓
アニメからブロードウェイへ
――今後も海外も視野に入れて、世界的な評価も意識されていますか?
西野:僕たちミュージカルもやっているんです。今ちょうどブロードウェイ版『えんとつ町のプペル』を作っている途中なんです。
去年、自分たちの作品ではないのですが、『オセロ』という舞台をやりました。デンゼル・ワシントン、ジェイク・ギレンホールが出ている作品で、そこに共同プロデューサーとして入りました。次に『All Out』という舞台があって、それも共同プロデューサーとして入っています。その裏でちゃんと、自分たちのオリジナルIPとして『えんとつ町のプペル』をブロードウェイでやるということで、ずっと走らせています。
そのときに、ブロードウェイのプロデューサーや投資家さん、あるいはキャストを口説くときに、映画『えんとつ町のプペル』を見せているんですよ。そしたら百発百中でチームに入ってくる。やっぱりいいアニメーションってめちゃくちゃ強いし、日本のアニメーションはブランドなんですよね。だからアニメーションで認知を取って、最終的にミュージカルに落とし込む。この流れは作っていきたいなと思っています。当然それは世界でやっていく。映画だけで完結させないっていうことですね。

――なるほど。ありがとうございます。気になるのが、今後、このプペルのシリーズは続けていきたいと思われていますか?
西野:いや、今回すべっちゃったらもう終わりですね。続かないです。当たれば続けるでしょという雰囲気ではもうチームみんななっていて。そりゃそうだよなという。正直、(3作目の)構想はあるんです。なので当たれば続くし、すべれば終わりです。でも、一番怖くておもしろい場所ですよね。1作目当たって、2作目も当たったらちょっと大したもんじゃないかってなるじゃないですか。そうすると3発目、ちょっと勢いつくなって思うんですけど。でもまあ、当たれば多分続くっていう感じですね。

「早く行きたければ1人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
――今回の作品は、前作を見ていない方でも楽しめると思いますし、前作を見ている方はよりルビッチの成長や、掘り下げられた部分もわかると思います。観客にどんな感情を届けたいと思っていますか?
西野:僕結構好きな言葉で、アフリカのことわざだと思うんですけど「早く行きたければ1人で行け、遠くに行きたければみんなで行け」という言葉があるんです。やっぱりチームで動いていると感じることなんですけど、足が遅い人っているんですよ。何かが苦手な人もいる。そういう人を切り捨てるのは簡単なんですけど、それだと強いチームにならなかったですね。鈍くさいやつもいるんですよ。でも、それでも一回待ってみる。そうすると、急にあるんですよね。5年目ぐらいで急に伸びたな、みたいなことが。
それまで本当に落ちこぼれみたいな時間が4年ぐらいあったのに、急に5年目からがんばるってあるんですよね。で、実際その子にチームが支えられるってことが結構あります。
だから相手を信じるっていうことが、自分を信じるのは当たり前として、遅い人もちゃんと信じて待ってあげるっていうのは、自分のパフォーマンスとかチームのパフォーマンスを大きくしていくときに、すごく必要な判断だなと思っていて。それがこの映画で伝わるといいなと思っています。子どもを信じてあげるとか、若手スタッフを信じてあげるとか。

ーーーご自身も梶原さんを信じ抜いたわけですよね。
西野:そうなんです。あいつに関しては、さっき、きれいごとで2年目、3年目の話をしましたけど、戻ってきたあともテレビが苦手で、そこからテレビで15年ぐらい結果出してないんですよ。そこからカジサックになって、ようやくYouTubeで結果が出た。だから戻ってきてからのほうがむしろ長かった。17年待ってたんですよ。でもあれ待ってなかったら、今のカジサックはいないわけで。僕はどれだけカジサックに救われてるかって考えると、やっぱり待つっていうのは非常に重要だなと思いますね。
ーーーありがとうございます。最後に、映画を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
西野:みなさんこんにちは、キングコングの西野亮廣です。『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』まもなく公開となります。ルビッチが再びプペルに会えるのか…というところを描いた作品となっています。ぜひ劇場までお越しください。待ってます!
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