「ハリウッド一強時代」はもう終わり?ストリーミング、AIの台頭、スタジオ買収……ベテランが語る映画業界の未来
企業・クリエイター・コンテンツの広報を専門とするエージェンシー、ザ・リッピン・グループの創業者・CEOのディック・リッピン氏は、40年以上にわたり映画業界に携わってきた。
リッピン氏は、米『ハリウッド・リポーター』にハリウッドの現状についてのコラムを寄稿し、「かつてのハリウッドはもはや存在しない」と主張している。以下、このコラムの抄訳をお届けする。
かつてのハリウッドはもう存在しない――映画業界のベテランが語る変化
ハリウッドのエンターテインメント産業は100年以上にわたり、地理的にも、「史上最も偉大なブランド」としても、文化の中心であり続けてきた。この場所には、華やかさや才能豊かなスター、クリエイターたち、そして謀略が集まり、すばらしい映画やテレビドラマを生み出してきた。
世界中の人々がハリウッドを訪れ、その「魔法」の一部になることを目指してきた。かくいう私自身もこの世界に魅了され、その一部になりたいと考えた。私はロサンゼルスへ移り、1986年にエンターテインメントとメディアを専門とするエージェンシーを創設した。
この40年間、世界中のクライアントと仕事をしてきた。そして、あらゆるプラットフォームの進化に合わせ、企業広報や宣伝キャンペーンを企画・実施してきたのだ。
しかし、私が初めて目にした頃のようなハリウッドはもはや存在しない。ストリーミング戦争やYouTubeの台頭から、世界的なパンデミック、AIやM&Aがもたらす混乱、そして政治情勢や山火事などが重なり、現在の業界は「狂騒の20年代」と呼ばれている。
しかし、ハリウッドが終焉を迎えるにはまだ早いと私は考えている。私が楽観視している理由は、ハリウッドのビジネスは刺激的であり、私たちの文化に不可欠な存在であり、確実に守る価値があるからだ。
現在、テクノロジーがこの混乱を生み出した「主犯」とみなされることが多い。しかし、テクノロジーは業界に比類なき進歩をもたらしてきた。問題なのは、AIがかつてないレベルで効率を高める一方、この業界の根幹である「人的資本」と「創造性」まで揺るがしていることだ。
これまでのハリウッドとテクノロジーが持つ、それぞれのメリットを両立させることは可能なのだろうか?
巨大M&Aがハリウッドの構造を変える
例えば、2000年にAOLがタイム・ワーナーを買収した際、業界は「ハリウッドとシリコンバレーは相性が悪い」とし、この買収を「失敗」と判断した。
そして現在、パラマウントはワーナー・ブラザースと、その傘下のテレビ局HBOを間もなく買収する予定だ。この統合によって「業界に終末が訪れる」と考える人も多い。類似の例として、AmazonによるMGMの買収、ディズニーによる20世紀フォックス(現:20世紀スタジオ)の買収が挙げられる。

このように「テクノロジーによる乗っ取り」が進む中、業界では大規模な人員削減とコスト削減が求められるなど、目先の業績に気を取られていた。つまり、長期的な戦略を見据える余裕もなかったのだ。
ストリーミングがもたらす映画産業の変化――「予測できない時代」に突入
この60~70年間、ハリウッドのビジネスは堅調を維持してきた。それは、あらゆるビジネスモデルが「予測可能」だったからだ。例えば、劇場公開で成功した映画は、その後のテレビ放送やパッケージ販売でも多くの収益を上げる可能性が高かった。
しかし現在、こうした状況はストリーミング配信によって変わり、業界は岐路に立たされている。数千万〜数億人単位の加入者獲得を重視するビジネスモデルを採用したNetflixは、コンテンツを永続的に保有するため、すべての配信権を買い取った。

とはいえ、いくつかの新しい機会も生まれている。クリエイターたちは前払い報酬が減る代わりに、多くの配信プラットフォーム上で長期的な恩恵を受けられるようになった。こうしたリスクを取ることは、多くの制作者にとって大きなインセンティブとなる。結果として、優れたコンテンツの供給が増え、「ハリウッドの雇用維持」と「ストリーミングサービスの加入者増加」につながる。
また、以前のように「予測可能」なビジネスモデルに戻すと同時に、予測不可能な状況に柔軟に対応することも求められている。例えば、コンテンツの二次配信窓口について、より深く分析すべきだ。マーケティングの観点から見ると、制作費数十億ドル規模のコンテンツを配信する際、どうすれば効果を最大化できるか、冷静に見極めなければならない。
そして最近では、劇場公開による効果も注目されている。劇場上映はマーケティング上のメリットも大きく、本来はストリーミング配信と共生することができる。劇場公開時のマーケティングは、「新作映画がストリーミング配信されるまで待つ」という顧客の目にも入るのだ。
ハリウッドが生き残るための条件は「AI規制」と「グローバル化」
そして、テクノロジーを味方につけながらも、各国が国境を越えて協力し、AI規制を整備していく必要がある。これらのツールは、ビジネスを戦略的に進めるために役立つ。ただし、個人情報や肖像権、パブリシティ権を守るために戦わなければならない。特に、悪意あるディープフェイクやリベンジポルノに対しては、厳格な罰則規定が求められている。
最後に、私たちは映画業界をさらにグローバルな視点で捉える必要がある。税制優遇措置などにより、各国の映画がアメリカに流入し、従来のハリウッドにリスクが及んでいる。しかし同時に、さまざまな物語を共有できることや文化的多様性など、新たな機会も生まれている。
確かに、映画市場の海外流出は課題の一つだ。しかしそれは、すばらしい作品を世界中の観客に届けるチャンスでもある。実際に、今では字幕付きや吹き替えの形で、さまざまな国と地域の映画に触れやすくなった。特に、普遍的なストーリーは世界中で受け入れられている。
このような時代で成功を収めるためには、消費者から学び、世界のどこにいても創造性を見出すことが重要だ。そのためには、国内の雇用と機会を守りつつ、グローバルなビジネスを加速させなければならない。また、テクノロジー業界と伝統的なスタジオのリーダーたちが協力し、互いに利益をもたらす方法を模索する必要がある。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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